【KACPRO20217】究極斬神★完璧ソード(読み切り版)【第7回お題:21回目】

なみかわ

究極斬神★完璧ソード

 ドドンドン……ドドンドン……

 地球よりはるか遠く、はるかな異世界。

 この世界『WATAGE ワールド』では、力だけがすべて。

 強き者は地位も名誉も金もハーレムも手に入れ。

 弱き者は路頭に迷う。

 でも王様は優しいから、オーリエ国公認のパン屋チェーン、ニ○カワのほわほわ食パンは全国民に支給される。


「うわー、まいったー!」

「今度またイワンをいじめたら許さないからね!」

 朝の雀のようにぴょんぴょんと逃げる子供たち。姉のエルディーアが、木刀を振り回すことは、この町の誰もが知っていた。エルディーアは、オーリエ国の王立騎士団のアーマーナイト、アーサーの長女であり、町でいちばん期待される剣士の卵だ。


「もっと強くならなきゃ、だめだね……」

 ぽそっとつぶやくイワンの頭を、やさしくなでる。

「私もイワン位の頃は、泣き虫だったわ。さ、早くうちに帰ろう。みんなでパンを食べられるのも、明日までよ」

 そしてエルディーアは、明後日には剣士の試験を受けるために、隣国ステータに旅に出るのだった。



「エルディーアよ、そなたの冒険が大事なく続くことを、皆が祈っておるぞ」

「はい!」

 まさに旅人といえる装備に身を包んだエルディーアは、王広間で訓示を受けた。父のアーサーは、軽装で娘の肩を叩く。「おまえならきっと烈風の騎士の称号もいつかとれるだろうな」「お父さん、それは無理よ!最高の階級11なんて!」「期待を込めてだよ。今度のステータでの試験……階級5、『疾風』の騎士には、確実になれるだろう」それには少し自信があって、はい、と元気に答えた。

「記念に、王家の秘宝を見ていきなさいと王様がおっしゃったんだよ」

 エルディーアは父に連れられ、宝物倉庫の展示フロアに入る。きらびやかな鎧、兜、わずかな風にもなびくドレス。どれもうっとりと見つめていられた。

「あれだよエルディーア」

 アーサーは手を伸ばす。大剣だ。エルディーアでもぎりぎり、かつげるかどうか。太い刀身には、数えると20の色とりどりの宝石が、剣のじゃまをしないようなあつらえで散りばめられている。

「これだけは触れても良く、もしも扱えるなら貸与していただける」

 しかし父の腕でも、それはまったく、ただの鉄の棒のようにしか動かせない。エルディーアはこれからの旅の運試しにと、両手で柄を持つ。


 すると、なんと20の宝石から――光が放たれる!剣はエルディーアを待っていたかのごとく、大きさを両手剣から片手剣ほどにかえて、そして『語りかける』。


『待っていたぞ、新しい相棒を』


 エルディーアもアーサーも、もちろんすべての国民が驚く事態のなか、エルディーアはこの剣も携えて国境の扉を開いた。




「あの、あなたは伝説にある『完璧剣パーフェクトソード』なんですよね……」

 エルディーアが森のなかおそるおそるようやくきくと、それは青年というよりは父アーサーよりももうすこし年をへた男の声で返答があった。

『そうだ、私のような剣は世界に5つあり、それらの正当な持ち主が、定めの場所に立ったとき、世界は崩壊する』

「……?!」

『世界は人間による小さくそして卑屈ないさかいが絶えない。無駄な命が失われないようにするための、創造神が提案した防波堤システムなのだ』

「そんな、それは止められますよね?」

『おまえたち人間が、混沌ケイオスの神に魂を売らなければな、あと』

 ぱぱぱっとは自身の20の宝石を点滅させる。

『これらの力がすべての剣から失われても同じだ』

「――!?」

 かけだしの冒険者エルディーアには大きすぎる話で、ただただ驚いていると、ポロリ、と剣の宝石のひとつ、『斑雪はだれゆき』が落ちた。青白いその粒を、エルディーアは慌てて拾う。

『いまの全点滅で、それの力を使い尽くした』

「えー!?そんな簡単に力つかっていいんですか!?」

『それと、私は仲間と思ってくれ、敬語はいらんよエルディーア』

「今それを言うときなんですか?! なんか違わなくない?!」




 数回の戦闘――ゴブリンやスライムといったものとは、エルディーアはもともと持っていた鍛練の片手剣ショートソードでそつなくこなし、勝利した。最初の目的は、隣国ステータで、正式に騎士階級を授与することだ。


「あれっ、こんなところに関所なんてあったかしら?」

 オーリエとステータは国交も盛んで、国境間もスライムとゴブリンくらいしか現れない平和な道程だったから、見慣れない建物をエルディーアは不審に思った。


『これはまずいな、他の完璧剣パーフェクトソードがいる……サーチオブアザーソード』

 ポロリ、とまた、『春霖しゅんりん』の宝石が落ちる。

「ちょっと剣さん勝手に力を使わないで!!」


 そして黒い屋根の小屋から、いかにも重装備の――父やステータのアーマーナイトクラスの騎士がひとり現れる。


「ようやく来たか、ソラと従者よ」

 重い男の声。ソラと呼ばれた剣は答える。

『その様子では、持ち主をまた見つけられなかったんだな、イロ』

 両手剣を持った騎士は何も話していない。剣が返事した。

「これで200人目だ」

 あちゃー、とエルディーアとソラは見合わせてあきれる。ところが、イロはその200回の邂逅のうちに……手当たり次第に剣士にアクセスするという能力スキルを身に付けてしまっていた。


「つぎはおまえだ!」

『いやいやいやどうみても私このと仲良くできてますよね?』

「剣さん!」

『私はソラだうぼあ』


 イロの剣から3つの石が落ち、エルディーアとソラの間を裂いた衝撃波は森の木々まで折り尽くす。





『ソラと、イロが対峙しているな』

『ついに5つすべてが誰かの手にわたるのか』

『一瞬でも5人が、真の持ち主かどうかはともかく、剣を手に取るのはこれで……』

『21回目だ』



 世界のはざまで、謎の会話が始まった。












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