星暦二千百十一年一月

第1話 一月一日 お引っ越し(前編)

 せいれき二千百十一年一月一日 木曜日


 おはようございます。


 わたしは今、日本をはなれて、海上に浮かぶ人工島に設立されているという、私立学園の高等部に入学するため、成田の空港から飛行機に乗って、ひめアイランドという人工島の空港に到着した所。


 何でも、一つの国あつかいになっているとの事で、案内にしたがって、入国審査を受けるためのカウンターへと向かっている所。


 案内と言っても、あしもとの床に矢印が表示されて、進む方向を示してくれる。しかも、一人ずつ、それぞれに案内してくれるというすぐれもの。ハイテクって、すごい。


 いつの間に、こんな便利な技術が開発されていたんだろう。


 案内されるままに、カウンターへと向かうと、かなり美人なうけつけじようがいらっしゃる。


 百八十センチは超えていそうな長身とすらりとしたモデル体型。面長で、ややきつめの猫の様な目。ひとみは深いあお色。


 髪の色も、あいに近い青で、めてるのかな?


 胸に名札。[はやレマ]と読める。


「姫野アイランドへようこそ。案内担当の早見です。まき 鹿乃子かのこ様で間違いございませんか?」


 おお。持ってるだけで、色々手続きがかんりやく出来るよと言われてわたされた、住民カードのおかげだろうか?


「登録カードのアイデンティティナンバーは、ゲートを通過した際に読み取っておりますので、まましまっておいていただいてかまいませんよ」


 ポケットから、住民登録証を出そうとしたポーズでかたまったわたしを見て、ほほみながら教えてくれる。


 しんせいするまでも無く、わたしの名前までわかるらしいよ。


「はい。槇です。よろしくお願いします」


 ぺこりと、おをしながら答える。


「お手数ですが、ちらのボードに右のてのひらを当てて頂けますか?」


 そう言いながら、ノートより一回り大きなタブレット端末を此方に向けてくる。


 掌の形にわくえがかれているので、に自分の手を押し当てる。


 白かった画面が青に変わった。


「以上で、全ての手続きは終了です。生活に必要な情報は、お持ちの携帯端末に送信されております。又、此方は簡単な案内が記されたパンフレットになっておりますので、ご活用下さい」


 全て? 今、全てって言った? 、役場だったの?


「此所って、空港のカウンターじゃ無くて、行政の窓口なの?」


「失礼致しました。ご説明が抜けておりました。その通りです。入国審査から日々のお手続きまでうけたまわっております、総合ステーションのカウンターになります」


 飛行機降りたらいきなり役場なのか! 吃驚びつくりだ!!


「ところで、お住まい予定の学生寮への向かい方は、おわかりですか?」


「あ、いえ、全く判りません。教えていただけますか?」


 判らないよ。無理。おになってた、いしざわのおじさん。行けば判る様になってるからだいじよう。とか言って、何も教えてくれなかったどころか、国外にあるって事を聞いたのも出発のために空港に着いてからだし、全長が二百メートルもある様な超巨大な飛行機だなんて初めて知ったし、じゃあ、がんって。で飛行機に放り込まれて出発したのが昨日なんだよ?


 此所まで、だいたい二十時間の機内で、おじさんに渡された資料で、学校の事とか、最低限必要な法律の知識とか、今までの生活とは違う点や注意する事なんかは読み終えたけど、島の地図はもらってなかった。学生寮の住所は聞いてるけどね。


 荷物のたぐいは、全て宅配で送ってくれたから手荷物はほとんど無い。


此のいきでは、矢印の案内を使えば簡単ですので、セットの方法をお伝えしましょう。端末を出して頂けますか?」


 言われて、携帯端末を取り出す。


 見ている前で、起動するアプリや、行き先の設定方法など、操作の仕方を一通り教えてくれた。


「案内に従って頂けば、軌道コミューター、つうしよう、チューブウエイと呼ばれる、わば列車ですね、その乗り場に案内してくれますので、ご乗車下さい。降りるステーションに近付くと端末が教えてくれます」


「判りました」


「降りた後は、市街コミューターをお使い頂いても、徒歩で移動して頂いてもお好みの方法で。道案内は、端末のマップをご覧いただけば判るかと思います」


がとうございます」


「他に、何かお聞きになりたいことがらがございますか?」


 有る。


 すーっごく気になってる事が一つ。


 カウンターのかたすみでおそうしている、にもようせいさん、と言った、身長一メートル位のふうていの人を見ながら聞いてみた。


「えっと、あちこちで見かけて気になってるんですが、ねこうさぎの耳を付けた方とか、みように身長が高かったり低かったりする方とか、ロボットみたいなかつこうの方とかが、あちこちのお掃除をなさってるんですが、何かのもよおものですか?」


 ………


「ああ! 彼らは都市機能がスムースに運営できるよう各地に配置された[タウンキーパー]という者達です。えーと、鹿乃子様に判りやすい言葉と言いますと、人造人間ですとか、アンドロイド…にそうとういたしますでしょうか…」


 いつしゆん、何のこと? と言う様にほうけた後、わたしのせんを追いかけて、なるほど、と言う表情になって教えてくれた。


 昨夜ゆうべから今朝けさめいに掛けてとししイベントがあって、かみぶきやら食べ物、飲み物のパッケージやらがまきらされているのを、お掃除してくれているんだそうな。


 ついでに、今日きようは一部、業務を止められない部署をのぞいて公休日おやすみで、明日からは通常営業。学園は今週いっぱい冬休みで、来週月曜日が入学式なんだそうです。


 しかし、アンドロイドって、どんじゆうどうかんも短くて役に立たない物だと思ってたんだが、いつの間に実用化出来たんだろう。


 何だか、すごまちだなあ。


 後、いくつかの質問をして、だいたいなつとく出来た。


「色々と、有り難うございました」


 お礼をげながら深くおを。


「鹿乃子様の此れからの生活がさちおおき物になります様、お手伝いさせて頂きます。ご便べんがございましたら、何時いつでもお声をお掛け下さいませ」


 れいなお辞儀と共に返してくれました。凄い。


 そんなわけで、此れから生活する事になるがくせいりようして出発進行。矢印の案内に従えば、駅について列車に乗る事がで来た。


 りる駅も、端末のめいどうですぐ判ったし、降りて地図を開けば、三十分ぐらい。


 歩いて行こうか。

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