第2話 一月一日 お引っ越し(後編)

 りようして、てくてく歩きながらがいを観察。


 一定間隔で、案内板の様な装置が並んでいたりする。


 えんとうけいの台のてつぺんに、顔をしたグラフィックを表示した端末画面が乗っかっている。


 そう言えば、今日は一月一日。


 これまで暮らしていたまちでは正月といって、今日から三日間、新年をむかえたお祝いの日だったけれど、この街では今日がこうきゆうになっているくらいで、明日からはつうに日常生活だという話だった。


 つい先ほど、転入の手続き時に、いくつかした質問の答えに付け加えて、教えてくれた事なのだけれど。


 それでも、一応新しい年を迎えるという事で一二月三一日の夜から、今朝けさ、午前れいを回るまでは年越しのカウントダウンとやらでにぎやかだったとか。


 さわぎのごりというか、そこいら中に花火やかみぶき、食べ物の容器などが転がっていて、それを片付ける人がおおぜい働いている。


 …いや、人じゃないな。路上の清掃を行う[タウンキーパー]と呼ばれるアンドロイドだとか言ってたな。役場の人。


 実際、身長が一三〇センチくらいしかないひげもじゃの人とか、頭にウサギの耳が付いたエプロンドレスの女の子とか大きくとがった耳を持つ長身ですらっとしたやたられいな女性とか、なんかぷよぷよとしたボールみたいなはんとうめいかたまりとか…。ドワーフにじん、エルフ、ス○イム…だろうか?そのほかにも色々…。


 それらをながめつつしんきよに向かって歩いていると、の国でウサギを追っかける女の子が路上にった紙吹雪を大きな業務用そうで吸い込んでいるのが前方に見えた。


たいへんだね。ごろうさま。」


 つい、声をけてしまった。


「ありがとう。きょうは とくべつなひだから がんばるね」


 にっこり笑って答えてくれた。……かわいい


 じゃなくて!いや、これ機械じゃないだろ?受け答え、自然すぎるよ?


「まいとし、いちねんのはじまりのひだけは おいわいだから ごみをどうろにちらしてもいいことになってるんだよ?おねえさんきょうひっこしてきたひとでしょ?ふだんはごみをぽいぽいするとおこられちゃうからきをつけてね?」


 しんせつだ? え? 何で私が今日してきたって知ってるんだ?


 色々混乱していると


「こんにちはー、アリスちゃん 今日はお仕事が大変ねー」


 背後から声がした。名前そのまんまかよ。


「こんにちはー ゆりかちゃん きょうはがんばるよー」


 背後からの声の主をり返ると かわいらしい女の子だった。きんぱつ! 碧眼あおめ! 肌の色、白っ! で ちっちゃい! かみが長い! ひざまである! ボリュームがすごい!!


 人間か?これ…


「ゆりかちゃんはにんげんのひとですよ?」


 ガバッと掃除機を持った女の子に振り返る。


 私の疑問に対するてきかくなお答えをがとう! 私口に出してなかったよね?! やっぱ、機械じゃないよね?


「わたしはゆりかちゃんに[ありす]というなまえをもらった[たうんきーぱー]です。よろしくね」


「いや中の人いるでしょ?中の人。自動機械のする受け答えじゃないよ?」


 思わずさけんでしまった。


「このおねえさんはきょうひっこしてきた[まき かのこ]さんです。こうとうぶのいちねんせいですよ」


 おいーっ!個人情報ダダれーっ! そしてマイペースっ!?


「ユリカだよー。私も今年から高等部。よろしくねー?」


「同級!? って、年齢としいくつ? 飛び級?」


 ユリカと名乗る女の子の自己紹介にまた叫んでしまった。マジか?その体型で一五歳?一二,三歳にしか見えんぞ?


「いーよもーなれてるしー 一五だよこれでもー」


 くされてしまった。


 うわづかいでにらんでくる…


 ごめんなさい。


 でもなんかなごむ。かわいい。


 で、その後、アリスというタウンキーパーと別れ、なぜかユリカちゃんと並んで歩いている。


「[ひまわり]ブロックの学生アパートに入るんだね。私[なでしこ]ブロックに住んでるの。」


 この街の住民居住区って花の名前なんだな。


 [ひまわり]と[なでしこ]は隣同士のブロックだったよな? 確か。


「さっきの子って、ほんとに機械なの?」


 どうにもなつとくがいかないのでいてみた。


「機械じゃあないかなー。人工生命体って言った方が近いかもー。金属質のこつかくに人工の筋肉やてるんだよー。ちゃんと住人登録もされてるよー?」


 人じゃん。機械じゃないじゃん。


「私の名前を知っていたのは何で?」


「中央のデータバンクとつながっているからだねー。かおにんしようもバッチリ。警備も担当してるから住人の情報は全部持ってるよー? 説明聞かなかったー?」


 まつたく聞いてません。


「……居住管理の担当、だれだった?」


 恐る恐るという感じでユリカが聞いてきた。転入手続きの人かな? だったら…


「んー? 確か…、はやレマ… とか…」


 担当の人を思い出しつつ答えると、


「あぅわー…レマちゃんかー。こっちにまるげしたなー。」


 頭をかかえてしゃがみ込んでしまった。


 なんか問題有りっぽいです。いいのか? 役人がそんなんで。


「知ってる人?」


 とくと、


「友達のお姉ちゃん。」


 という答え。続けて、


「時々すーごく投げやりで、まかせで手抜きになる人ー。」


 ぐったりとして答えてくれた。


 そういえば詳しい事はパンフレットをとか言ってた…なんとなくわかる気がする。


「すみませんが色々と教えて下さい。」


 色々と危機感をおぼえてたのむ事にする。


 お昼も近いので、食事をする事に。


 おすすめのファミリーレストランへ案内してもらって食事。


 その他、とりあえず必要そうな近場の各種お店やら施設やらを案内してもらい、ユリカちゃんと携帯端末の番号交換。


 で、明日また会う約束をしてから、ここでの生活拠点になる学生寮の一室へと向かう。


 ふつーに、アパート。


 これから何年か生活する事になる部屋に入って、またまたびっくりした。


 ひろい! いや、これ普通に家族で生活できるよね! ダイニングとキッチンがいつしよになってはいるけれど、それとは別に六じようくらいと八畳くらいの個室にクローゼット。


 バスルームと化粧室付き? 誰が掃除するの? しかも内装新品になってません? さらに言えば基本的な家具も準備されていますよ?


 もしかしてシェアルームか何かだった?


 あわててげんかんを出てひようさつを見ると[槇]という私の名前以外何も無し。


 もう一枚名札が付くゆうも無し。


 再確認のため、もらった玄関のかぎで、じようして確かめる。間違いなくここの鍵。


 マジかー。


 この街には、転入手続きをしてから びっくりの連続だったしすっごくつかれた。この部屋がとどめになった感じ?


 荷物の確認だけしたら休もう。


 まだ一六時にもなってないけど。


 荷物はどこだ?運送業者の人、小部屋に入れてくれたと聞いたんだけど、あぁ、押し入れみたいなとびらがあるや。


 扉を開けてへたり込む私。


 うん。これは小部屋じゃないよね。小部屋じゃない。


 充分六畳間。窓がないけどな。いわゆるなん


 こんな住居を学生にしようたいって、どうなってるんだ?この街の常識は。


 しんと日常使うものだけ荷物の山から引っ張り出してベッドにもぐむ。


 学園初日の五日までにユリカちゃんにたずねる事がやまみになってしまった。


 今日はもう考えるのやめた。


 おやすみなさい。

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