第3話 一月二日 どこの国

 星暦二千百十一年一月二日 金曜日


「あはははははははははははははははははははははははは……」


 目の前で文字通りおなかをかかえて笑い転げているのは言うまでもなくユリカちゃん。



 今日は朝から荷物の開梱かいこん。それほど量があるわけでもないので二時間ほどで終了。


 ユリカちゃんと連絡を取って、昨日お昼を取った店で待ち合わせしてまたお昼。


 アパートに関してきたかったのもあって私の家にまねく事になり移動。


 その途中でユリカちゃんの名字みょうじいてまたびっくり。[野村]だそうな。見た目からてっきり欧州系の人だと思ったよ。金髪とか 碧眼へきがんとか!陶器とうきみたいな真っ白な肌とか!!


 まあ、ここまで名字みょうじを聞こうとしなかったわたしにもビックリだけどな!


 両親揃って日欧のハーフだそうで。[欧]がもろにでた!とは本人の談。「身長と童顔どうがんな顔の作り以外でね」と続いたが。…頑張がんばれ!?



 家の間取りに付いて教えてもらおうと、昨日初めてこの部屋に入った時の様子を実演して見せた結果が冒頭の大笑い…と。最後の納戸なんどの下りがツボったらしい。


「あー。笑い死ぬかと思った。」


 五分ほど笑い続けて無事復活。 ちょっとほっぺムニりたくなったけど我慢がまん


姫野ひめの学園の生徒だとこのぐらいの部屋は普通だよ?」


 実は、学科によっては課題やら研究やら制作やら、相当な量の荷物が増えて この程度の間取りだと寝るところが無くなる人も出てくるとか…。


「私、普通学科だよ?」

 と訊いてみると、


「最低でも大型の端末が一式支給されるかられだけで小さい方の一間、半分ぐらい埋まるし。」


 なんですと?…


「ネットワーク使った調べ物とかレポートとかあるしね?携帯端末じゃ作業追いつかないんだよ?」

 と、真顔で返ってくる答え。


「…携帯ですら使えてないのに?」


 昨日、携帯端末の番号を交換した時のドタバタがよみがえってきまして・・・。


「ゆっくり慣れていけばいいんじゃないかな?」


 その言葉にこくりとうなづいて溜息ためいき


 とりあえず、この部屋の異常な広さの謎が解けた。…けど……すごくいい待遇だよなぁ。


 その私の落ち込んだ姿がまたツボったのか再び笑い転げている娘が約一名おりましてですね。こいつはー!



 次にきたい事が、


「この街って島だよね?太平洋上の。どこの国扱いなの?」


 すっごく怪訝けげんな顔をされた。


 そのあと、


「どこの田舎いなかからおいでになりました?」


 と、真顔でかれた。 悪かったな!世間知らずで!! それなりの理由がですね・・・まあ 今はおいといて、


「私の意思で来たわけじゃなくてね? 知らない間に入学手続きとか転居手続きとか終わっててね?昨日朝チケット押しつけられたあげく飛行機にほうりこまれて…」


 と、反論等はんろんなどしてみる。うぅ。自分で言ってるのに自分でも信じられないよ。事実なのに。受験はどうしたって話になるよねぇ これ。


推薦枠すいせんわくあるあるだね。 どの国って言うのはないかな。此所ここ、巨大企業グループの持ち物だから。」


 あっさり言いわけが受け入れられ・・・って、個人資産なのか?!!


「いや、個人じゃなくて、企業ね。姫野グループって言う。超有名企業グループ。・・・まさか?」


 ごめんなさい。すみません。ゆるして下さい。存じません。


 思わず土下座。


 ちょっとね、色々とね?個人的事情が…ですね。


「・・・その様子だと、この星自体が姫野グループの物ってゆーのも、もちろん知らないよね?」


 ・

 ・・

 ・・・

「はあ?!!」


 ごめん!マジで思考が追いつかないっ!!


 大混乱中!


 その間にも説明を続けてくれるユリカちゃん。


「あなたの乗った飛行機って、やたらでっかくって窓がなかったでしょ? 恒星間飛行用の宇宙船よ?それ」





 目の前でかわいい手がひらひらと振られているのが見える。


「やっと再起動したー。」


 という声ではっとする。


「疲れたでしょ? 今日はここまでにしましょ?」

 

「ユリカちゃんだ。」


「そーだよー?帰ってこれた?」


 律儀りちぎなお返事?あれ?私、声に出してた?


「出てた。ところで、ね?足 付いてる?」


 何を言っているのかと思いつつ


「そりゃここに二本・・・って!~~~~~~~!!!」


 意識した途端悶絶とたんもんぜつした。!!しびれてっ!


「あ~。やっぱり。正座したまま二時間も気絶してればねー。」



 足が二本とも帰ってきてから、色々教えてもらいました。そーかー。いつの間にか人類は海外へ行く気楽さで恒星間飛行できるようになってたのかー。


「えーと、この件に付きましては…」


 恐る恐る声を掛けると、


「事情は知らないけど、まー言いふらすよーな事でも無いしー」


 是非、内緒でお願い致します。


「まー、よくある話だしねー。」


 ないよ?きっと。よくあるなんて事はきっとないと思うよ?



 いつの間にか(多分、意識さんが外出中に)十七時回っていたので今日のところはお開きに。


 居住管理局(市役所の転入受付だと思ってた)でもらったパンフレットをよく読むように言われたので、お風呂を済ませて寝る準備も完了してから読む。 ほんとに別の天体だった。でも星の名前は地球(仮)。


 (仮)って何だ!(仮)って!!!    主星の名前も、太陽(仮)だった。



 いいや。!もうっ!


 おやすみっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る