第10話 一月九日 吸血姫

 星暦二千百十一年一月九日 金曜日


 今日はすんなりホームルームに到着。


 久しぶりに さつきとユリアがいた。


 こんな出席状況でホントに学業大丈夫なのか?


「そんな心配しなくても平気よ?私たち、記憶力はバッチリだから」


 ユリアに心配いらないと声を掛けられる。そんな表情に出るのかなあ。声にしてないはずなんだが。


鹿乃子かのこの制御を覚えるべき」


 ぽん、と肩を叩かれて振り向けばルミ。


 隣では かおりがうなづきつつ、


「鹿乃子ちゃんは精神波みたいなのがダダ漏れしてますから。勘のいい人には考えてる事判っちゃいますよ?」


 大ショック。知らなかった。


「私たちレベルで無ければわからないわ。安心なさい」


 ユリアがなぐさめてくれる。


 そのレベルってのが判らんけどな。能力のクラス分けなんだろうけれども何が基準?どうやったら決まる?わたしはどの辺?


「あー、早めに訓練した方がいいかも!お勉強も含めて今日から始めちゃう?」


「さつきが言うんならその方が良いかも。カミーラ今日来てるかしら」


 ユリアさん?その吸血鬼のみたいな名前の方もメンバーズ?


「吸血だね。何でも紀元の元になった方のお姉さんらしいわよ?」


 何やら端末をいじりつつもユリアのお言葉。


 うわー、ずいぶんお年頃ですねー。


「見た目ふつーの少女。問題ない」


 ルミ。びみょーな突っ込みありがとう。そんな方までいらっしゃいますか。


「よし。今日は出席するって。ちょっと指導してもらおう」


 あ。確認してくれたのか。ありがとう。でもそんな簡単に変わるモノ?


「放課後をお楽しみに。だね」


 軽くウインクを返された。こういうところ、日本人ぽく無いよなーユリア。


 そういや、ユリカ見かけないな。もうすぐ始業だぞ?

 

 お昼です。ユリカはまだ見かけません。


「ユリカ、急ぎのお仕事だって」


 少し遅れてきたルミ と かおり。確認してくれたのかな?


「午前中の鹿乃子ちゃん。ずっと落ち着かない様子でしたので、ミュラちゃんに伺いました。安心しました?」


「ごめん。逆に心配が増した」


「確かに。でも、此方こちらに被害が及ぶわけでは無いですから諦めて?」


 なんだか かおりの対応がひどい。


「重役コンビはどこ行ったの?」


 お昼前から、さつきとユリアが見当たらない。


「カミーラの所。多分状況説明」


「なるほど。ありがと、理解した。じゃ食事にしますか?」


 ルミに礼をして三人で昼食を選びに配膳コーナーへ。日替わりで5~8種類のメニュー。その中から事由に好きなだけ(ここが重要)選べる給食施設。味も量も大満足出来ます。





 午後は1時限で本日の授業終了。授業の前には戻ってきた重役コンビのユリア・さつきを含めた五人でクラブルームに移動。


 そこに居たのが、さらさらのプラチナブロンドを肩口で切りそろえ、深いあお色の眼をした北欧系の人種らしい美少女。


 但しロリ系。


「なにげに ひどい感想をありがとう。まあ、ユリカみたいに口に出さなかったところはめておく」


 速効でばれた模様。部屋の奥へ進んでいた四人が顔を背けて震えている様子。肩の震えがひどいようですが。寒いからじゃ無いよね?ひどくない?


「あいつらは後でしばく」


 ピタッと凍り付きました。四人とも。やっぱ寒かったんだ。室内快適温度だけど。此方がくだんの吸血姫様であってる?


「ユリアから聞いた?カミーラだよ。紀元元年からずっと生きてきたわけじゃ無いからね?人生経験はそんなに違わないからふつーにしてくれるとありがたいかな」


 えーと、そろって全力で両手と首を振っているのは何でかな?絶賛横方向に。


「お前らなぁ、話が進まなくなるから ヤ・メ・ロ!」


 振り向きざま両手を振り上げてわめくカミーラ。なんとなく判ってきた。


「あー。はいはい。いじられキャラですよ。ったく。馴染むのが速すぎるんじゃないか?」


 了解です。不貞腐ふてくされた姿がまた可愛いですね。わかります。


「そーゆー納得をするな!」


 四人から、そろって親指(上向き) いただきました。いい仕事した!わたし。



 その後、盛大にねちゃったカミーラのご機嫌回復に奔走ほんそう致しまして。


 まあ、購買特製プリンアラモード(大)で あっさり回復したわけですが。わたしのあの頑張りを返せ!


 後、気が付けばいつの間に戻ったのか、片手でわたしを指差しながらお腹を抱えて息絶え絶えで転がっている金髪の毛玉が一つ。


 ユリカ。覚えとけよ。


 ただ今、わたしの精神波と言うか気?と言うかよくわからない物を解析中。


「見事にねじくれてるなー」


 第一声がそれですか。そんなに拗くれていますか。わたしの性格。


「違うから。性格診断じゃないから。そっち方面へ行くのを ヤ・メ・ロ?」


 がっしりと頭を捕まれてぐりぐりと・握力も腕力もすげー!頭上げられない。痛い。とっても痛いです。


「これ、気力や超能力じゃ無いや。神気だな」


 ハレ、あっさりと看破かんぱされました。龍神りゅうじん係累けいるいですが、何か


「なにかじゃねーっ。係累どこじゃねーよ。いずれ神格化するよ。変な封印みたいなのが無くなれば!」


「おー。すごいね!。鹿乃子神社を建立こんりゅうしないといけないね!」


「今のうちに拝む。御利益ごりやく御利益」


 さつき、ルミ、早いから。そーゆーの。全然早いから。


「神格が上がって顕現けんげんするのに、ふつーは一千年位必要だけどな。変な封印もあるから神にはならないよ。今のままじゃ」


「何だ、おがみ損」


「鹿乃子神社の建立はまだ遠いのね」


 カミーラの一言であっさり手のひら返しがですね。


「ルミ、さつき。お前らの願いは聞いてやらん」


 「鹿乃子様」とすがってくるのをしっしと追い払う。未だ、頭を押さえられたままですよ。そろそろ放して?


「神気が漏れるのを抑えて封印して、それでも漏れるんで再度封印って感じで…五十回以上重ね掛けしてる。お前よくこれで正気でいられたな。すごい耐性持ちだわ」


 カミーラがあきれかえって教えてくれるけど、不都合は無かったし、別に苦痛も無いしねぇ。微妙な頭痛持ちではあるけれど?


 それは良いのですが現状が苦痛です。お願い。手、放して下さいません?


「一つ一つの封印はいい加減で下手くそだし…いいや、神気が漏れなきゃいいならかけ直しちゃえ」


 さらっと怖いこと言わないで。ちょっ。


 光った。


 それは、もー。


 目が開けていられない位光った。


 目をつむってもまぶしい。


 一瞬で戻った。けど、まだ眼がチカチカしてよく見えない。


「後はのんびり慣らすしか無いんじゃね?これでいいか?ユリア」


 カミーラさん。やっと捕まれていた頭が解放されました。うぅ、視界も徐々に。


「ありがと。カミーラ。うん。ダダ漏れの思考が無くなったね」


 良かった良かったとうなづいているユリア。


「顔や態度に出てるのはどーしよーも無いけどねー」


 一言多いわ!ユリカっ。


「ありがとうございます、頭の芯でうずいてた痛みが無くなりました」


 何となく、もやっとわずかにうずいていた頭痛が無くなっている。


「ああ、ふつーに話してくれれば良いよ。こいつらみたいにいじり倒してくるのは勘弁出来ねーけどな」


「了解。改めて「槇 鹿乃子」龍神の末裔まつえいらしいです。以後、よろしく」


「宜しく。神仲間って事でもな」


 ?! ぶっ飛んだ答えを返されて、さすがに固まるよ?


鬼神様きじんさまだよ。見た目はふつーのロリだけど」


 あ、デコピンでユリカが吹き飛ばされた。うずくまってもだえてる。痛そう。同情は出来ないがな。


「…ホントに解りやすいやつだな。もうちょい強めの封印掛けるか?」


 そこまでですか?そんなにですか。封印は遠慮します。後、顔に出ないよう努力します。


 全員に爆笑されました。 ユリカ、回復早すぎ。あと、人を指差すなと言うに。





 来週から色々指導してもらえることとなり、気の制御についてさわりの部分を雑談交じりに。みんなはカミーラを弄りつつ。高等部閉門時刻となりまして帰って参りました。自宅です。


 ありがたくも素晴らしい出会いに感謝を。神に祈りたい気分だよ。神族いたけど。わたしもそうらしいけど。


 巫女だの、神託だの、騒がしかったのは過去の話。すでに故郷に帰る手段も無いのだから 気にする必要もないし。


 これからの、新しい毎日が本気で楽しみです。


 それでは、おやすみなさい。

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