第9話 一月八日 エスパー
星暦二千百十一年一月八日 木曜日
今日も学園へ。昨日を除いたいつものようにバス型コミュータで登校。
校舎に入ると同時に校内放送のスピーカーからチャイムの音が流れ、
「お呼び出し致します。高等部一年Fクラスの
あー。所属しちゃったかー。まだ入会するとは決めてないんですがー。
昨日のことだろうなぁ、とか考えつつ昨日の部屋へ。
重そうな扉が開くのを待って
「お早うございます」
と、中に入れば、
「お早うございます。昨日はご苦労様でした。」
と、ミュラ会長のお出迎え。
今は会長だけみたい?部屋の真ん中にあるソファを勧められ着席。会長と向かい合う形に。
「これは、鹿乃子ちゃんのメンバー証と昨日のお手当です。どうぞお受け取り下さい」
二枚のカードを手渡された。
一枚はメンバーズカード、もう一枚は
「大丈夫ですよ?メンバーズとして認めると言うだけで、活動を強制する物ではありませんから。ちょっとした特典もあります。ユリカちゃんが使い方を教えてくれますから持っていて下さい」
ん?何か言い回しが微妙?クラブメンバーじゃ無く メンバーズ?
「あら。鋭い。」
ぅあー。相変わらずの「エスパー(疑)」。
「あはは、エスパーで合ってます。」
…何ですと?
「表層の、強い思考だけですけれど、読心出来ますよ。あたし」
晴れて(疑)がとれました。他は?他の連中の(疑)は取っちゃって良いのか?だいたい良いそうです。おい
「鹿乃子ちゃんの一限目の授業を
うん。そろそろ教えてもらった方が助かります。という事でお話を伺います。
先ず、ユリカが前に言っていたように、この学園どころか太陽系全体が法人「姫野グループ」の所有物であること。
次に、念動力や精神感応といった
さらにグループ社員、関係者で、この星系以外で活動・生活している者の一部が、そういった事例の確認・監察・保護を行ったり 脱出希望者の受け入れ口になっていること。
そういった在住者の教育機関として姫野学園が設立されていること。
従って、特殊な能力保有者が在校生の八割に達していること。等。
「昨日ユリカが何やったのか判らなかったんだけど、あんなことが出来る生徒がゴロゴロいるんだ…。」
「いませんよ?」
あれ?いや、今受けた説明だとー
「あれは特殊な実例です。あんなのがゴロゴロしてたらこの星系消滅しますよ?」
いや、いくら何でも星ごとって…
「連邦の軍に
そっちの意味でしたか。
「一部の高位能力者以外はちょっとした隠し芸レベルでしか有りません。でも、その高位能力者を発掘して能力の使い方を学ばせる必要があるのも事実ですね。野放しにしては危険すぎますから」
……発掘された能力者がメンバーズ、とか?
「
「能力なんて使わずにひっそり暮らしたいだけなんですけど」
つい、そう訴えてしまう
「それならばその様に生活するのはもちろん大丈夫です。が。ご自分が危険視されるレベルであることを自覚していただく必要はありますし、
それはそうか。登録だけしておけば暴走させなきゃ自由にして良い。と。
「納得していただき有り難うございます」
そう言いながら軽く頭を下げるミュラ会長。
同時に、重苦しく感じていた雰囲気が綺麗さっぱり消える。
「ちょっと、威圧を掛けさせていただいてました。ごめんなさい」
そう朗らかに告げられまして、
「なんだかどっと疲れが」
正直、すごくほっとした気分になると同時に
「その程度なんですね。いつもこのお話をした後意識を保っていられる方って
「どんなレベルの威圧?ひどくない?」
思わず叫ぶ。
「以前は、お話の途中で逃亡しようとされる方が続出したものですから、その予防のためです。ホントにごめんなさい」
ああ、そりゃぁそうなるか。迫害からやっと逃げ出せたと思ったら今度は管理されると感じたら、逃げたくなるよなあ。 でも、わたしは自分の力が危険視されるのは理解してるつもり。…つもりじゃまずいんだろうけど。拘束されるんで無く自由が保障されるならかえって便利だ。
「おおよそ理解出来ました。
ぺこりと頭を下げたら眼をまん丸にして見つめられた。何だ?
「その反応は初めてです。こちらからお願いして…いえ、強制していることです。こちらこそ宜しくお願い致します」
よっしゃー。これで当分の間気楽に生活出来るぜー!
「ホントに面白い方ですね」
なぜか
それから少し雑談していると一限の終鈴。また放課後に、と教室に向かう。ユリカが復活していた。それは置いといて、残りの授業を受ける。
昼食時、カードの使い方をユリカ達から教えられ「姫野バンク」と記されたカード。預金カードだった。に振り込まれた金額を見てお茶を吹き出す大惨事。
大卒公務員の初任給どころじゃ無い、年収並みの金額だぞ。これ
「わたし何にもしてないよ?」
と叫ぶと
「鹿乃子ちゃんは お・と・り。」
しれっと、とんでもない発言が出ましたよ。どうゆー意味だ!ユリカ
「暗殺指令が実行されてるって言ったでしょ?ミュラ姫が暗殺対象を鹿乃子に書き替えて囮にしたの」
わたしを指さしつつ爆弾発言。
「ユリカ、本人にそーゆー事を言わないのが常識。」
「そこを言っちゃうのがユリカちゃんのお約束ですね」
ルミと かおりはマイペース。
「お前らー、そこで名前が変更できるくらいならプログラムの実行止めればいいだろ?…って、あっ」
すっごく嫌な考えに思い至った。危険手当か!あの金額。
「当たりでーす」
「鹿乃子の特異能力、確認が必要」
「でしたー」
かおり、ルミ、ユリカ。一発ずつデコピンな。
「それは危険 ユリカに
「私たちじゃ頭が無くなっちゃいます」
ルミと かおりがおでこを押さえて逃げていく。
ユリカは最初に撃沈しておきましたとも。
放課後。例のお部屋
「姫のおかげでおでこが痛いの」
「姫って何?」
隣のルミに問いかける。
「ミュラの愛称?「ミュラ姫様」。 通り名的な」
「割と「ミュラ姫様」とか「姫様」って呼ぶ方、多いですね」
「犯人はユリカ」
「それを言うなら言い出しっぺでしょ?ルミちゃん」
ルミと かおりが答えてくれた。
「だって、見た目が姫なんだもん」
まだむくれているな。ユリカのやつ。
確かに見た目が
その後の、おでこを押さえて「えへへ」と笑う姿が可愛くてですね。
「鹿乃子ちゃんもわたしのことはミュラと呼んで下さいね。会長はいらないです」
許可をいただきました。わたしも「姫」と呼ぼう。
その後、昨日ユリカが何をしたのか問い詰めたところ、監視カメラの映像を見せてくれました。ミュラ姫が。
二人で森の中を歩いて行くところから始まって、背後から近づくアンドロイドソルジャーが写り、直後ユリカが振り返ってわたしがジャンプ。目標を見失ったアンドロイドにユリカの正拳突き。一瞬の間が空いて木っ端微塵になって飛び散るアンドロイドソルジャー。と何回か見直したけど何が起きているのか判らない。はっきり異様な映像でした。
「それで、この様子を見ていたわたしがタウンキーパーのアリスちゃんに連絡してお掃除をお願いしたの」
アリスちゃんってみんなが知ってる名前なんだ。
嫌、違う。なぜあんなに細かい破片にまで爆散するのかが問題だった。
「ユリカちゃんの特異性ですね。これから長い付き合いになると思われますから 次第に判るようになるんじゃ無いかしら?」
「ミュラ姫」
「はい、何でしょう」
「この後のアリスちゃんたちとお掃除している映像を下さい。」
「えーと、それはどうしてか
「あのときのユリカ、とっても面白かったから何度も見返して笑いたい。」
ミュラ姫とそんな馬鹿話を始めたら、ユリカが怒った。
「鹿乃子ー。面白いって何よ。あたしも見たいじゃん」
あれ?違った。
とりあえず、わたしよりユリカの方が異能が強いのは判った。ミュラ姫からもかなりのパワーを感じるし。ルミも、かおりもそうなんだろう。私の過去も有る程度察して居るみたいだけど、普通に接してくれているのは判る。普通だよね?
少しずつなじんでいこう。ユリカに引っ張り回される未来しか見えないけれど。
みんなで騒いでいたら高等部閉門時刻。今日はお開きとなりました。
映像はもらいましたよ。ユリカも もらってた。再生しながら爆笑していたと報告しておきます。
では、おやすみなさい
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