第12話

「へぇー、661階は洞窟か。なんか振り出しに戻った気分だよな。」


『ナオキそこ鑑定してみて。』


「え?お、おう。」


661階に下りると、そこは洞窟になっていた。最初にこのダンジョンに送られた時も洞窟だったために、最初に戻ってきたような気分だった。まあ、最初のところよりは少し狭い気がするけど。

そう思っていると、ノアが洞窟の壁の方を向いて鑑定してみろと言う。まあ断る理由もないし、ノアも何かあるのだろうと思って鑑定してみた。



〔オリハルコン〕

世界一硬いと言われる鉱石。

武器や防具など、様々なものの素材となる。

希少価値が高い。


なんと!?

オリハルコンといえば、異世界系のラノベや漫画において頻出の鉱石。レアアイテムだ。異世界ものに出てきすぎて逆にレア度が薄く感じる。


「ノア、お前すごいな。もしかして今までもあった?」


『えへへ、僕すごいでしょ。もっと褒めて。ちなみに、今までは見かけなかったよ。』


「そっか、まあまた見かけたら言ってくれ。」


『うん、それならそことそこと、そこにもあるよ。』


へ?


〔アダマンタイト〕

世界でもトップレベルの硬さを誇る。

希少価値が非常に高い。


〔ミスリル〕

世界でもトップレベルの硬さを誇り、同時に、純粋なミスリルは魔力伝導率が100%であるため、魔法使いに好まれる。


〔ルビー(原石)〕

赤い宝石の原石。


〔白金(原石)〕

プラチナとも呼ばれる金属の原石。



わーお、オリハルコン・アダマンタイト・ミスリルといえば、異世界3大鉱石じゃん。

凄すぎてビビるわ。

それに、宝石や金属もいっぱいある。〔金〕〔オパール〕などなど、僕も知っているようなものもたくさんだ。

やったー!僕お金持ちじゃん!

いや、宝石とかってこの世界でも価値があるのかな?

まあいいか。いっぱい拾っとこ。


「ノアすごい!最高!カッコいい!カワイイ!日本一!」


『ほんとに?そんなにすごい?

わーい!僕ってかっこいい!

にっぽんいちってなに?』


「あーそっか、まあ、何でもいいじゃん。とにかくノアは最高だねってこと。」


『うん!』


ノアって素直だな。まあ、実際可愛いし、ペガサスだからカッコいいし、すごい鉱石見つけられて最高だし、嘘はひとつもないからね。





そのまま僕たちは鉱石を収集しながら665階まで到達した。

ふと、661階から665階までは魔物が現れてないな。ボーナスステージかな?



666階はもう鉱石すらなかった。

もはや手抜きじゃん!


そうして歩いていると、目の前に大きな門が現れた。


「これってボス部屋の扉のでかい版だよな?次は670階のはずなんだけど、もしかしてここが最後なのか?

だとすればこの半端な階数なのも頷ける。

ってか、666って悪魔の数字じゃん!もはや神の迷宮ではないよね!?」


『分かんないけど早く行こうよ』


「いや適当すぎだろ。まあ、行くしかないのはたしかだけどな。

でも、その前に腹ごしらえしない?」


『ご飯!?食べる!』


「お前は、、、まあかわいいから許す。

ノアは何が食べたい?」


『グリフォン!』


「あー、あれはうまいよな。そうするか。」





「よし、じゃあ腹ごしらえも済んだことだし、多分最終決戦に行きますか。」


『えいえいオー!』


テンション高めのノアとともに、最後であろう戦いへと向かう。

さっきの食事が最後の晩餐にならないことを祈りながら。



中に入ると、扉は閉まった。これはお約束だから別にいい。

だが、振り向くとそこには巨大なドラゴンが眠っていた。それは今までのどの魔物よりも強いであろうことは見て分かった。

鑑定すると、



《黒竜》

世界に2柱存在する神竜の1柱の黒竜。

魔物ではないためにランクは存在しない。


魔物じゃない?神竜だからか。

魔物じゃなくても戦うべきなのかな?

いや、戦わないと出られないよな?


考え事をしていると、突然目の前の黒竜の大きな目がパッチリと開いた。

突然のことに驚きを隠せないし、何より目が怖い。


『ほぉ、久々の客人であるな。ここまでたどり着くとはよほどの力を持っているようだな。


いや、お主からは我らと似た匂いがする。お主は使徒か?』


唐突に使徒か?と、聞かれたが、神の使い的なのが使徒だろう。となると僕は一応使徒になるのだろうか。でも間違ってたら、『嘘をつきおって、お主のようなものは…』とか言って殺されかねないしなあ。


「あの、僕は使徒っていうか、神様が転生させるって言ってこの世界に。」


『ふむ、なるほどのぉ。

その経緯を説明してみよ。』


「あ、はいはい。それはですね、、、」


別の世界で死んだこと。神様のところで、頼みともいえないような頼みをされたこと。いきなりダンジョンに落とされたこと。これまでのことを事細かに説明した。黒竜も静かに聞いてくれた。


『ふむ、大体の事情はわかった。おそらくお主が話したのは創造神様であろう。性格などは創造神様以外考えられんからの。

その頼みというのが何なのかはワシにも分からん。だが、そういうことであればワシも協力しよう。まあ、お主の力しだいではあるが。』


そう言うと、僕の目の前に大きな卵が現れた。ぷかぷかと浮いている卵はおそらく目の前の黒竜が発現させたものだろう。そして、これをくれるということか?


『それを今ここで孵化させてみせろ。やり方は簡単だ。その卵を温めるようにしながら魔力を与えていく。

その卵は、相当量の魔力がなくてはならないうえ、魔力以外の力量も相当高く、心の清らかなものでなければ孵化しない。どうだ、やってみろ。』


「分かりました。やってみます。」


僕は目の前の卵を抱きかかえて、親鳥が卵を温めるように、守るように大事に大事に魔力を与えていく。生まれてくる元気な赤ちゃんを想像しながら、育むように。

集中していると、どんどん魔力が奪われていく。だんだん苦しくなってきた。でも、ここでやめたら赤ちゃんは産まれられない。

立っているのも辛くなり膝をつく。ノアが心配して寄り添ってくれる。


すると、ピキッ、ピキピキッと音を立てて、卵が割れる。

きっと産まれたんだろう、僕を認めてくれたんだろう。嬉しかった。生命の誕生に立ち会え、それに自分が貢献したことが。


「う、産まれる。」


『うむ、どうやら合格のようだな。』


黒竜が合格だと言ってくれた。よっしゃあ。

でも、もうダメだ。

そのまま僕は気を失った。






「う、ぅん、あれ?ぼく、」


『パパ!オイラのパパ!』


「え?」


目が覚めると、まだ気分が悪いながらも起き上がる。すると、"パパ"という単語が聞こえてきた。


『オイラ、パパのおかげでちゃんと産まれられたよ。ありがと。オイラに名前つけて!』


うん、パパって僕のことだね。

横を向くと、小さい、と言っても小型犬くらいの大きさはある黒竜がいた。さっきの卵から産まれたのだろう。目がクリクリしていて可愛らしい。


「うーん、名前か。

あ、その前にパパっていうのやめてくれ。僕のことはナオキでいいよ。」


『うん、分かったナオキ。

それで、オイラの名前きまったかい?』


「ちょっと待ってね、なにがいいかな。」


竜なんて見るのは初めてだ。いや、もちろんペガサスも初めてだったよ。でも、なんというか思い浮かばない。

というよりもだ、そもそも僕が知ってる竜は大体殺されるのがおおい。聖書なんかでも『ダニエル書補遺』のベルと竜でも、『新約聖書』のヨハネの黙示録でも、ダニエルやミカエルに殺されてしまう。

竜ってそんな役回りだと思う。

だから、死んだりしないいい名前をつけてやりたい。

思い切って神様の名前つけようかな。親が神竜だから別にいいだろう。


「よし決めたぞ!お前の名前はウーノだ。

僕がいた世界の神様で、天空の神であり宇宙の神、不滅の空であるウラノスからもじった。どうだ?」


『うん!オイラはウーノだ!ありがとうナオキ。』


『どうやら契約は成ったようだな。よくぞやったナオキよ。

これからお主はウーノの親であり兄弟であり仲間である。大切にしろ。』


どうやら黒竜も認めてくれたようだ。僕が親ってのはちょっと引っかかるけど、まあ卵を孵化させたのは僕だしな。


「ああ、ありがとう、大切にするよ。ノアも弟だと思って大事にするんだぞ。」


『うん、弟。ウーノ、僕のことはお兄ちゃんって呼んでね。』


「そういえばウーノは念話が使えるんだね。生まれつきってのはスゴイな。」


『オイラは竜だからね。高位の竜はみんな使えるんだよ。』


「へー、ノアなんて……」


『ま、まあいいから!ウーノスゴイよ!』


『えへへ、兄ちゃんに褒められた。』


なんというか微笑ましいな。仲のいい兄弟のようだ。


『ところで、お主には加護をやろう。すでにいくつか神の加護がついているようだが、持っていて損はないからな。』


どうやら黒竜が加護をくれるらしい。神の加護がいくつかついてるって言ってたけど、創造神?以外には会ったことないからなあ。


「ああ、ありがとう。ところで、名前はなんていうんだ?」


『おお、まだ教えておらんかったな。

我が名はゼーレラルタ。神竜ゼーレラルタである。覚えておくと良い。』


「ああ、ゼーレラルタだな。ちゃんと覚えた。

あ、僕はそろそろダンジョンから出たいんだけどどうしたらいい?」


そう、僕はもうダンジョンの中で数ヶ月過ごしている。早く外に出たいのだ。


『うむ、それならばそこの水晶で行くがいい。我の試練に合格したのだから、ここを通る資格があるからな。』


そう言ってゼーレラルタが指した先には、エリアボスの部屋にあった水晶のオブジェクトだった。

だがこれはなんの効果もないはずのもの。一体どういうことだ?


「なあ、それってなんか意味があるものだったのか?エリアボスの部屋にもあったけど、何をしても何も起きなかったぞ?」


『何を言っておるのだ、水晶を使ってダンジョンをどれだけ進行したかを記録し、出入りするのは常識であろう?

その水晶にダンジョンカードをかざし、魔力を流す。それだけのことではないか。』


「ダンジョンカードってなんだ?」


『お主はダンジョンカードも知らぬのか?というよりも、ダンジョンカードを持たずにはダンジョンに入れぬはずだが。』


「ちょっと待て、今探す。」


インベントリにそんなものあったかな?そんなのみた記憶がないけど、、、あ!あった!


「これですか?」


『それだ、なんだ、持っているではないか。』


「はい、持ってました。っていうかそんなの知らなかったもん。」


『はあ、先が思いやられるな。まあ、とにかく行け。ウーノのこと、頼むぞ。』


「おう!任せといて。じゃあ、世話になったな。また会おう。」


ゼーレラルタに別れを告げ、ウーノとノアを連れて水晶の元へ行き、ダンジョンカードをかざした。魔力を通すと水晶が光り、次の瞬間、目の前の景色が変わった。

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