第9話


「な、なんとか、勝てたな。」


「グルグル、グルグル。」


ノアは低い声を出し、僕の方を気遣ってくれているようだ。


「心配するな。死ぬほどのことじゃない。」


そうだ、魔法で治せるかもしれない。

治療の魔法といえばビールだな。


「〈ヒール〉」


なんか少し楽になった気がする。でも、全然治ってない。

楽になったということは失敗はしてないはず。つまり威力が弱かったのか。


「〈ハイヒール〉〈パーフェクトヒール〉」


僕は思いついた強い回復魔法を唱えてみる、もちろん、骨や内臓が修復されていくイメージを忘れずに。

すると、呼吸が楽になり、痛みも完全になくなり、完治しているのが自分でもわかるほどだった。


「お!治った、治ったよノア。」


「ヒヒーン!ヒヒーン!」


ノアは嬉しそうに声を出し、僕に擦り寄ってきた。


「よしよし、今回勝てたのはお前のおかげだ、ありがとうな。お疲れ様。」


「ヒヒーン!!」


僕の怪我も治り、ノアが上機嫌になったところで、グリフォンを回収し、出口を開けてみると、階段があった。やっぱりまだ続くんだろうな。


階段を降りると、そこには、一面森が広がっていた。

いや、たしかに日の光を的なこといったけど、そういうことじゃない!

僕は外に出たいんだよ!



そう思いながらも、仕方がないので歩いていると、猿が出た。さすが森だな、と思ったが、おそらく魔物なので鑑定して、臨戦態勢。



《ウォーターモンキー》

Rank:C

猿の魔物で、水魔法を使う。

群れで行動しており、獲物を見つけると一斉に飛びかかってくるので注意。


たしかに、周りにはいくつも気配がある。

ここは、相手が仕掛けてくる前に、こちらから仕掛けよう。

相手が水の魔法なか、ノアの雷なんかも相性がいいんでないかと思う。


「ノア、やれるか?」


「ヒヒーン!キュイーーン!!」


ノアの威圧によって、周りのサルの動きが止まった。そこに一気にたたみかける。


グリフォンのように刃が通らないということはなく、サクサクと切っていく。


「「「ギャーー!」」」


サルは悲鳴を上げながら死んでいき、おそらく30匹以上はいたと思う。

この肉は食えるかわからないが、食えるなら数も多いし儲けものだろう。


「よしノア、どんどん進むぞ。」


「ヒヒーン!」


「「「「ギガギガガギ」」」」


進もうとすると、多くの鳴き声が聞こえてきた。鳴き声の主の方を見ると、緑色の子供のような魔物が多くいた。

うん、ゴブリンそのものだね。

でも一応鑑定。



《ゴブリン》

Rank:E

スライム・コボルトとならび、最弱と言われる魔物。ただし、ゴブリンキングがいる場合、その数は1万以上にもなるため注意が必要。


ここにいるのは精々15といったところだ。

まあ、無視してもいいが、こちらを狙うような目をしているので見過ごせない。

ゴブリンとコボルトはとても肉が不味いというのは料理本にも載っていたし、素材としての価値も低そうなので、あまり殺したくはない。僕は快楽殺人者ではないから。

だが、命を狙われれば、生かしておくわけにはいかない。


僕は、襲い掛かろうとしているゴブリンたちよりも早く動き、一瞬で息の根を止めた。

ノアは僕一人で十分すぎると思ったのか、何もせずただ見ていた。


「先に進むか。」

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