第5話
解体書に書いてあることは簡単だった。
が、書いてあることが簡単でも、やるのは難しい。
みるだけなら簡単に見えても、実際はそうはいかないというのが世の中の常である。
こんなもんかな?
「なあノア、これで大丈夫かな?」
血抜きをして内臓の処理をして、皮はぎをして解体をするというのが一連の流れだ。
魔法も使うので、普通にやるよりはいくらかやりやすいのだろうが、それでも難しい。
「ま、まあいいだろ、多少歪でも食えりゃあOKだ、な?」
「ヒーン。」
なんか気を遣ったような声を出された。
ちょっと悔しい。
ま、まあ、とりあえず飯を作ろう。
「なあ、ステーキでいいか?」
「ヒヒーン!」
「じゃあ水で洗ってお湯につけて、臭みをとる。ここだとそれくらいしかできないけど、まあ大丈夫だろ。この本によれば、高ランクの魔物ほど、臭みなどもなく、美味しいらしい。
そういえばノアって何ランクだ?
鑑定してもいいか?」
「ヒヒーン!」
お、自信満々でOKか。
《ペガサス》
Rank:S
契約主:ナオキ イチノセ
固有名:ノア
スキル:雷魔法 威圧
げっ!!Sランクかよ!
待て待て、そんなに強い子だったのか!?
「ノアって強い子だったんだね、これから僕のこと守ってね。」
「ヒヒーン!」
今任せておけって言った気がする。
きっとそうだろう。
「よし、じゃあステーキ焼くぞ。
ノアはパン食べるか?」
「ヒヒーン?」
「ああ、わかんないよな、じゃあ食べてみるか。物は試しと言うしな。」
「ヒヒーン!」
結局、ノアはパンも肉もものすごい勢いで食べていた。結構食い意地が張ってるのかな?
まあ、うまかったならそれでいいが。
「じゃあノア、ガンガン進んで、さっさと外に出るか。」
「ヒヒーン!!」
634階では、それからは特に強い敵は出なかった。出たのはサイクロプスとスライムくらい。サイクロプスはともかくスライムはなんだったんだ?全然強くなかった。魔法一発で倒せるし、ノアなんて踏んづけて倒してた。
そんなこんなで下に降りる階段に着いてしまった。
「なんか拍子抜けだったな。まあ、油断はできないけど。」
たしかに634階は大したことなかった。
けど、ここからも大丈夫というわけではない。
と、思ったら、早速敵のお出ましだ。
《オーク》
Rank:C
ゴブリンの上位種で、攻撃力と繁殖力が大きい。また、通常3~5匹程度で移動しており、さらにはその集落ともなると多くのオークとその上位種が多数いる。
オークといえば美味しい肉と鉄板!
サイクロプスの方がランクは高いが、オークには期待が持てるな。
「ノア、1.2匹頼めるか?」
「キュイーン!」
ノアは、全く躊躇わずにオークへと向かっていく。Sランクの魔物であるノアからすれば、Cランクのオークなど恐るるに足りないと考えてまず間違いないのだろう。
僕も負けていられない。僕は鬼丸をインベントリから出して、一直線にオークへ向かっていく。
ほとんど一瞬だった。ノアは言うに及ばず、こっちも鬼丸の一太刀でオークは真っ二つだ。
「じゃ、オークを回収してさっさと行くか。」
そういうと、いつものようなノアの声は聞こえず、物欲しそうにこちらを見ている。
はて?
あ、もしかして!
「ノア、オークの肉が食べたいのか?」
「ヒヒーン!」
「ははは、分かったよ。少しだけだぞ。」
「ヒヒーン!」
ほんとに食べるのが好きなんだな。まあ、僕もオークは食べてみたいとは思ってたけど。
オークの肉は豚肉に近く、豚肉よりもずっとずっと美味いものだった。やっぱり魔物の肉って美味いものなんだな。
「よし、オークも食ったし先に進むぞ。」
「ヒヒーン!」
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