夢に生きたい
わたしは夢見る少女。いつも眠って夢の世界に行く。
半年前も夢を見てた。
一面黒い場所。際限なく続く床。きらきらと輝く星の破片が落ち、ぱっくり割れた紫の花、虹色の草が立つ。紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、少し霞んだ紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、少し霞んだ紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、かなり霞んだ紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、紫の花、黄が緑になり白になる草、青が赤になり紫になる草、紺が茶になり灰になる草、赤が黒になり無になる草、銀が橙になり濃青になる草、白が紫になり白になる草、黒が黒になり黒になる草。歩いていけば虫取り網を肩に乗せて走る少女がいる。かくかく羽ばたくチョウが前を駆けた。わたしも合わせてかくかく触ると羽の色が抜けて落ちた。少女はそこに立ち尽くした。画面を循環させたら、虫取り網を後ろに傾けて走る少女がまたいた。かくかく羽ばたくチョウが前を駆ける。触ってチョウは倒れた。少女は蹲って止まった。少女から離れているように循環するとアメジストに光を舞い散らす、巨大なお城があった。だだっ広い玄関に咲く菫の川が蛇行するのを迂回して、クリスタルの石垣に取ってつけた細い階段を一段飛ばしで上って、天守閣に包まれた場所は十歩に満たなさそうな四方の静かなところ。パズルができそうな波紋がある床と、蝋燭のシャンデリアが吊れる天井の間を散策すると、青色の直方体が目をダッシュした。直方体が走った先を探してみたら骨がぶつかるみたいな音がして振り返るとおもちゃ箱があった。おもちゃ箱の中にはあの青ブロック含めた色々な色の色々な多面体が積み重なり鮮やかというよりは質素に彩る。部屋にも生えた全体パープルの花を蹴りながらおもちゃ箱を跡地にして、五歩かける五歩を贅沢に使った二階へ階段すると変わらない配置。一応見回してパズルに迷わされて、階段すると三階。一応見廻してパズルに迷わされて、階段すると四階。一応見まわてパズルに迷わされて、階段すると五階。一応見マワしてパズルに迷わされて、階段すると六階、蝋が雨降りする受け皿となってる机が一つあるだけあった。机に座れることを試して他はいつも通りなのでパズルに迷子を強いられて、五階に降りたら床一面花瓶で埋まっていた。近くから遠くから紫が一定に斑点で一斉に枝垂れて、さっきと一風違う。花を抜こうとすると抜けた。近いのをちょっぴり抜いて四階に下りると四階も花瓶が床で、三、二、一と全て花瓶に侵食される。一階でよく見上げると白くない花の蜜と透明な水が滴っていた。粘りがあって床に染みが残る。ここからは歩けないので、わたしが期待していた紫ばかりのお城には王女様がいなかった。おいいないじゃんかーよーここには王女様がよー。おいいないじゃんかーえーれーよー。帰ることにした。お城とエンゲージするはずだったのに、階段の途中で、わたしはシンデレラ。裸足であかぎれだ。王女様はどこかい。黒い海の白いシンデレラで通ってやってるわたしが来ると草花と虫取り少女は掃けてった。お城を外から覗いたら一個の花瓶になっていた。上から黄色くてどろどろした水が注がれているけど、そこはもう知らない世界だった。手遅れで黒い場所を彷徨った。前にドアを見つけて、ドアを回すと画面の奥まで黒黒黒黒黒黒黒黒い内臓で彩られる空間にきた。黒黒黒黒黒黒黒黒い肉と溶岩みたいに時々一瞥する赤のひびが広がった。俯くことで集中してそれを踏んで、不安定な足場を移ろいてゆくと一本の果てない線が見えた。線を挟んでぬいぎるみで遊ぶ女の子一人のしいさい背中と、胸まで高くて小さい食卓が設けられる。自然に右に進むと内臓の暖簾を扇いでナプキンの形の一反木綿が顔を見せた。ナプキンはお皿と用意して佇み、しばらくしてあの子がとっととナプキンの両手いっぱいに手渡した。ナプキンが足元から持ってくる箱に放すのは匍匐する幼虫。わたしの後ろ、その子側にはこっちと違って輪郭だけある花と、大胆に動くもぞもぞが見える。するとナプキンが二皿に分けて晩餐にしようとするのであの子を呼んで一緒に食事にした。乾燥した幼虫が虫かごからお皿に装われ四角い具のソースがかけられ二人並んで完食する。泥濘む地面をぐだぐだ引き摺ってわたしも、あの子の帰るしいさい遊び場に上がる。近くで注意したら、この子はぬいぎるみの綿をじっと抜いていた。遊び相手がほしいの?ジェスチャーで尋ねても変化なし。お医者さんごっこしちいの?密輸した黄ブロックを出してみたらこの子の頭が上がった。この子は、しいさい穴が二つ空いてる。目玉を舌の上で舐めてる。顔が鬱血して黒糸で縫われてる。ことを確かめて、あの子のじっとした様子に見送られながら去ろうとした瞬間、内臓が一帯破裂し肉とオレンジの汁が飛。
二ヶ月前はこんな夢を見た。
錆がAメロを奏でる鉄筋コンクリートの跨線橋に吸われるとは言え鼻腔を擽り過ぎで笑い殺される匂いが、駅に非金属として香っていた。正面を意識すれば駅前はとにかくち。真っ赤。あかあかあか。ちの垢。姉、父、兄、母のみんなで出掛けた先、ちの草原。混乱したわたしの景色の画素数が下がる。事件でも起こったのかという好奇心を弄んで、父は駅の隅にあるシャッターが半開きの売店に向かっていた。母も付いていって、わたしと姉は置いてけぼりで離れる。駅の不穏に意識を糠漬けにされながらもわたしは、父と売店のおじさんの窓口対応に注意する。父の口から、子供の目玉を飲みたいと聞こえた。突然おじさんが目をえぐる。母の顔から白色が消えた。その代わり体液の滝が雑巾を絞ったようにじゃーじゃー零れる。母らしきものが駅を新鮮なちにカラーリングする。改札が溜め池。隣で父は笑った。二秒後打って変わって鬼の形相を作り、目玉食べるくらいは大丈夫かと言いわたし達を睨みつけた。売店のおじさんは何処かに消えて。急に鳴り始める殺人の音楽。体内から卒する精神、鼻の奥で痺れる電流。黄色い砂嵐でデコレーションされた駅。わたしは一秒後の苦痛を予兆して姉の手を掴みとっさに走る。地面はちだらけ、頭には父という赤い人間。急がないと殺される。逃げなきゃ。わたしの考え赤い。黄色い。焦りもたつく動き。粗い。次は自分なのでは、恐怖で前だけ求める、疾走する。不安が宿る後ろを見遣る、倍速の父が改札を越えようとしてる。殺す。殺しにきて。五番線のエスカレーター。手首の繋がる姉を強く引っ張る急がせる。「痛ったぃ!痛ったぃよぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!1111!!!111!!!!!!!!!!!!!!1111!1!!11!11111111111」姉が金切り声を出す。そんな場合じゃないのに、姉までうるさい。諦めて振りほどくと、姉がわたしを突き飛ばすぶつかるぐにゅぁっ。表情を歪めることに努めながら姉がわたしに並ぶ。エスカレーターの階下には兄がぶつぶつ言っている。誰にも油断しちゃいけないと理解する。異状が濃くなってきた。そろそろ父の気配。
七日前はこんな夢を見た。
友達に誘われて訪れた音楽室には黒い正装の男とその婦人がございました。男は細長い体躯をして皺のある覆面を嵌めて杖を指しておりました。友達とわたしが教室のタイルを三枚分進むと立ち塞がる壁がございまして男が手前で説明し出しました。壁を通り抜けるには与えられた選択肢の一つを選ぶことが要せられ、繰り返していくことにより最後まで辿り着けば見事ゴールだそうであります。友達は「やってみようか」と言い出してまず最初の壁で分かれたのを見ると、一方は焦げたタンス、もう片方は何もございませんでした。タンスにはネズミが挟まれて微動だにしないので危険な橋は渡らないでおきましょうと何もない通路に行くと、出た先は最初とは全く変幻して大きな壁ではございません代わりに立方体の柱がいらっしゃいますではありますか。なんとあらゆる経路が透けていて他のルートもばれる立体的な選択肢でございます。さらにかつてのルートで別に行っていた自分の影が向こうにありました。このような新しい迷路の機能もあるのかと感銘を頂いていると透け透けのわたしが合流してきて三人になりました。「面白いね」わたし達は言い合って柱で仕切られる四択を決めて一緒に次の場所に来ると、無事正解だったようでわたし達と同じくらいの背丈で顔がよく分からない少年が登場しなさいました。少年はぶつぶつ言った後、奥にいる男の隣に走って行きました。周りがどうなってるか窺うとまたタンスがございまして、その瞬間あらゆる選択肢がこちらに集まってきました。透明だったものらがくっきりすることで遠退いたタンスの中に今度はネズミではなくモルモットが睨んでおります。どちらか一人がこいつの餌になる必要があると男が離れで言う時わたしはここに来たのが二回目であることを回顧するとともにこの後ひどい目に遭うことを察して、教室の出口へ走り出しました。友達がやられる喚き声に後ろ髪を切って廊下に出たらしっかりプレハブのドアは締まり鍵をかけて、抜け駆けしたおかげで助かったと足を止めます。そうして窓から教室を見ると老体の前で少年が友達を倒し終えておりました。念のため廊下の窓から校舎の壁伝いに来ないように窓を封鎖すると、開放されないことを憎む殺気の歌をぐおぃぃぃと歌い出して「何で出してくれねーんだよ!!!」破壊する声でドアにぶつかり始めますでございます。わたしが恐くてその場すら逃げ出して廊下の角を曲がる際、景色の隅でモルモットになった少年がドアを開けていました。結局理不尽かよ焦って一番目は壊れていたから二番目に近いエレベーターに乗り込んだら、降りるボタンがありません。あいつの声が怒鳴るです。
日帰りで遊びにきた水族館でヒトデを引き裂いていたらインストラクターのお兄さんに隣の友達が怒られたけどそいつがそいつの口調を馬鹿にするのはいいけどこれはだめだろ二度と来るなと言い始めたので別におかしくないだろとわたしが反論すると途端に気負いして関係ない話題でわたしを諭そうとしてくる適当な社会人の夢もこの日に見た。だけどヒトデを裂いたのは悪かった。
三日前も夢を見た。
女将さんに宿泊してるまさにここを訪ねたら、単なる旅館と言われた。福笑いしてる柔らかい物腰の女将は暗い樫木の格子を奥ゆかしく秘めてわたしの前から立ち去った。わたしは音楽を聴いて旅館を出た。同部屋の子達と前後に拡張して歩く。緑の池が広がり、取り囲む森が光が点滅する水彩画らしく散り散りして白、深緑、黄緑を切り換える。子供がはしゃいで池の反対側や樹の影に遊んでわたしは水辺にしゃがんでみた。そしたら直ぐに上流から何かが旅行してきた。遠目で概形が分かった。板の上で魚の頭と友達が乗ってきた。鰓の後ろがもがれて、銀色でとんがって空に刺さりそうだった。目玉は何処を見てるか感動しない。友達は板に巻きついて魚と一体になる。仰向けか俯せか確かめられない程身体が黒い。同部屋の人かはたまた違う人かもはっきりしない。友達が友達であることだけ保証する。それが手の届く所まで運転してきたから、どうしようかと思う。まずは印象的な魚を木の枝でつつく。弄る内に楽しくなって、誰も見てないよね、エスカレート。操作して破茶滅茶になった末、魚を貫いた。貫通するとは予想だにしないわたしが引いていると、魚に釣られて友達の身体から血が出た。ありゃ、友達まで刺しちゃった。池に血が水生植物を真似て咲いた。序に墓に埋めた。一人殺したわたしは、証拠隠滅を兼ねて他の奴らも殺す。樹の裏に隠れんぼの鬼が、棄てた埋めた沈めた。砂をトッピングした。後戻りできないからね。あと一緒に働く演者に宝石店で出会った。橙色の髪をした女の子等がいた。こいつらも危険人物につき処罰することに。殺しちゃえ、殺せ、殺し、殺しちゃ、え、え、そのまま、流れて、お前の血を流しちゃい、なさいっ。わたしは前々から、これがしたい、したくて、今してるようふふ。以上より亡き者にした。これで教室の奴らは皆は。皆は、あ、あーーー、全員殺しちゃった。……!どうし、よ。これっていけないことだ。大変、逃げないと。最上級に安全なのは我が家だよね。家に帰ってお風呂で綺麗にしたら家族にただいま。なるべく自然の振る舞いで、テレビが点灯した。画面では旅館が舞台の音楽映像が上映する。両親の目の前で好きな音楽を聴くのは恥ずかしかったから部屋に戻った。部屋に隠れていると昔友達だった永田が無断で入ってきた。まさか殺したことがバレたのか恐れてベッドの端っこで身構える。永田は愛想を振りまくこともせずにいきなり詰問した。「あなたは午前十時頃、何処にいましたか?」聞いてくる。答えに詰まっていると永田の目が鋭くなる。これはもう無理だなと思って窓の外に縋る。近所の家には大量の雪が積もっていて、風情を見出した。ここから落ちたら死ぬかな。それとも助かるかな。まぁ行くしかないか、そして気軽に飛び出す。殺すことのリスクを考えられなかったわたしの責任か。
昨日も夢を見た。
わたしは黒髪ツインテールの女子高生。部活帰りの昼過ぎ、唯一のマネージャーのわたしが部員の女三人を引き連れて電車に突入。言葉を褒めて遣わせばぽっちゃり系の女、背が高いけれど間抜けかつ滑舌の緩い女を脇に、カッコいいのに性格の合わない女を一人分空けて並ぶ。両隣の女共が話しかけてくるのに応じながら、乗客からの視線を感じた。何てったって可愛い女子高生がミニスカートで太もも魅せてるんだ。無視できるはずないよね、もっと見ていいよ……ふふ、わたしったら。でもあの女は案の定こっちを見てくれないな。わざとなのか自然となのか。周りの注目をゲットしたところで電車から高架下に移転する。午後の日差しが建物と空気を黄ばめる中を歩く。「さぁ一体何処へ行こうか」「お昼ご飯は何を食べようか」そんなことを議論しながら向かう交差点、その前の駅の切れ込みに興味惹かれる一角を見つけた。入ってみようよと言って入って、一部屋のみの淋しい内装はエアホッケーの競技台、格闘ゲームの筐体、パンチングマシーン、スロットマシーンなどなどのゲーム各種に古びた落書きの筆跡を残す、全体的に風化したゲームセンターのようだ。その内にカーテンが剥がれかけの、三角コーナーみたいなコーナーを発掘した。正負は置いといて過ぎ去りし遺産、プリクラだ。「ねえねえあそこで写真撮ってかない?」わたしが誘うと、女衆は全員揃って「う、うん」「あたいぐもごにょ」「…………」口ごもって吃った。口下手にも程があるだろと蔑んで、わたしが言ってやってるんだから撮るの、とカーテン全開にする。緑のぺたぺたなマットをバックに、「ほらみんな来て来て〜。じゃあまずは君と撮ろっか!」体脂肪で温まれそうな女を最初に指名して、ぱしゃり。撮影したのが映し出されて、あーやっぱわたしほんと可愛いわぁ。客観的に見るとより萌えるわ。自分に。イケメンちゃんはただでさえそうなのにもっと気まずくなりそうだから辞めて「じゃあ君も撮ろっか!」薄笑いを浮かべるこいつとセットになる。枠に収まって、暑苦しくない女には再確認したわたしの可愛さで良い思いさせてあげようかな。というわけでこいつの腕をばっと引き寄せて、胸をそっと当てる。こいつの身体にわたしの体重を預けてあげる。おい、わたしが思わせぶりにサービスしてあげてるんだぞっ?意識してるでしょしちゃうでしょわたしのこと。あっ今ちらちらしたよねほらね。緊張して完全に喋れなくなってるね。わたしの可愛さに魅了されたなぁ君も。簡単なんだから君もわたしも、わたしの可愛さの前では。「じゃあじゃあ最後に、皆んなで撮ろうよ!」せっせと手招きで召集して、皆んなと肩を寄せ合う。カウントダウンに合わせて、わたしの決めポーズが弾ける。カメラ目掛けてハートマークを作っちゃう。出力された映像の、か細い腕とにっこり笑顔のわたし。可愛過ぎるよ。わたし可愛い可愛いわたし、きゃぴきゃぴ。ずっきゅーんっ。色白のわたし、華奢なわたし、女達に囲まれるわたし、くぅ〜〜〜、わたし可愛いっ。わたしが一番可愛いっ。可愛いわたしが可愛いって思いながら行動する全てが可愛いっ。他のやつらなんてどうでもいいっ。わたしが大好きっ。わたし大好きっ。
今日も夢を見た。
晴れた朝の地元にクラスメイト四十人が列を作っていた。わたしはその中の序盤を買って進んでいた。すると宛先が黒くなった。画面が切り替わったのは、黒大理石で構成されたマンションだ。ロビーとその横に回転ドアがあり、そこから攻めると中はエレベーターのようで数字のボタンが敷き詰められて、ぱっと思いついた601と入力すると、理解できないままどこかに着く。601に入って部屋を下見して、わかることは電灯が暗くて何畳もある広さだということ。どうやらここで一人暮らしをするらしいと把握する。お風呂は真一文字に細長い水色タイルのバスタブと電話ボックス型のシャワーがカーテンで区切られて、お風呂と鏡台は離れている。お風呂を出る廊下の壁もガラスが貼られているその奥は602、603がある部屋への道なので、わたしの入浴姿が運悪く見られたり身体を拭く絵面を見せちゃうかもしれない。ガラスの向こうで遅れて女の子達が談笑しながら通ってくると、穏やかじゃない感情が沸き立つ。落ち着かせるため地下の狭い防空壕、洗濯機のある部屋、木のお皿とシンクがある台所と渡った後、居間に戻ってお茶菓子を摘む。すると割烹着を纏うお母さんが601を探訪してきた。これからの暮らしに気を揉ませて、マンションの掟である作文の張り紙を鑑賞しながらお母さんがしみじみしてきた。お母さんがお待ちかねで去ると、ここでわたしは一人。真っ先に服を脱いだ。透けて露出する瀬戸際に寄って危険を味わい、わたしを最高のスリルに漬けようとする。クラスの女子がわたしを見たらどうなっちゃうのか蕩けそうになる。けれど女の子との遭遇は望めなかったので、そのまま慰めるようにエレベーターに乗り最上階の共同浴場に行くことにした。タオルを取って戸を開いて、手始めに中央の湯船へ突っ込む。タオル一枚で身体を隠して、露の効果で光沢の美しい高層お風呂を見渡すと、梯子を使えば浸かれるロフトのお風呂もあって、見下ろせばクラスメイト以外にも結構な人がいることに気付いた。金髪のロングヘアーを洗う外国人だとかその娘らしきポニーテールの子供だとか。さっきの湯船に戻って桶とシャワーのある洗い場を観察していると、湯気に巻かれて、赤髪の女の子がいたっ。彼女はわたしの大好きなアニメのキャラクターだっ。もみあげを伸ばして、エメラルドの瞳を持つ、可愛さの正鵠を獲る女の子。興奮して近付いたら、その赤髪の女の子の目が点になった。びっくり顔で見る先は、隠せていないわたしの裸だ。ひえぇっ。急いでお風呂を出て、タオルを絞った。
夢から覚めた。その瞬間、夢で逢えた女の子が甦る。あの子のことが頭から離れない。
わたしは現実に夢見る少女。今日も重たい身体を引き摺って外に出かける。出かけないと生きていけない。朝から息がしづらい。
わたしは夢が好き。不思議で怖くて悔しくてむかついて支離滅裂で可愛くて恋しい夢。現実と違ってわたしの理想がそこに見える。第一に夢の世界では死なない。起床が死だとしても少なからず痛くない。精神世界だから身体がない。変えようのない肉体の縛りから離脱して、思ったこと感じることが直接自分に響く。精神で身体の多くを動かすという葛藤を解消して一貫性を持たせることができる。それに夢には虚構も参加できる。現実では有限で融通の効かないフィクションとの対合が夢では隔たりなく柔軟に行える。好意が強ければ強いほどきっと願ったキャラクターに遭遇できるはず。現実問題、夢の中ならあの女の子に会えた。夢で出会えたならそれは出会ったと言っていい。夢も現実も相手を意識で認識してるということは変わりないから。ただもう一度見ようと思って見れないのが難点だけど。ああ、あの子にまた会いたいな。
わたしには夢がある。誰かに話せば現実的じゃないと笑われてしまいそうな夢。それでもわたしは現実は夢になれると夢を現実にできると現実でも夢でも信じてるから現実を夢にしようと夢見てる。もし仮に夢が現実の中では叶わなかったとしても夢だけでも存在し続けられるような夢を強く抱いてる。夢は叶えるものだけど見るものでもある。だって現実がない世界つまり夢だけの世界だったら夢は見るだけでいい。現実がない世界なんてそれこそ夢見がちかもしれないけど人間は夢を見る時点で夢の想像を拒否することはできない。夢を一回も見ることがないのは基本的にありえないからそうして少しでも味を占めた夢の体感が現実と相反して際立つにつれ夢の価値を実感し夢を追い求める。しかし現実には現実が仕方なく付いてくるから現実がある中で夢を出来るだけ現実に近似させようと足掻く。夢が儚いなんて現実じみたこと言わせたくない。ゆめゆめ夢であるのは夢見がちというのは夢がない。聖人に夢なし痴人夢を説くと言われるけれど、夢も焦がれないで現実に生きるのは現実の夢のなさが見えてない。現実に夢を見るというすれ違い。現実に希望なんてない。
わたしは夢中になりたい。夢想したい。例えばもしかしたら今も夢の中にいるかもしれない。なんて、そうだったらどんなに解放されるのか。こんなの夢じゃない。早く夢の世界に生きたい。幸せな夢を見ながら永眠したい。なのに夢を叶えようとすると現実は夢を禁じさせてくるからまた夢に現実逃避したくなる。逃避というよりは現実の方が避けられるべきなのに。結局何処までいっても夢を手放したくない。夢を夢に留めておきたくない。曖昧じゃない夢が欲しい。現実と夢の区別さえ要らないくらいの夢を。
夢日記をつけ始めたのは半年前。夢を現実に深く記述すれば夢に行けると思った。だけど未だに現実が夢に歩み寄る様子はない。起きてる間の夢見は、自由な夢の旅は手中にない。昼寝をしても白昼夢に終わった。
こんな現実でもここは現実だから、わたしが現実に対して思うことは全て無駄で涙は出ない。何時まで経ってもわたしは現実の中。現実への娼嫉と夢への憧憬。夢の世界は夢のまた夢なのか。夢に生くにはどうすればいいか。一握りの可能性を現実に抱く。
もう、取り返しがつかないんだね。
学校帰りの夕方五時。送電線で鳴いてる烏。
わたしはベランダに立っていて。
現実から、足を外す。
きっと夢の世界に。
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