第17話


「ではここからは取り引きといこうか、マクルーガー殿。」


「取り引き?」


マクルーガー様が諦めて帰ろうとすると、お兄様が取引と言い出しました。何かあるのでしょう。


「ええ。あなたが当主になりたいのなら、手伝ってあげよう。」


「なにを、」


「話を聞く気になったなら、座ってほしいな。」


お兄様に促され、マクルーガー様は席につきました。このままではマクルーガー様は当主になれる可能性低いのですから当然と言えば当然ですね。


「どういうことかお聞かせ願いたい。」


「まあそう焦るものではない。それに、これは取引だと言ったはず。そちらが何を差し出せるのか次第だね。」


そうです、お兄様は取引だと言った。つまり、何か手に入れたいものがあるということ。


「具体的に何がお望みですか?」


「こちらから指定してもいいのかい?」


「こちらはそうするしかないので。」


「ははは、潔いね。じゃあ言わせてもらおうかな。こちらからの望みは一つ。輸送機器の開発への参加、かな。」


「なっ!」


なるほど。まあ、タイムリーな話題ですね。運送業が弱いうちが、輸送機器の新開発に参加すれば、うちの商会でも扱えます。しかし、そんなことを認めることはあり得ません。平時ならば。


「君が当主となったあかつきには、それくらいしてもらわないとね。だって、君はこのままだとお払い箱だよ。このままいけば君の弟が新当主となり、君は追放され、追放された君を拾うものはいない。それでもいいのかな?」


「しかし、、、」


「君たちの開発している輸送機器がどんなもので、今どこで行き詰まっているか、こちらは把握しているんだよ?」


「そ、そんなはずは!」


「あるんだよ。そして、僕はそれを解決できる。どうだい?」


「ほんとに、私が当主になって、そして輸送機器は完成するんですね?」


「もちろんだよ。」


「わかり、ました。その条件でお受けします。」


「よし、取引は成立だ。契約書にサインしてもらうよ。セバス契約書を。」


「随分と用意がいいですね。ここまであなたの掌の上ですか?」


「ははは、そんなことはないよ。一瞬でもローゼが縁談を受けようとしたのは想定外だったしね。」


そう言われて自分が恥ずかしくなります。お兄様には完璧な計画があったのに、マクルーガー様の言葉に流されて。


「ごめんなさい、お兄様。」


「いいんだよ、僕は責めてるわけじゃない。謝らないでローゼ。」


「サインしました。では、僕が当主になる方法を教えていただきましょうか。」


「はいこれ。」


マクルーガー様に言われて、お兄様は封筒を渡しました。


「拝見いましたす。


こ、これは!?ふっ、」


読み終えたマクルーガー様からは驚きと笑みがこぼれます。きっと封筒の中身は、マクルーガー様が当主になれる方法が書いてあるのでしょう。


「では、私はこれで失礼します。こちらの資料は有意義に使わせていただきます。」





「お兄様、先程の封筒は何が入っていたのですか?」


私が知る必要はないかもしれませんが、どうしても気になってしまいます。


「ああ、あれ?あれはね、彼の弟の不義の証拠と、彼の公爵家との縁談だよ。

彼の弟は自分より上位の貴族との縁談なのに浮気をしていたようだ。彼の婚約者の父はね、親バカで有名なんだよ。100%婚約は破棄だね。まあ、マクルーガー君がどう使うかによって、彼の家が受ける打撃は変わってくるけどね。

それに、公爵家との縁談も彼次第ではあるけど、まあ大丈夫だと思うよ。その公爵令嬢は顔さえ良ければ誰とでも付き合うような子だからね。

僕としては、輸送機器の権利と利益が入って、ローゼの婚約もなくなるならそれでいいんだ。」


そんな証拠や縁談まで、、、

我が兄ながら恐ろしさを感じます。

どうやら、大陸中を旅して、とんでもない人になって帰ってきていたのですね。

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