第11話


今日は、レオンハルト殿下が家へいらっしゃっています。

婚約破棄のあったパーティーでは、またいつでも来てくださいと申し上げると、ありがとうとおっしゃっておりましたが、やはり元王太子殿下との騒動があった手前、遊びに来るのが憚られたのでしょう。

それでも、久しぶりに来てくれて、本当に嬉しいです。


「殿下、本当に久しぶりですね。王太子となって、お忙しいようで。」


「ああ、僕はまだ婚約者もいないから仕事量がかなり多いんだよ。兄上のようにサボるわけにもいかないからね。」


殿下は公式の場所では『私』を一人称として使いますが、親しい方との会話では『僕』をお使いになります。

こうして、まだ僕という一人称を使ってくださるのは、私たちに親しみを持ってくださっているのでしょう。


「ふふふ、そうですね。頑張ってくだい。」


「ああ。そこでだな。もしy……」


「殿下も大変ですね。私も何かお手伝いできることがあればお声がけくださいね。」


「あ、ああ、ありがとう、アイザック殿。」


殿下が何か言いかけたと思うのですが、お兄様が遮ってしまってわからなかったわ。

ちょっと、というか結構不敬だと思うのだけれど、大丈夫でしょうか。

まあ、おそらく、話の流れ的には協力を求めてきていたのかもしれませんし、お兄様がそれを汲み取ったということも考えられますから、いいのかもしれませんが。


「お兄様は商会や領地経営の方も忙しいのに大丈夫ですか?」


「ああ、それなら心配いらないよ。領地の方はまだまだ父上が頑張ってるし、商会の方もローゼが手伝ってくれているからね。

心配してくれてありがとう。」


「いえ、それなら良かったです。商会の方は私にお任せください。」


「ローゼ………」


「殿下、私の妹はすでにあなたの兄上殿との婚約を破棄しています。ですから、気安く愛称で呼ぶなどいかがなものかと思いますが。」


お兄様が不機嫌そうに、高圧的に殿下に食ってかかります。

そもそも、愛称で呼んでもいいと言い出したのは私なのに、殿下が責められるのは筋違いです。なんとかお兄様を止めなくては。


「お兄様、実は私が愛称で呼んでもらえるように頼んだのです。

弟のような存在である殿下に、堅苦しい呼び方をされるのも嫌だったので。」


「しかしローゼ。まあ、ローゼがそれでいいなら、まあいいよ。

申し訳ありません、殿下。」


「いや、アイザック殿の指摘は間違ってはいない。不愉快な思いをさせたのならすまなかった。」


「いえ。」


「それで、殿下は何を言いかけたのですか?」


「あ、いや、なんでもないんだ。すまない。」


確かに何か言いたそうな顔をしていたと思ったのですが、勘違いだったのかしら。



「僕はそろそろ失礼させてもらうよ。あまり遅くなるわけにはいかないからね。」


「そうですか。ではまたいらしてくださいね。」


楽しい時間はすぐに過ぎるもので、あっという間に時間が経ってしまいました。

また、楽しくお茶を飲みたいものです。




____________________


休載してすみませんでした。

これからは毎日連載していこうと思います。

もう半分程度で完結しますので、どうぞ、これからもよろしくお願いします。

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