第9話 さすがお兄様


「し、借金?何のことかな?」


「ははは、婚約を申し込んできた相手を調べないわけがないでしょ?」


ここからお兄様がローレンツ様を追い詰めていきます。


「あなたは現在4人の女性とお付き合いされているようですね。

2人は下級貴族、もう1人は平民、そして最後の1人は伯爵令嬢ですか。

よくもまあこんな状態で婚約を申し込んだものです。

まあ、それはさておき、あなたはこの4人にかなり貢いでいるようですね。もともと財政状態があまり芳しくなかった侯爵家、それも当主ですらない方が、4人もの女性に貢ぐだけの金があるはずがない。しかしあなたは自分の見栄のためでしょうか、ドレスや指輪を買い与えていますね。」


「そ、それは!」


「おっと、まだですよ。

あなたはギャンブルもお好きなのですね。しかし、好きなだけで、負け続けているため、さらに借金を重ねている。

そんな方に大切な妹を嫁がせるわけがないだろ!」


「ひぃ!な、私は侯爵家の人間だぞ!」


「だから?たとえ侯爵家であろうと、我が家を敵に回せると思っているのか?」


「な、なにを偉そうに!

私が嫁にしてやると言っているのだぞ!」


はあ、本性を出しましたね。

おおかた、私と結婚すれば今までの借金をチャラにできる、お小遣いももらえるかもと思っていたのでしょう。

ですが、我が家は貴族であり、商人です。損をすることは絶対にしませんよ。


「あ、ではお兄様、このことはローレンツ様のお付き合いされている4人の方にお知らせして差し上げたらいいのではないかしら。

皆さん喜ぶと思うわ。」


「ああ、それはいいね。是非そうしよう。」


「ま、待って!待ってくれ。それはやめてくれ。そんなことしたら私は。」


「では、二度とウチの妹に手を出さないと誓えるか?神に誓え!」


「は、はい、わかり、まし、た。」


「声が小さくて聞こえないなあ。ローゼ何か聞こえたかい?」


「いえ、特になにも。」


「そのようだね。はやく4人に知らせてあげなくてはね。」


「す、すみませんでした!もう諦めました!どうかお許しを!」


「はは、そうですか。ならよかったです。はやくお帰り願えますか?」


「く、失礼、しました。」


「やっと帰ったね。でも今日はお出かけは無理かな。残念だけど。」


「ええ、そうですね。でも、ローレンツ様に言い寄られることがなくなるならまあよしです。」


ローレンツ様の件は無事に片付きましたし、あと1人も厄介ですけど何とかなりますよね。




それと、余談ですが、ローレンツ侯爵家は借金の返済に追われ、他のところから借金をし、ついには首が回らなくなり、屋敷まで売り払ったとか。

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