第8話 迫り来る縁談

「アイク兄様、明日は休みなのですが一緒に街へ行きません?」


「いいね、行こうか。楽しみだよ。」


私は商会の手伝いをしながら日々を送っています。あれから婚約などはまだ決まっていません。

婚約は決まっていないのですが、困ったことがあります。何度断っても言い寄ってくる方が2人ほどいるのです。

でも、家族が守ってくれるので、安心して過ごせていますけどね。





「ローゼ、準備はできたかい?」


「すみません、もう少し待ってください。」


今日はプライベートなお出かけですから、いつもよりおしゃれをしたいのです。

張り切って準備をしていると、執事のショーンが部屋に来た。


「お嬢様、ヘルベス=ローレンツ侯爵令息様がお越しになっております。」


「え?そんな予定はなかったはずだけど。」


私に言い寄ってきている2人のうちの1人です。本当にしつこくて、今日も何の報せもなく突然いらしたようです。


「はあ、とりあえず応接間にお通しして。」


「かしこまりました。」


今日はせっかくのお休みで、予定だってあったのに、どうしてくれるのかしら。

アイク兄様にも謝らなくては。


「アイク兄様、申し訳ありません。突然ローレンツ様がいらしているようで、」


「ああ、聞いてるよ。本当にしょうがないね。僕も一緒に話を聞くよ。」


「ありがとうございます。」





「お待たせして申し訳ありません。」


「やあ、ロザリア。婚約の件は考えてくれたかな。」


部屋に入るなり、いきなり呼び捨てで、何度も断っている婚約について聞いてくるなんて、何なのかしらこの方。


「ローレンツ侯爵令息様、婚約に関しては何度もそちらにお断りをしているはずです。それと、私の妹を呼び捨てにするような真似はおやめください。」


お兄様が私を庇うように前に出て、言いたかったことを全て言ってくれました。


「あ、兄上殿、そのようにツンケンなさるな。」


「あなたの兄になった覚えはありませんが?」


「む、そうか。だが、私は諦めるつもりはない。ロザリアほどの美貌であれば、私の隣に並ぶにもふさわしい。」


「何をおっしゃているのですか?それと、呼び捨てにするなといっているでしょ?」


お兄様が少しずつ高圧的になってきました。

このままでは険悪ムードで耐えかねると思い、口を挟むことにしました。


「お、お兄様、とりあえずお茶でも飲みながら話しませんか?」


「ああ、そうだね。ローゼは気が効くね。」


「そうだな、私もそう思う。」




「ローレンツ様、私はあなたと婚約するつもりはありません。それに、私はまだ婚約破棄から1ヶ月です。その私がこんなに早く婚約しては、周りの方々はどう思うでしょう。」


「む、そうだが、では婚約は1年後でどうだ?」


「いえ、ですから……」


「ローゼ、もういいよ。私に任せて。」


「お兄様、」


お兄様に止められましたし、後はお任せしましょう。


「ローレンツ様、あなたは先ほどからローゼの美貌がどうのと言っておられますが、確かにローゼが美しいのは認めます。」


「え、お兄様!?」


「いいから、つづきがあるんだよ。

しかし、本当にそれだけですか?」


「なに?それだけとは?」


つまり他に何かあるということでしょうか?

何かを隠している?


「あなたは多額の借金を抱えていますね?

それも、ご実家では賄いきれないほどの借金を、あなた個人の事情で。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る