第50話 雀
うららかな春の陽気。アーズ町ではもうすぐ春を祝うお祭りがあるらしい。お祭りの日には、町中色とりどりの花が飾られ、人々は広場でダンスを踊るそうだ。
今日は、亜麻色の髪と目、伊達眼鏡着用のハナの姿でワンピースに帽子を被り、のんびりお買い物をしている。
大量に買いたいと思っていたアスパラガスの他に、えんどう豆とそら豆、オレンジ色と黄色の柑橘も買った。
柑橘類は日本の四季から出した物より甘いってことはあまりないけど、酸っぱかったらジャムにするか、果汁を酢の代わりに使おう。どんな味か楽しみ。
お供はダンジョン雀のジャクだ。私の左肩に止まっている。
日本の四季にフライトスーツというのがあったので一応着せてみた。ジャクが嫌がったらやめるつもりだったが、別に気にならないようだ。
「ジャク、たまには飛ばない?」
「チュン」
返事はするけど、飛ぶ気なさそう。
ジャクは雀の3倍位の大きさで、真ん丸だ。他のダンジョン雀を知らないので標準がわからないけど、普通の雀よりふくふくしている。手の平の上に乗るとこんもり。茶色い肉まんみたい。その細い足でよく体を支えられるなと思う。
可愛さに負けて米をあげ過ぎたかもしれない。
ジャクはちびやキョウからも虫をもらっていて、餌を探す必要がないからあまり動かず、ちびの枝の上の巣にみっちりはまっていることが多い。巣から出ているところは餌台で米を食べる時と鉢で水浴びをする時くらいしか見ない。
ダンジョンの外に連れ出せば少しは運動不足解消になるかと期待したけど、巣の中でじっとしてるか私の肩の上でじっとしてるかの違いだけだな。
「あ、猫」
通りに置かれた木箱の上で、白に茶色のブチ猫が香箱座りをしている。
サント町もそうだが、ここアーズ町でも猫をよく見る。ネズミ対策かもしれない。
猫は雀を襲うもの。でもジャクは警戒もせずノーリアクションだ。猫も動かないジャクに興味なさそう。
ジャクは普段ちびやキョウに守られていて、シホロ東ダンジョン22階層滝前には結界が張ってあるから、身の危険を感じたことがないんだろう。
キョウみたいに強くなさそうだし、この子が一羽で生きるのはもう無理な気がする。
(責任持って面倒見るからね)
可愛いジャクの頭に頬をすりすりする。気持ちいい。
これ以上ジャクが太らないよう餌を減らそう、この子のためにも死なないよう気を付けようと決意しながら歩いていたら、屋台からいい匂いがした。何か鳥の肉を焼いてるみたいだ。
(そういえば、焼き鳥屋のメニューで雀って見たことあるような…)
はっ、またジャクを肉扱いしてしまった。
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