第49話 報奨金と不要品

 ゴダール領東端の町アーズの警備兵は、その日のうちに盗賊を捕縛し荷車に積んで戻って来た。

 私には冒険者ギルドアーズ支部を窓口として後日報奨金が支払われるとのことだったので、翌週の今日、その受け取りに来た。


「こちらが報奨金になります。受領書にサインをお願いします」

「はい」

 お金と実績になったから、盗賊退治も魔力と時間の無駄使いではなかったな。まぁどっちも惜しむ必要ないほどあるんだけど。


 アーズ町はニカ領サント町に似た田舎町だ。昼過ぎで、広場にはのんびりした空気が流れている。

 串焼きや蒸しパンなどの屋台が出ていて、その中にアスパラガスを売っている店があった。

 一本買ってみたが指より太い。塩を軽く振って焼いただけのようだ。

 その場で齧ると、みずみずしくてサクッといい歯応え。旬なんだろう、味が濃くて甘みと微かな苦みがいい感じだ。

 気に入ったのでまとめ買いしてアイテムボックスに入れた。

 店主は今の季節だけ朝市で生のアスパラガス、昼からは屋台で焼きアスパラガスを売っているらしい。

 これは朝市に行かねば。


 その後は店で素朴な焼き菓子やチーズなどを買い、複数の店主がお薦めと教えてくれた食堂で早めの夕食を食べて、魔の森の家へ帰った。


 ◇◇◇


 さて、今夜は久しぶりのサンタクロースだ。

 ニカ領の4つの町に加え、アーズ町の孤児院にもプレゼントを配ろう。


 今回のメインは春用子供服。

 シャツ、パンツ、スカート、ワンピース、ベスト。素材は綿で、ボタンがプラスチックではなく、ゴムやファスナーが使われていない物を選んだ。

 ミシン縫いだしこちらでは上質な服になってしまうけど、私が持っていても使わないから放出していいことにしよう。だんだん基準が甘くなってる気はするが。


 それに加えて、ヘイデンの店の傷薬、ダンジョン猪肉ベーコンとダンジョン鹿肉ソーセージ、私が作ったパウンドケーキ。


 最後に、盗賊が持っていた武器。剣、槍、戦斧、弓と矢。

 仕事道具だからかそれなりに物が良かった。盗品かもしれない。

 盗賊の持ち物は退治した者が自分の所有にしていい。眠っている男達の服の中をあさったりはしていないので小型ナイフなど取り残しはあるだろうが、メインの武器は頂戴した。

 私には不要品だけど、警備兵に押収されるなら孤児院に持って行こうと思ったのだ。狩人や冒険者になりたい子がいるかもしれないし。


 アイテムボックスは別空間とはいえ、被害者の血が付いていたかもしれない物を持ち歩くのはなんとなく気持ち悪かった(自分の物と同じボックスに入れるのが嫌で『仮置きボックス』というのを新たに作ったくらいだ)が、今夜処分すればスッキリだ。


 私は気になるけど武器に血が付くのは当然だし、物騒なプレゼントではあるが、中古品の売買が行われてるんだから問題はないだろう。

 

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