第14話 冒険者デビュー

 冒険者ギルド イキュ支部にやって来た。昼前で人は疎らだ。


 私はモスグリーンの膝丈のローブのフードを目深に被っている。ローブの下は、白いシャツとベージュのカーゴパンツ。靴は茶色のアウトドアブーツ。背には茶色の帆布のリュックサックだ。


 受付カウンターにいた男性職員に話しかける。

「冒険者登録をしたいのですが」

「こちらの用紙に記入をお願いします。名前と年齢以外は空欄でも結構です。代筆が必要な場合は承ります。登録料は銀貨5枚です」


 職員は30代くらいで、小学生男子ならゴリラとあだ名を付けそうな見た目だったが、応対は丁寧だ。


 読み書きは問題なくできるので、名前と年齢欄に『フジ 26歳』と記入する。

 用いる武器などを記入する欄があるが、パーティの斡旋は不要なので書かずに提出し、登録料を払う。


「ではこの石に血を一滴垂らしてください」

 直径5mmほどの円形の平たい黒い石と針を渡された。

 念のため針に洗浄をかけ、指先を刺して石に血を垂らすと、石が血を吸い込んだ。

 職員がその石と、名前とギルドのマークが入った革を銀色のタグにはめ込む。

「こちらが冒険者のタグになります。ランクはEランクです」

 中級ランク以上は、石と金属板をはめ込むらしい。上級のAは金、Bは銀、中級のCとDは銅。下級のEと見習い(12~14歳)のFは革。なお、英雄級のSはタグ自体が金とのこと。


 職員が冒険者ギルドの説明をしてくれる。

・冒険者ギルドは国に属さない国際組織

・受けられる依頼は自分のランクと一つ上のランクのもの

・依頼を達成できなかった場合は違約金が発生

・定期的に(中級以下は半年に1回、上級は1年に1回)依頼を受けなければ登録抹消

・殺人等、罪を犯した者は除名処分 等


「依頼票と規則は掲示板に貼り出していますので確認してください。依頼が出ていない素材も買取りはしております。冒険者ギルドの窓口でお金の預け入れも可能です。引き出しはどこの支部、出張所でもできます」

「わかりました。ありがとうございました」


 掲示板に貼られた下級Eランクと中級Dランクの依頼票を見てみる。

 Eランクの依頼は、薬草採取やスライムの捕獲など。

 Dランクの中に、魔鹿の頭部の納品依頼があった。

(何に使うのかな。壁の飾り? これにしよう)

 掲示板から依頼票を取って、先ほどの職員に渡す。

「この依頼を受けます。手持ちが有りますので、それを納品したいんですが」

「そういった場合は、直接、買取窓口へどうぞ」


 買取窓口へ行くと、ゴリラ2号がいた。窓口の奥が解体場になっている。


「この依頼を受けて、納品をしたいんですが」

「おう、こっちの台に出してくれ」

 リュックから出すように見せかけて、アイテムボックスから魔の森で倒した魔鹿を出す。


「依頼達成だな。タグを出してくれ。頭部以外はどうする?」

「食べられる部分はこちらに戻してください。それ以外は買取りをお願いします」

「わかった。タグ返すぞ。解体手数料は報酬から引かせてもらう。報酬は先に払うか? それとも解体が終わってから素材代金と一緒でいいか?」

「報酬は先にください。他にも解体と買取りをお願いしたいものがあるんですが」

「わかった。出してくれ」

 魔猪と魔蛇、魔蜘蛛を出す。

「魔猪の食べられる部分以外は買取りでお願いします」

 魔蛇も食用可だったけど、やめておこう。


 魔鹿と魔猪のお肉美味しいかなぁ。楽しみだ。

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