第13話 花と藤
営業終了後は、屋台と従魔達を囲むように結界石に見せかけた石を置いて、結界を張った。
そして、従魔用の餌と水、岩塩を置き、屋台の横に組み立てたテントの中から私だけ家に帰った。
転移石が高価だったので、人前で転移を使わない方がいいと思ったからだ。
翌朝、家から野営場のテントの中に転移し、周りに人がいなくなったのを確認してから屋台とテントをアイテムボックスに入れ、従魔達と一緒に魔の森に戻った。
屋台はまた気が向いたらしよう。嫌な客もいたが、お客さん達が美味しそうにビールを飲むのは見ていて楽しかった。
従魔達との短期契約も終了だ。
アイベには野菜の盛り合わせを、カイには魔猪を出す。
「ありがとう。また機会があればお願いします」
食べ終わったアイベを魔の山の中腹の崖に送る。アイベはすぐに崖に生えた草を食べ始めた。
次にお願いしようと思った時、魔山羊達の中からアイベを見つけられるかなぁ? ちょっと自信ない。
カイはどうしよう。狩り下手そうだし、このまま飼ってもいいな。
魔の森に戻り、魔猪を食べ終わったカイに洗浄をかけ、ブラッシングする。
「はい、綺麗になったよー」
「ガウッ」
するとカイは挨拶のように一声発して、森の中へと去って行った。
「あ、あれ、行っちゃう?」
ブラシを持ったまま、カイを見送る。
…野生の魔狼だし、その方がいいよね。
ところで、結界石も転移石も、道具屋で売られている。
結界石は4つセットで金貨10枚から。消耗品。
転移石は2つ一対で金貨5枚から。1つを予め転移先としたい場所に置いておき、もう1つを持ってその場所に転移するというものだ。1回使い切りで、遠距離用は更に値が上がる。
どちらもなかなかのお値段だ。結界も転移も使える魔術師は重宝されるだろう。
冒険者になったら便利な魔法はどんどん使うつもりなので、パーティに勧誘されたりして煩わしいかもしれない。
そこで、日常生活に支障がないよう、日常用と冒険者用でキャラを分けようと思う。
日常用は、屋台を出した時の、亜麻色の髪と目、伊達眼鏡。名前は『ハナ』。
冒険者用は、名字の藤木からとって『フジ』。名前に合わせて目は藤色にした。髪の色は黒にして魔女っぽくするか、白に近い金髪にするか迷ったが、北欧の森の住人のイメージで、プラチナブロンドにした。髪も目もローブで隠すつもりだけども。
さて、冒険者登録は明日することにして、今日は空になった厩舎を片付けて、ローブを日本の四季で見繕おう。
…ちょっと寂しくなっちゃったな。
あ、野営場の近くでスライム捕まえたんだった。
スライムはぽよぽよしたゼリー状で目も口もない。サイズは15cmくらい。
家から離れた場所をごみ処分場にして、スライムにごみを食べてもらおう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます