第15話 猫の手亭

 解体はしばらく時間がかかるそうなので、冒険者ギルド イキュ支部の女子トイレから、家に転移した。


 ちなみにトイレはスライム洗だった。お掃除スライムが排泄物やごみを食べてくれる。トイレが清潔なのめっちゃ重要。私は自宅のしか使うつもりないけど。

 

 家でフジからハナに髪と目の色を変え、ワンピースに着替えて伊達眼鏡を掛け帽子を被る。

 自分で切ったせいでガタガタの髪を揃えに行こう。


 ◇◇◇


 結界に迷彩、気配遮断をかけて透明人間になって、領都ニカの路地裏に転移する。周りに人がいないのを確認してから、透明人間結界を解いた。


 お腹が空いているけど、先に通りで見つけた美容室に入った。

 美容師の女性の髪型は、アシンメトリーのショートボブだった。服もパンツスタイルだ。都会では意外とファッションは自由なのかもしれない。


「お客様、すごい美人!」

「ありがとうございます」

 顔を褒められたらどう返すのが正解なのかな? 神様と同じ顔だから「そんなことないです」とも言いにくい。

 

 洗髪は無し。毛先を揃えただけなのですぐに終わった。

 ドライヤーはあった。日本の電化製品のように、こちらでは魔石を動力に使う魔道具が普及している。魔法が使えなくても生活に支障はない。

 魔石には、鉱物として採掘できる物と、魔物の体内にある物のニ種類がある。


 大通りに面したお洒落なカフェのランチも美味しそうだが、今日は港の近くの食堂に行ってみよう。



 お客さんがたくさん入っている『猫の手亭』という食堂を見つけた。

(異世界初外食はここにする!)


 日替わりのランチは、アクアパッツァとパンで大銅貨5枚。

 魚と貝の出汁がしっかり出ている。身は食感が良くて旨みがたっぷり。とても美味しい。具沢山で食べ応えもある。

 パンはバゲットをスライスしたもので、固いが普通に美味しい。

 厨房に男性二人、給仕は女性が一人でしている。ご夫婦と息子さんかな? 店の雰囲気もいい。当たりだ。また来よう。


 食後は教会へ行った。

 領都ニカの教会は大きく荘厳な建物だった。中はステンドグラスから光が射して美しい。

 中央の祭壇には、女神の像が祭られていた。

(これ、縁側の神様だよね…)

 なんか全身金ピカで仏像っぽい。そういえば黄金は神の色って言ってたな。


 近くにいたお婆さんの真似をして両手を胸の前で組み、女神像を拝む。

(神様、おかげさまで衣食住足りた生活をしております。ありがとうございます)


 神の声を聞くといったイベントはなかった。送り込んだら放任って感じかな。


 教会の次は、食料品が売られている市場へ行く。店も人も多くて活気がある。

 お肉は解体中の魔猪と魔鹿があるからいいとして、他の食材を買ってみよう。

 値切ったりするものなんだろうか? 普段の買い物がスーパーでキャッシュレスの日本人には難しいかも。

 醤油や味噌は無いものの、塩、砂糖、胡椒など各種スパイスは売られていた。塩以外は値段が高め。

 野菜や果物は日本で売られていた物に近い物もあった。お試しで色んな種類を買っていく。他にも卵やチーズを買って、買い物バッグ経由でアイテムボックスヘ放り込んだ。

 値切りはしなかったけど、おまけはしてもらえた。

 魚介類は港近くの朝市で買うのがいいとチーズ屋のお姉さんに教えてもらったので、また今度。

 


 そのうち、ニカの商業ギルドに行ってみよう。ハナの身分証が欲しい。


 人気の無い路地裏から家に戻り、フジになって冒険者ギルド イキュ支部に転移する。


 魔物の素材は結構いい収入になった。特に魔蜘蛛が高額だった。魔石が大きかったらしい。とはいえ、もう魔蜘蛛には遭いたくない。


 上級冒険者を目指そうとは思っていないが、下級ランクの依頼は報酬が安いので、中級ランクには上がりたい。

 しばらくはこつこつ依頼をこなそう。そのうちダンジョンにも潜ってみたい。

 

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