第11話 魔山羊のアイベ

 用心棒は魔狼のカイ、屋台を引くのは魔山羊やぎのアイベという。


 ◇◇◇

 

 領都ニカに行った翌日から、テンゴ村~サント町~シホロ町~シホロ東ダンジョンを透明人間になって巡ってみた。

 テンゴ村は宿場、サント町は周りに農地が広がる田舎町、シホロ町はイキュ町を大きくした感じの、冒険者の町だった。


 服を作るのが好きだった二代目は、領都ニカか、サント町経由で王都に向かったんじゃないだろうか。売られている布や糸の種類が多くて、服の買い手が多い所。


 シホロ東ダンジョン入口の横には冒険者ギルドの出張所があり、その前の広場には冒険者向けの露店や屋台が出ていた。

 人は多いが、広場は中型スーパーの駐車場程度の広さしかない。ここの出店もルールがありそうだ。


 冒険者ギルドの出張所でダンジョンの買取り素材一覧表を見ると、推奨ランクはSからFまである。

 冒険者のランクは、S、A~Fの7つ。Sは国に数人しかいない英雄級、A、Bは上級、C、Dは中級、Eは下級、Fは見習いだ。

 冒険者見習いは12歳から、冒険者は15歳から登録できる。出張所内には中学生くらいの子達もいた。

 ちなみに、イキュ町で貼り出されていた魔の山の素材は中級以上だった。


 テンゴ村~シホロ町間は冒険者と素材を運搬する荷馬車で通行量がそこそこ多い。なので、この道沿いで屋台を出すことにした。


 屋台を引く馬の代わりになりそうな魔物─アイベックス種の魔山羊は魔の山中腹の崖で見つけた。

 茶色の体で、大きさは牛くらい。後ろに反った大きな角がある雄だ。

 

 セロリを持って近くに転移し、短期の従魔契約を持ちかけてみる。

「屋台を引いてほしいんだ。引き受けてくれたら、食べたことない野菜あげるから」

 話している途中で、魔山羊はセロリを食べ始めた。鑑定してみる。

『魔山羊 従魔(短期)』

 …チョロいな。

 名前は、アイベックス種だからアイベにした。


 魔山羊を連れて、家から離れた厩舎の前に転移する。

 厩舎は外国製の物置を使った。外観が可愛いし、窓もある。こちらも迷彩をかけた結界で覆ってある。

 厩舎の外に水と岩塩を出し、餌はセロリの他にピーマンやキュウリ、パクチーも出してみる。特に好き嫌いはないようだ。



 次は用心棒だ。結界で防御できるし、魔物も人も雷で撃退できるが、絡まれるのは面倒だ。怖そうなのを連れていれば防止になるだろう。

 狩りをしながら魔の森で探そう。氷の矢の的中率も上げたいし。


 魔鹿の気配を感知し矢を射ろうとしたところ、同じ獲物を狙う魔狼の気配を感じた。一匹狼だ。ちょうどいい。

 魔狼が魔鹿に襲いかかる寸前で魔狼を氷の檻で囲って捕獲し、魔鹿には矢を射る。


 魔狼はしばらく檻に体当たりして脱出を試みていたが、無理とわかったのか静かになって地面に伏せた。

 …なんか弱ってない?

 

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