第8話 イキュ町

 異世界7日目。2日降り続いた雨が止んだので、最寄りの町を目指している。

 最寄りの町は世界樹から西に約180km、山脈を越えた先にある。


 山中では気配感知に強い魔物がうじゃうじゃ引っかかって、大変恐ろしい。

 結界に迷彩、気配遮断をかけて魔物を避け、ひたすら転移を繰り返している。


 今日は様子見だ。

 町に入る前に、この見た目をなんとかした方がいいと思っている。自分で言うのもなんだが神様譲りのすごい美女。

 それに、二代目異世界人と同じ顔だ。二代目が亡くなったのがどれくらい前なのか知らないが、彼女も世界樹の下で目覚めたんだとしたら、最寄りの町に向かったはず。

 彼女は神様から顔の話を聞き漏らしているから、髪と目の色を変えられることも知らず、金髪緑目のままだった可能性が高い。

 

 とりあえず、髪と目の色は変えようと思っている。

 幻影とか、他人からは違う顔に見える魔法が使えないか試したが、できなかった。聖者タイプならできたのだろうか?


 山を下り、町のそばまでやってきた。強い魔物の気配はない。一安心。


 町の山脈側は砦のようになっている。山の魔物を防ぐためだろう。

 岩に座ってカツサンドを食べながら、しばらく砦の門を見ていたが、出入りするのは武装した人間だけで、一般人はこの門は使わないようだ。

 町を囲む壁に沿って転移し、別の門を探す。


 町の西門の前に人や荷馬車が並んでいる。

 勇者になって聴力が上がった。意識すれば遠くの音が聞こえる。

 町に入る時は、門番に身分証を提示するか、身分証が無い場合は金貨2枚を支払う必要があるようだ。

 言葉が理解できてほっとした。


 お金が無いので門からは入れない。結界に迷彩、気配遮断をかけたまま壁を越える。透明人間だ。


 ここはイキュ町というらしい。

 西門から東の砦への通りをぶらぶら歩く。中世ヨーロッパのような町並み。途中に広場があり、広場に面して町庁舎と教会が建っていた。小さな町だ。


 人々の髪の色は黒、茶、金、白。目は黒、茶、青。地球と変わらない。多いのは髪は茶と金、目は茶と青。

 女性の多くは丈の長いワンピース、男性はシャツにズボンという格好で、帽子を被っている人の割合が高い。


 食堂のランチが大銅貨5枚。とすると通貨は、金貨1枚=1万円、銀貨1枚=千円、大銅貨1枚=百円、小銅貨1枚=十円って感じか。

 

 砦の近くまで進んだ所で、武装した集団が入っていく大きな建物を見つけた。

 看板を見る。読めた。

『冒険者ギルド イキュ支部』

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