第3話 アイテムボックス

 そろそろお昼だ。

 アイテムボックスからデパ地下惣菜店のジャージャー麺とお箸を出し、昼食にする。

(肉味噌美味し~)


 このアイテムボックスに、今日一日分のアイテムが入っている訳だが、明日はどうなるのだろう?

 今日残った分+明日の追加分? それとも明日一日分だけ?


 神様の説明では「過去一年間に日本で商品として売られた物が、一日分ずつ毎日」だった。

「毎日」が私が死ぬまで毎日なのか、一年間だけ毎日なのか。

 二年目以降も続くとして、一年後の今日のアイテムボックスはどういう設定なのか。


 日本の四季画面を出し、手作りの服を売っている店を検索して、一点物のチュニックをアイテムボックスから出した。襟ぐり、袖口、裾に刺繍がしてある。

 この店をブックマークしておいて、明日と一年後にこのチュニックがあるか確認しよう。


 昼食後、歯磨き代わりに《洗浄》をかけ、テントから離れた場所に《転移》し、《土魔法》で穴を掘る。生ゴミや排泄物の転移先だ。


 プラスチックゴミは、ゴミ用のアイテムボックスに入れる。

 アイテムボックスは、日本の四季ボックス、収納ボックス、ゴミボックスの3つに分けた。ゴミ用はさらに分別することになるだろう。


(家が欲しいな)

 日本の四季ボックスの中に、家もあった。太陽光発電ができてオール電化の家をどこかに設置したい。


 世界樹の周りは聖域っぽくて憚られるので、場所を探そう。

 結界を張ればいいから魔物がうろついていても構わない。外観がこちらの様式と違うだろうし、電化製品を使いたいので、人が来ない場所がいい。


(まずは家、次が最寄りの町だな)

 ギフト【日本の四季】があればこちらの世界で買い物をする必要はないが、有限かもしれないし、こちらの料理に興味がある。


 とりあえず、今日の午後は魔法を色々使ってみよう。



◇◇◇


 清々しい朝だ。ぐっすり眠れた。

(こんなに自分も環境も変わったのに、我ながらよく熟睡できたな)


 自分にパジャマごと洗浄をかけ、服に着替える。脱いだパジャマは収納ボックスへ。洗浄のおかげで洗濯いらず。


 一晩中テントの周りに結界を張っていたが、魔力消費量は微々たるものだ。元の魔力量が多いし、回復も速い。


 日本の四季画面を開く。

 昨日取り出したチュニックがまた表示された。別の一点物の在庫数を表示すると一点のまま、昨日+今日で二点に増えたりはしていない。


 私の消費に関係なく、日本で昨年同日に商品として売られていた物が、その日の日本の四季ボックスに入るようだ。


 日本の四季ボックスに入っているのは常にその日一日分だけで、冬のボックスに夏限定生菓子は入っていないということだな。季節感という点でギフト名に合っている。


 昨日は気付かなかったが、日本の四季画面に飲食店のメニューが出てきたので、朝食に定食屋の焼き鮭定食を選んだ。

 ちなみに昨日の夕食はデパ地下のハンバーグ弁当と有名パティシエのプリンだった。


(爽やかな朝、森の中で味噌汁。いいなぁ)

 日本では平日の朝はカフェオレだけ飲んで出勤し、休日は昼近くまで寝ていた。こんなにきちんと朝食を取るのは久しぶりだ。


 食べ終わると、マイ箸を残して食器が消えた。

(商品じゃないから? 片付け不要でいいね)


 今日は東を探索してみるか。

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