【星の魔術大綱】 -本格ケモ耳ミステリー冒険小説-
宝鈴
序章
古代、ルドモンドの学者や魔術師は、宮廷庭園の東屋に集い、学問や研究を行った。
ツタの葉が鬱蒼と巻きついた東屋の柱と、一体に見えるほど、知に打ち込む彼らを見て、民衆はいつからか、彼らを東屋そのもの、【
数千年の時を経て、アルバの名は帝国魔術師の資格職として、巷間に広まっているが、今もなお「帝国に仕える者」であることに変わりはない。
*****
鉄と赤土と太鼓の町・サウザス地区。
どこまでも広がる赤土の大地には、多くの鉄資源が地下に眠っている。昼は、あちこちの製鉄所や鍛冶場から、活気あるトンカチの音が響きわたり、夜は夜で、大通りから町の端まで、陽気な太鼓の音が鳴りわたる。
太鼓は、サウザスから遠く離れた西の地区・グレキス名産の物が主流だ。どういうわけか120年前から、サウザスでは太鼓が流行っている。各家庭に太鼓があるのはもちろん、町の各地で太鼓隊が結成され、日々の暮らしや祭りの賑わいに一役買っている。
サウザスの住民は、鉄と太鼓の音が大好きだ。
ここは町で一番大きな酒場ラタ・タッタ。
酒場と下宿を兼ねた赤い大きな建物に、酒と太鼓の音を求めて、夜な夜な住民たちが集まってくる。夕方、鉱山終業のベルが鳴ると同時に店が開き、ドンチャン騒ぎが繰り広げられる。酒場お抱えの、太鼓隊が鳴らす太鼓の音色は、毎日が祭りのように楽しく、常に、騒がしい。
そんな夜の喧騒がウソのように、昼間しんと静まり返るこの酒場だが、時おり堅く閉ざされた玄関ドアを、忍ぶようにトントン叩き、ひっそり訪れる者もいる。訪問者は、不運にも、採掘場や製鉄場で傷を負った住民たちだ。
ここの下宿には、今年20歳になる若い男のアルバ──
ショーン・ターナーが住み着いているのだ。
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