第17話 建国パーティー
「皆さん、オルステイン公国建国のこのめでたい日にお集まりいただきありがとうございます。
我が国は、これから…………
では、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
お父様の挨拶で乾杯をし、皆笑顔でパーティーを過ごしている。
オルステイン公国の建国により、これまで険悪であった隣国との関係も修復され、国民の生活もこれからさらに豊かになっていく、明るい未来が思い描かれる。
わたくしも、そんな未来を想像しながら楽しく料理を味わっていると、後ろから声をかけられた。
「オルステイン嬢、私はソラリアス帝国第一皇子、ウィリアム=ソラリアスと申します。一度会ったことがあるのですが、こうしてお話しするのは初めてですね。以後お見知りおきを。」
「殿下、こちらこそ初めまして。セレナ=オルステインと申します。ご丁寧な挨拶恐悦至極に存じます。」
「それでオルステイン嬢、婚約の話は考えてくれただろうか。」
「婚約?はて、なんのことでしょう?」
「え?いや、そちらに婚約を申し込んでいるはずなのだが。」
「そうなのですか?申し訳ございません。こちらで情報の不備があったのかもしれません。父に確認し、お返事を……」
「いや、先に少し親交をふかめたい。」
「え?」
食い気味で被せてきたので驚いてしまいました。
「私と少しお話ししてはくれないか?」
「え、ええ、それは構いませんが。」
お父様に言って、お返事を書いていただこうと思ったのですが、殿下は先に親交を深めたいとおっしゃいます。
まあおそらく、殿下との婚姻であれば、オルステイン公国とソラリアス帝国の同盟を確固たるものにするためのもの、お父様も断ることはできないでしょう。
それでも、全く知らない方との婚姻よりは、ということなのかとしれません。
「よかった、バルコニーにいこう。」
「分かりました。」
「オルステイン嬢、あなたはこの縁談に関してどう思っているのだ?」
「どうとは?オルステイン公国とソラリアス帝国の両国にとってとてもいいお話だとおもいますが。」
「いや、そうではないのだ。私たち個人にとってだ。」
個人にとって?
もしかして殿下には想い人がいるのでしょうか。それで、個人的な感情を聞いてきて、わたくしが嫌ならやめようということ?
そういえば、少し顔が赤い気がします。その想い人のことを思い出しているのかもしれませんね。
「殿下、わたくしはそちらの王弟殿下の公爵家へ嫁ぐ形でも、十分だと思いますし、なんならそちらの王族の方が、兄に嫁ぐという手もありますから。」
「そ、それは、私との結婚が嫌だと、いうことなのか?
私では、あなたの相手として不足だろうか。」
「い、いえ!滅相もない。そんなことは思っておりません。ただ、殿下に想い人がいらっしゃるなら添い遂げていただいた方が、わたくしとしても喜ばしいですから。」
「き、君以外に想い人なんていない!」
「え?」
「あ、いや、すまん。今日はこれで失礼する。」
わたくしが、婚約に関して他の手を提案すると、とても悲しそうな顔をされたため、フォローすると、こんどは、わたくし以外におも人はいないと言って、足早に去っていってしまいました。
しかし、今日初めて話したわたくしが想い人なんてことがあり得るのでしょうか。
もしかすると、婚約者になるであろうわたくしを愛そうとしてくださっていたのかしら?だとしたら、悪いことをしましたわ。
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