第11話 戦争が始まるまで

さらに数日経つと、サンフロール王国とオルステイン公爵家は互いに宣戦布告、また、互いの降伏勧告を拒絶し、戦争は始まった




かのように思われましたが、戦争はまだ始まりませんでした。

議会と騎士団が反発したのです。

議会は、公爵家と戦うべきではないと判断したのです。

今回の婚約破棄の責任は王家にあり、尚且つ、国内でも圧倒的な富と武力をもち、いまやソラリアス帝国とミカルネス王国の両国が背後に控えたオルステイン公爵家とことを構えるのは避けるべし。

というのが、議会の判断のようで、逆に責任は王家にあるという声も大きかったようです。

また、騎士団では、英雄と呼ばれるお父様は絶大な人気を誇っています。そのため、公爵家との戦争を騎士団が拒否したようなのです。近衛などは従っているのかもしれませんが。普通に考えればありえませんが、すでに王家の権威は失墜し、議会までもが、王家に牙を剥いた今だからこそありえたことなのでしょう。




わたくし達公爵家は改めて、王家に無条件降伏を勧告しました。

しかし、王妃陛下と王太子殿下が納得するはずもなく、降伏を拒否しました。

全く、国王陛下はなにをしておられるのでしょう。


王都にはもはや人がほとんどおりません。

貴族も騎士も平民も皆逃げ出し、現在我が家では、貴族からは独立への参加の申請、騎士からは雇用の申込、平民からは領地への受け入れの要請が相次いでいます。


現在王都にいるのは、なんらかの事情で逃げ出すことのできない平民と、この機に王家に取り入ろうと考えている下級貴族くらいです。

また、こちらのつかんだ情報によりますと、王妃陛下のご実家であるセルファイス公爵家は、我が家を潰す絶好の機会とばかりに、王家へ加勢するようです。子は親の鏡とはよく言ったものです。


セルファイス公爵とその騎士団が王都に到着するのに、およそ1週間はかかるでしょう。

その間、オルステイン公爵領には、国内の貴族が集結しておりました。我が家は、国内貴族の独立への参加を受け入れることにしたのです。


「オルステイン公爵閣下、この度の受け入れ感謝する。」


「こちらこそ、皆さんの参加うれしく思いますぞ。」


国内の貴族方とお父様は、形式的な挨拶を交わし、会議を始めました。議長はお父様のようです。


「では、サンフロール王国からの独立について、話し合いたい。」


「私からいいでしょうか。」


手を挙げたのは、ヨルドア=ハンブルク伯爵です。彼は、もともとお父様の副官を務めていらした方です。


「私は、この機に王家を滅ぼし、また、現在王家に加担している貴族は、貴族としての資質に疑いを持たれていたもの達ですので、この機会に粛清するのが良いかと。」





そこから話し合いが進み、結果、ハンブルク伯爵の意見が通りました。



それから1週間後、とうとう王国軍が公爵領へと侵攻してきました。


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