第5話
じっと雨を待ち続けた。あれほど疎ましかった雨を待つ時が来ようとは、わからないものだ。
村のこと、ニビのことを何度も思い出した。人から嫌われ、逃げてきた俺に今さら自分の人生を歩む資格があるのだろうか。自問しても答えは出ない。
ただ、この先に俺が求めているものがある気がしてならないのだ。俺はどうしてもそれを確かめたくなった。
しかし一向に雨は降らない。一週間も経つというのに、こんなことは初めてだ。これまではどの町に行っても大抵二、三日以内には雨が降り出していた。有り金をはたいて買った水と食料はじわじわ減っていき、もう長くは持たない。
そもそも雨が降る理屈がわからないが、そんなものはないと思っている。だとすると場所が悪いのかもしれない。暑さのために路地裏の日陰にいたが、もう日も暮れることだし、もっと大っぴらに空の下へ出てみよう。
そうして通りに出た時だ。
考え事をしていたせいか、人とぶつかってしまった。相手が尻餅をついたので、手を差し出そうとしてはっとした。
眼前の少女の、
「あのー」
声をかけられ慌てて引っ張り上げた。
「す、すまない」
薄汚れたローブに付いた埃を払い、少女は俺の顔を覗き込んできた。
「んん? あなたもしかして」
何のことかわからないでいると少女は「ふうん」と言って少し笑った。
「じゃあお詫びとして、ちょっとわたしに付き合って」
意外と明るい声色に戸惑いつつも俺は訊ねた。
「どこに?」
少女は得意そうにまた笑った。
「色んなとこ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます