21-7 星苺を一番集めた妖精が王様になる
秘密の果樹園で十二個の
その途中で、不意に
「
歩きながら、
「だから、秘密の果樹園に入らせてくれたんでしょ?」
わたしの言葉に、
「
言い当てられて瞬きする。でもすぐに
きっと
「俺の手札も言っちゃうと、『24』『20』『19』『15』だ。俺は『24』と『20』で魔力が44になる。
「それって……
わたしの疑問に、
「それが俺の勝ち筋なんだよ。この後
わたしが『22』と『14』を出したとすると魔力は36。その時に
そしてもう一ヶ所ではわたしの手札は『18』と『9』だから魔力が27。
そういうことか。
逆に言えば、
「つまり、この後の四ヶ所目と五ヶ所目、四つと六つ、どっちで勝負をするかの読み合いってこと」
「か、勝つから!」
咄嗟にそう言ってしまっていた。
「俺も。勝つつもりだからね」
四ヶ所目はわたしからカードを選ばないといけない。
わたしはじっと
何回か深呼吸して、心を決める。
先に勝負しようと思う。でも、
わたしは普段、どんな顔でカードを選んでいたっけ。意識しすぎて不自然になってしまいそうだ。震える指先でカードを選ぶ。
カードに指をかけて、少しだけためらう。
やっとのことで「22」のカードを選んで、伏せて置く。そっと
今のは変じゃなかっただろうか。バレてしまったんじゃないだろうか。鼓動がどんどん大きくなる。
二枚目。わたしは「18」のカードを伏せて置く。
そして二人でカードを公開する。
「ああ、そっちか」
そっと視線をあげると、
最後の五ヶ所目は
でも、星苺の合計はわたしが三十個で
星の魔力が結晶化した星苺。その星苺をたくさん集めた人が勝ちで、妖精の王様。
だからわたしは今だけ、妖精の王様だった。
頭のキノコの帽子に星苺を飾って、集めた星苺を食べる。星苺は金平糖のように甘くて、しゃりしゃりとした感触だけど、飲み込む前に口の中で淡くふわりと消えてしまった。
妖精たちのお喋りや忍び笑いのざわめきの中、わたしも
気付けば、いつものボドゲ部
いつもの長机の上には、星苺や妖精のカードが散らばっていた。
「ああ、楽しかった」
「最後、めちゃくちゃヒリヒリした。悔しいな、もうちょっとで勝てたのに。ああ、でも、すごかった。めちゃくちゃ楽しかった」
嬉しかった。
それに、楽しかった。跳ねる鼓動を顔に出さないようにして、
ゲーム中のどきどきを思い出して、わたしは自分の胸元を押さえて
「わたしも。最後勝てて嬉しかったし、それだけじゃなくて、ずっと、遊んでる間ずっと、楽しかったよ」
そう声をかければ、
そんなちょっとぼんやりとした表情のまま、
「
わたしには良いゲームというのがどういうものかはわからないけど、でも、
わたしはもしかしたら、こうやって楽しそうにしている
それから二人で姿勢を正して「ありがとうございました」と頭を下げあって、片付けをする前に
星苺四つのカードと鍵のカード。上下に並べられた二枚のカードに、わたしは首を傾けた。
「このカード、背景の絵が繋がるんだよね。ほら、ここ」
言われて見てみれば、薄い色で描かれている背景の線が、確かに繋がっていた。鍵穴の絵と、隣は門の形。それらが上下二枚のカードにまたがって描かれている。
「これって、他のカードもそうなの?」
「そう。確か全部繋がって並ぶんじゃなかったかな」
「なにそれ。気になる」
「やってみようか」
それで、
「これは……貝かな?」
「魚ならさっき見かけたけど」
そうやって、少しずつカードの絵が繋がってゆく。
途中、
「最後のあれ、
そう言って、ちょっと眉を寄せて悔しそうな顔をした。
わたしは、
「あのときわたし、大きい数出してるって
わたしの言葉に、
「
「わたしなんか、
「そうかな。今回は結構、わかられてた気がするけど」
そうだったかな。どうだったっけ。
ぼんやりとゲーム中のことを思い返していたら、急に
「これ、繋がるね」
わたしが持っていた星苺のカード。そのカードの上に、
カゴに入った星苺は全部で十二個。鍵穴の印も付いている。つまりこれが、秘密の果樹園のカードだ。
カゴに入った星苺の背景には、大きな門の絵が描かれていた。
その秘密の果樹園の絵が繋がったのを見て、わたしは体の力を抜いて笑った。
「こっち側の葉っぱみたいなのは、何かな。特徴的だから、あったらわかりそうなものだけど」
「さっき似たような葉っぱ見た気がするけど、どれだったっけ」
まるで夜の森を散歩するみたいに、二人でくすくすと笑いながら、長机の上にカードを並べていた。背景の絵が繋がってゆくと、ゲームの世界の中に入り込まなくても、妖精たちの世界が見えてくるみたいだった。
こうやって二人で並んで同じことをしていても、
でも、お互いに楽しく感じているのは、確かな気がしていた。それが嬉しかった。
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