手合わせ(語り:ミシア)
ミシアたちは、海水浴の残りの日程を遊んで過ごした。
チャーリーや、ショウ・プッシュ・パープルも一緒に。
ショウやチャーリーたちには薬以外の予定は無かったので、ミシアたちが帰る日まで、一緒にラリル村に滞在することにしたのだ。
そして、楽しい日々はあっという間に過ぎていき、帰る時がやってきた。
・・・
ミシア「あの、パープルさん。ちょっとお願いがあるんだけど」
パープル「なにかしら?」
ミシア「最後に、一度手合わせをお願いしたいんだけど」
プッシュ「お、ショウには敵わないからパープル相手に逆襲か?」
パープル「違うわよ。いいわ、ちょうど私もミシアちゃんと手合わせしてみたいと思っていたの」
パープルもミシアも武器を持たずに素手で戦う格闘士だ。
ミシアとパープルは少し距離をとって向かい合った。
互いに礼をして、2人とも構えをとる。
アーキル・ショウ「これは…やはり」
ルディア「2人とも、よく似た構えですね」
ケニー「そうですね」
コノハ「どちらも格闘士だからじゃない?」
アーキル「格闘士だって、流派によって違いはあるはずだぞ。剣士だって、弓士だってそうだろ?」
コノハ「それはそうね…」
プッシュはパープルに声援を送る。
プッシュ「目くらましに気をつけろよ!」
ショウ「今日はそんな事はしないよ。あのときとは状況が違う」
ミシアが先に動いた。
パープルの正面に飛び込み、拳を打ち出す。
パープルはそれを払って反撃する。
ミシアもそれをいなして、逆の拳を打ち出す。
パープルとミシアはお互いにどこに攻撃がくるのか分かっているかのように、流れるように拳を出しあい、避けあう。
プッシュ「綺麗だな…」
プッシュはパープルを見ていて、思わずつぶやいた。
ショウ「惚れ直したかい?」
プッシュ「ばっ、ちげーよ、動きが綺麗だって言ったんだ!」
ミシアは右ストレートを放った。
パープルは上半身を動かすだけで軽くかわして反撃する。
ミシアは反撃を受け流しつつ、その勢いを利用して左足を軸に身体を一回転させ、右足で蹴りを繰り出す。
しかしミシアが狙った先にはパープルは居らず、横からパープルの拳がミシアの顔面に打ち出され…当たる直前で静止した。
2人は離れて、再び礼をした。
プッシュ「パープルの勝ちだな!」
ショウ「そういう勝負をしていたわけではないよ」
ショウは微笑みながら答えた。
パープル「ええ。それに、今はお互い使わなかったけど、肉体強化魔法では彼女の方がきっと上よ」
プッシュ「そうなのか…?」
ミシア「あの、パープルさんが格闘術を教わったのは、どなたからですか…?」
ミシアの口調が改まっている。
パープル「相手の勢いを利用して回転して攻撃するのは威力が増すけれども、大振りになるし、相手から目を離して隙を作ることになるから注意しろ…って言われなかった?」
ミシア「えへへ、よく言われました…でも身体が勝手に動いちゃうんです」
パープル「ふふ、わたしもプロクーシ老師によく言われたわ」
ミシア「やっぱり、パープルさんも師匠の弟子だったんですね!姉弟子様だぁ!」
パープル「やっぱりミシアちゃんもそうだったのね。初めて動きを見たときから、そうじゃないかって思ってたわ」
格闘や剣に限らず、武術というものは、敵の動きを想定し、それに対応する動き方を考える。
どういう対応をするかという考え方によって動きが変わってくるが、それが流派の特徴となる。そしてその流派を学ぶ者は、とっさのときに無意識でもその動きが出来るよう、反復練習して身に付ける。
だから構えや動きを見れば、分かる者には流派が分かるのだ。(もっとも、我流の者も多いが)
ライラ「まぁまぁ~。パープルさんと、プロクーシさんは~お知り合いだったんですね~?」
ミシアが身体を動かす魔法が使えるようになったばかりの頃は、当然まだ自由に魔法を使いこなせなかった。そこで教師役として、ライラが冒険者時代の伝手を頼って肉体強化魔法を教えられる者を探したのだ(肉体強化魔法の使い手は多いが、ほとんどが我流で、他人に教えられる者は少ない)。そういう人なら、身体を動かす魔法を身に付けるアドバイスを貰えると思ったからだ。それがプロクーシ老師だった。
パープル「ええ、そうです。長らくお会いしていないけれど…お元気かしら」
ミシア「ボクも長いこと会ってないけど、訓練のときは、いつも変な冗談ばっかり言ってて、元気でしたよ!」
パープル「まぁ、老師らしい」
パープルは笑みを浮かべた。
ショウがミシアとパープルのところに近付いてきた。
ショウ「素晴らしい組み手だったね。2人が同じ人に師事していたとは…そんなところにも縁があったんだね」
パープル「そうね」
他の面々もミシアとパープルの周りに集まってくる。
タニア「2人とも動きがすごく綺麗だった!」
タリア「お姉さまたち、とても素敵でした」
チャーリー「すごい、すごーい!」
賑やかな歓声が2人を包み込んだ。
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