和解(語り:コノハ)

アーキルはショウの言葉に引っかかりを覚えた。

アーキル「今なんて言った?」


ショウ「私は譲るわけにはいかない、と」

アーキル「そうじゃねえ、弟の名前だ」

ショウ「私の弟の名前は、チャーリーだ」

ルディア「私たちが助けたい子供の名前も、チャーリーです。…偶然ですね」

コノハ「確か、チャーリー君には冒険者のお姉さんがいて、名前は…シャーリーだったかしら?」

ショウ「!…シャーリーは、私の名前だ…!」


コノハの言葉を聞いて、ショウは衝撃を受けた。

そしてショウの告白を聞いて、コノハ達は混乱した。


コノハ「…はい??」

ルディア「…ショウさん…ではないんですか?」

ショウ「ショウというのは、プッシュが呼んでいるあだ名のようなもので…冒険者としての通り名というか…」

プッシュ「ああ。だって、シャーリーなんていかにも女らしい名前で、全然似合わないだろ。だからおれ様が、無く子も黙る格好いい呼び名を考えてやったってわけよ」

パープル「シャーリーは可愛い女の子なんだから、シャーリーでいいじゃない!」

プッシュ「どこが可愛いんだよ!凛々しいの間違いだろ!あと、もう女の子って年でもないだろ!」

パープル「あんた、後でぶん殴る…!」

パープルはミシアに治癒魔法をかけていたので、今は手が離せなかった。


コノハ「えーっと、私たちが聞いているシャーリーさんは、チャーリー君のために治療法を探しに旅に出て、しばらく両親の元に連絡が無いとか?」

ショウ「そうだ。冒険者になったばかりの頃は自由気ままに各地をまわっていたが――ミシアさん達を誘拐から助けたのはその時期だ――、5年前、チャーリーが生まれたのだ。(20歳も年が離れている!)

それでチャーリーの病気のことを聞き、治療法を探すために改めて旅に出ることにしたのだ。

しかし旅には出たものの、5年もの間、何の手掛かりも得られなかったので、両親に連絡するのも憚られてな…。

今回の薬は有力な話だったが、ぬか喜びさせるのも良くないと思い、事前の連絡もしなかったのだ。

ちなみに、両親の名前はバーリーとソーファーだ」

コノハ「完・全・一・致…!」


ルディア「じゃあ、私たちは同じ子供のために薬を探していたんですか?

それなのに、1人分の薬だけあればいいのに、薬を奪い合って戦ったんですか?

そのために、ミシアちゃんはこんな大怪我をして…」

一行「…」


皆黙り込んで、静寂が訪れた。

それを破ったのはミシアだった。


ミシア「…なんだ…そうだったんだ…」

ルディア「ミシアちゃん?!」

コノハ「大丈夫?!」

ミシア「うん、大丈夫。そもそも全然痛くないし」


そしてミシアはショウを見上げて微笑んだ。

ミシア「良かった…。病気の子供は一人しか居なかったんだね」


ショウ「…!……すまなかった」

ショウは目に涙を浮かべながら頭を下げた。


ミシア「ううん。本当に良かったよ。…早く薬を持って行ってあげて」

ルディア「そうです。今チャーリー君はご両親と一緒にラリル村の村長さんのところに居ますから!」


・・・


しばらくして、ミシアの治療が完了した。

パープル「それじゃ、先に行かせてもらうわ」

ミシア「うん。腕を治してくれてありがとう」

パープル「…っ!…こちらが悪かったんだから、当然の事をしたまでよ」


ショウたちはラリル村の場所を聞いて(ショウたちが来たロレル村とは東西方向の反対側だった)、薬を持って一足先に出発した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る