薬入手(語り:ショウ)

洞窟の最奥の壁の手前に、人の手による台座が設置されていた。

ミシアとショウは台座のところまで来た。

台座の上には、蓋のない小瓶が置かれている。ミシアたちがラリル村の村長ローラから預かった小瓶とそっくりだ。

ローラから預かった小瓶はケニーが保管していたが、ショウがその小瓶を受け取っていた。


ショウ「これが、薬…?」

ミシア「うん!やったね!」

小瓶は透明なので、中に液体――うっすら青い光を放っている――が入っているのもちゃんと分かる。これが目的の薬だろう。

ショウ「ならば、その小瓶を持って、皆のところに戻ろう」

ミシア「うん…ボクだと落としちゃいそうだから、ショウさんが持ってってくれる?」

ショウは薬の入った小瓶に蓋をして、背負い袋にしまう。

そして新しい空の小瓶を台座の上に置いた。次の人のために。


ケニー「どうでした?」

戻ってきたミシアとショウに、ケニーが声をかける。

ミシア「うん!ちゃんと薬が手に入ったよ!」

ショウは背負い袋から小瓶を出して、皆に見せる。

ルディア「良かったです!」

コノハ・パープル「やったわね!」

アーキル「やれやれだぜ」

アーキルは愚痴を言いつつも、目は喜びを語っていた。


だが、ケニーは小瓶を見て固まった。

プッシュ「?…どうした?」

ケニー「…薬の…量が…」

小瓶には確かに薬が入っているが、問題は、その量。

小瓶の半分程度しか入っていない。

ケニー「…ローラさんは、小瓶に半分で、1人分だと言っていました…」

ショウ「!!」

ミシア「!!」

今の小瓶には、1人分の薬しか入っていないということだ。

必要なのは、ミシアたちで1人分、ショウたちで1人分の、合計2人分なのだ。


コノハ「じゃ、じゃあ、どちらかが先に1人分を持って帰って、もう片方はここで薬が貯まるのを待つっていうのは…?」

ケニー「問題は、どのくらいの時間で1人分が貯まるかですね…」

パープル「前の小瓶が置かれたのって、いつなのかしら?」

ケニー「それは聞いてきませんでしたね…。失敗しました」

プッシュ「ちょっと、台座のところを調べてみようぜ。何か分かるかもしれねえ」

ケニー「はい」


ケニーとプッシュは台座まで行って、辺りを調べた。

ケニー「…推測するに、天井から薬の成分となるものが雫となって落ちてきて、それが小瓶に貯まるのだと思います」

プッシュ「しかし、見ていても水滴が落ちてくる様子は全く無かった。…きっと、とんでもなく長い時間がかかるんだろう。数ヶ月か、数年か…」

ミシア「そんなに?!」

パープル「それじゃ、ここで待つってわけにはいかないわね…」


アーキル「どっちかだけしか薬を持ち帰れないってことだな」

ショウ「…お前達には恩があるが、こればかりは譲るわけにはいかない。私の弟にはもう時間が無いんだ」

ルディア「ショウさんの弟さんが病気なんですね…」

ミシア「ボクたちも、頼まれた子には会って間もないけど、絶対に譲れないよ!」

ケニー「こちらも、時間が無いと言っていましたしね…」


アーキル「なら、方法はひとつだな」

ショウ「…それは?」

アーキル「決闘だ。勝った方が薬を持って帰る」

ショウ「望むところだ」

ルディア・パープル「そんな?!」


アーキルとショウは険しい顔で睨み合った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る