浅瀬(語り:ミシア)

一行は、ミシアを先頭に、洞窟の浅瀬の中を歩いていく。

暗い洞窟の中では、海中魔灯ランタンの光があっても水の中は見えにくい。


ミシア「あっ!」

ミシアが急に声を上げ、一行に緊張が走る。

アーキル「どうした?!」


ミシア「カニがいた!」

ミシアの足の近くを小さなカニが通り過ぎていった。

アーキル「ばかやろう!おどかすな!」

ミシア「あははー、ごめんごめん。つい」

アーキル「まったく…」


ケニー「しかし、単なるカニで良かったですね。ジャイアントクラブだったら厄介でした」

ミシア「ジャイアントクラブ?」

ケニー「大きなカニの形の魔物ですね」

コノハ「…ジャイアントなんちゃらって魔物、多いわねぇ」

ケニー「まぁ、既存の生物に似た巨大な魔物となると、ねぇ」

コノハが呆れたように言い、ケニーが苦笑で答える。


ミシア「ねえ、一番大きい魔物って、何かな?」

コノハ「さあねぇ…。やっぱりドラゴンじゃない?」

ケニー「ドラゴンは個体差が激しいので、大きなのもいるでしょうけど…。僕が知ってる中で一番大きいのは、ドッカンクジラですね。それこそ島くらいの大きさがあって、背中に色々乗せているそうです」

ルディア「へえ、そういう魔物もいるんですね」

ミシア「クジラと言えば、『ヒッヒヒー』っていう鳥の絵本にも、大勢の小鳥がクジラを紐で吊るして運ぶ絵が載ってたね」


他愛のないおしゃべりをしながら、一行は進んでいく。

今のところ、水深にはあまり変わりはなく、せいぜい膝が水面に触れる程度の深さだ。


アーキル「しかし、グリーブの中まで水が入ってきて、気持ちわりーな…」

アーキルの金属鎧は手や足の先までがっしり覆うタイプの鎧だ。しかし金属靴グリーブには足首を動かすための隙間があり、どうしても水が入ってきてしまう。

ルディア「私もちょっと…」

ルディアの魔法の鎧も、防水効果があるわけではない。

ケニー「僕も、靴が水浸しで気持ち悪いですよ」

コノハ「私もそうだけど…泣き言を言ってもしょうがないでしょう?」


ミシア「そうなんだ?みんな大変だね」

ミシアは一人だけサンダルだし、そもそも昔受けた拷問の後遺症で足の感覚が無いので、特に気にしていなかった。


そして、さらに進んでいる内に…。

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