地下洞窟(語り:ケニー)

地下には太陽の光が届かないので、当然ながら暗い。

それを見越して、ミシア達はローラから海中魔灯ランタンという魔法具を借りてきていた。

原理的には部屋の天井に設置されている明かりの魔法具と同じで、魔力によって光を放つ。

海中魔灯は円筒形の筒の前面から強烈な光を出すようになっており、暗い海に潜ることのあるウィンズ人御用達の魔法具だ。

ちゃんと人数分借りてきている。


ミシア「ひゃっほう!」

アーキル「こら、眩しいだろ!」

海中魔灯を握って魔力を充填すると、光が出る。

ミシアの海中魔灯からは、他のメンバーが持っている物より強い光が出ていた。

ケニー「魔力量が人より多いからですかね…。あまり魔力を込めすぎると、また壊れるかもしれませんよ?」

コノハ「壊したら、弁償かしら」

ミシア「…う。注意します」

ミシアの海中魔灯の光は少ししょんぼりした。


地下道は一人ずつしか入れない太さで、しばらくの間は曲がりくねりながらかなりの角度で下っていた。

しかしいつしか道幅は広がっていき、3人くらい並べそうな幅になった頃には、坂も無くなっていた。

道の先は海中魔灯の光も届かず、どこまで続いているか分からない。

足元には水が広がっていて陸地は無い。一見した感じでは浅瀬のようだ。


コノハ「水の中を進むしかなさそうね」

ルディア「深さは大丈夫でしょうか?」

ケニー「長い棒でもあれば、水中をつつきながら進んで、深さを確認できるんですが…」

辺りを見回すが、そんな都合の良い物は無い。

アーキル「オレの剣はそんなことには使わんからな」

アーキルの両手剣グレートソードは2メートル近くあるが、確かに水中をつつくのには向いていない。

ミシア「とりあえずは足首くらいの深さだね」

ミシアがざぶざぶと水に入っていく。

アーキル「こら、勝手に進むな。危ないだろ」


ケニー「ですが、誰かが先頭に立たなきゃいけないですし、軽いミシアなら適任かもしれませんね」

ルディア「アーキルが深みに嵌ったら、誰も引き上げられないですものね…」

コノハ「ロープで結んでおいたら?ミシアなら、みんなで引っ張れるでしょ」

アーキル「それがいいかもしれんな」


ミシア「じゃ、ケニー、お願い!」

ミシアは戻ってきてケニーの前に立ち、両腕を上に上げて、剥き出しになっているお腹を見せた。

ケニー「は?」

ミシア「ボクをロープで縛ってよ。自分じゃ結べないから」

ミシアは手が不器用なので、ロープを結ぶことが出来ない。


ケニー「わ、分かりました」

ケニーは荷物の中からロープを出し、ミシアのお腹に巻いていく。

ミシアの胸にケニーの顔が近付き、なんだか恥ずかしくなってくる。

ルディア「あら?ケニー、顔が赤くなってますよ?どうかしたんですか?」

コノハ「今さら何を恥ずかしがってるの?治癒魔法をかけるときにさんざん触ってるじゃない」

ケニー「それとこれとは違うと言いますか…っていうか、別に赤くなってませんから!」

ケニーは顔を真っ赤にしながら、ロープを結び終えた。


ミシアから出て延びているロープは、まずアーキルが持ち、さらに順番にコノハ・ルディア・ケニーが持った。いざというときに全員で引っ張れるようにするためだ。

ミシア「それじゃ、しゅっぱーつ!」

ミシアは意気揚々と足を踏み出した。


ミシア「ぐべっ」

しかしいきなりロープが引っ張られて、ミシアのお腹を締め上げた。

ミシア「なにするのさ?!」

アーキル「悪い悪い。一応、ちゃんと引っ張れるか確認しとこうと思ってな」

ミシア「もうっ!大丈夫だったでしょ?じゃ、今度こそ行くからね!」

今度はロープが引っ張れることもなく、全員で前進を始めた。

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