到着(語り:ルディア)

海は青い。

しかし小島の周辺は、いっそう濃い青色をしていた。

島自体が黒いので、それが海底まで続き、海をより青く見せているのだろう。


小船の舵は湖の国アースクースの出身であるケニーがとる。

他のメンバーは、櫂で漕いで小船を進める。


ジャイアントオクトパスは3人組の冒険者ショウパーティーが倒した1匹だけだったようで、海の上で襲われることは無かった。

ミシア「カラスも襲ってこないねー」

ケニー「カラス?どうして海でカラスが襲ってくるんです?」

ミシア「昨日読んだ絵本では、カラスが襲ってきたんだよ」

ケニー「昨日も思いましたが、現実と絵本を混同するのはやめた方がいいですよ。魔物に対する誤った知識は危険ですからね」

ミシア「はーい、ちゃんと分かってるって!」


特に問題なく、ミシアたちは黒い小島に上陸した。

ミシア「島も襲ってこなかったね」

ケニー「どういう事です?」

ミシア「なんでもない!」

また昨日読んだ絵本『ジャイアントオクトパスの海岸物語』のことだったが、ミシアは笑ってごまかした。


海岸には、ミシアたちが乗ってきたのとは別の小船が停めてあった。

ケニー「たぶん、あの冒険者たちのものでしょう」

ルディア「やっぱりここに来てたんですね…」

アーキル「そしてまだ戻ってない、か」

コノハ「そんなに広いのかしら?」

ケニー「ローラさんから聞いた話では、そこまでではなさそうでしたが…」


アーキル「それより、準備しねーとな」

アーキルは小船に積んできた鎧を装着する。

コノハ「この鎧、着脱が面倒よねー」

アーキル「金属鎧プレートアーマーは頑丈で命を預けられる鎧だぞ!」

コノハ「はいはい、分かってますって」

コノハは愚痴を言いながらも、アーキルが鎧を着るのをしっかり手伝っていた。


一方、鎧を着てこなかったルディアは。

ルディア「アレーグル、鎧装着アーマード

ルディアが合言葉コマンドワードを唱えると、右腕にはめていた腕輪が白く輝き、その輝きがルディアの全身を覆って、いつも着ている白銀の鎧に変化した。

この鎧にはアレーグルという名前が付けられている。コマンドワードによって自由に着脱できる、魔法の鎧なのだ。

ミシア「はあ~、いつ見ても格好いいよね、その鎧!」

ルディア「ありがとう、ミシアちゃん」

ミシア「それに、着るのが楽なのもいいよね!これならボクでも簡単に着られるよ」

ケニー「サイズが違いすぎるのでは…?」

ルディア「アレーグルは魔法の鎧だから、着る人の体格に合わせて変化しますよ。でも着られる人を声で認証認可するので、私以外の人は使えないんです。ごめんなさい」

ミシア「いいよいいよ。ルディアの方がずっと似合ってるもんね!」


しばらくして、アーキルが鎧を着終わった。

アーキル「待たせたな」

ケニー「それじゃ、行くとしましょう。こっちですね」

ケニーは行き先を指差した。

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