依頼(語り:バーリー)

ローラは、応接間に皆を案内した。それなりの広さで、全員が入ることが出来る。


バーリー「改めて…。皆さん、息子のチャーリーを助けていただいて、ありがとうございました」

ミシア「いえ、本当に何もしてないですから!」

アーキル「本当に何もしてないよな」

アーキルがまた言う必要のない事を言ったので、コノハは無言でアーキルの耳を引っ張った。


ルディア「それで、私たちにお話とは、何でしょうか?」

ローラ「ええ、皆様が腕の立つ冒険者とお聞きしまして、お願いしたいことがあるのです。…バーリー様、ご説明いただいてよろしいでしょうか?」

バーリー「はい…。話は、チャーリーのことなのです」


バーリーは、チャーリーの病気について説明した。

生まれつき病気を持っている事、普段は元気だがときどき激しく咳き込む事。

その病気は命に関わるものであり、もう5才なのでそろそろ限界である事。

そして、旅の商人から『チャーリーの病気を治せる薬』の噂を聞いた事。


バーリー「その噂の場所が、このラリル村なのです。それで、詳しい話が聞ければと、この村の村長であるローラさんを訪れたのです」

ケニー「その噂は、本当なんですか?」

ケニーはローラに尋ねる。

ローラ「はい。お話を聞いた感触ですと、チャーリー様の病気は、インタルナレラという病気だと思います。珍しい病気だそうですが、病名がつく程度には罹る方が何人かいるそうです。

そして、それを治せる薬なら、近くの小島で採れるという話を先代の村長から聞いています」

アーキル「なら、取りに行けばいいじゃねえか」

ローラ「そうなのですが…、島には魔物がいるそうですし、島の周りにもジャイアントオクトパスが棲んでいるので、村人では近づくことすら出来ないのです」

アーキル「話が見えてきたぜ…。この村には、冒険者は居ないのか?」

ローラ「なにぶん、小さな村ですので…。それに、ジャイアントオクトパスを倒せるほどの冒険者となると、なかなか居りません。

その点、皆様は、ジャイアントオクトパスを倒したとお聞きしました」

アーキル「誰がそんなことを?」

ローラ「昨晩、うちの従業員が、ミシア様からお聞きになったと」

ミシア「ああ、あのお爺さん」

アーキル「あのなぁ。ジャイアントオクトパスを倒したのは別の冒険者だぜ。

…まぁ、オレたちだって倒せるがな」

コノハ「はいはい」


バーリー「うちの娘が居ればそれに頼むのですが…今はどこに居るのやら」

コノハ「娘さん?」

バーリー「あ、はい。チャーリーには姉が一人いるのです。名前はシャーリーといいますが、冒険者をやっています。チャーリーの治療法を探すと言って出ていったんですが、最近は連絡も無く…」

ルディア「連絡が無いのは心配ですね…」

バーリー「まぁそうですが、シャーリーは成人してますからね。今はチャーリーの方が心配です」

アーキル「それで、オレたちに依頼したい、と?」

バーリー「はい。薬を取りに行くのを、お願いできないでしょうか?」

アーキル「だが、断る。すまないが、オレたちは休暇でここに来てるんだ。働きに来たわけじゃないんだぜ」

コノハ「とか言って、ジャイアントオクトパスと戦ってる冒険者には真っ先に助太刀に行ったくせに」

コノハはアーキルの頬をつついた。

アーキル「うるせえよ」

アーキルは重い金属鎧プレートアーマーを着ているので、船に乗って小島に行くような依頼は避けたかった。鎧を着たまま海に落ちたら助からない。かといって、鎧を置いて行くのも問題だ。鎧なしで魔物と戦うのも避けたい。

しかし。


コノハ「でも、分かってるんでしょう?」

アーキル「ああ…」

アーキルたちはリーダーであるルディアの方を見る。

ルディア「引き受けましょう。病気の子供を放っておくことなんて、出来ません!」

コノハ「ほらね」

アーキル「やっぱりな」

ケニー「そうくると思ってましたよ」

ミシア「うん!」


バーリー「皆さん、ありがとうございます」

アーキル「言っとくが、報酬はちゃんと貰うからな!」

バーリー「はい、もちろんです」


ローラ「では、もう少し詳しいことをお話ししましょう…」

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