第3章 薬を求めて

激突(語り:ミシア)

翌朝、ミシアたちは朝食を済ませると、さっそく海へ出かけることにした。

水着に着替えて、泊まっている部屋を出る。

ちなみに部屋割りは、ミシア・タニア・タリアで一部屋、ルディア・コノハ・ライラで一部屋、アーキル・ケニーの男部屋、と分かれていた。

ルディアたちに「先に行くよ」と一声かけて、ミシアたちは廊下を歩き始める。


ミシア「今日は、まず何をしよっか?」

先頭を歩くミシアは、後ろを歩く妹たちの方を振り返りながら、嬉しそうに声をかけた。


どんっ!

そんなミシアのお腹に軽い衝撃が走った。


ミシア「ん?」

ミシアは前方に向き直った。

足元に幼い男の子が倒れている。

ちょうど曲がり角で、ミシアとぶつかったのだ。


ミシア「ああー!?ごめんね、大丈夫?!」

慌ててミシアは男の子を助け起こす。

男の子「うん、だいじょうぶ。…ぶつかって、ごめんなさい…」

ミシア「大丈夫なら良かった。こっちこそ、前を見てなくて、ごめんね」

タリア「お姉さま、ちゃんと前を向いて歩かないと…」

タニア「怪我は無さそうだから、良かったけど」


男の子は、ミシアたちを見てにっこりと微笑み…、急に咳き込み始めた。

男の子「ごほっごほっ!ごほほっ!ぐうぅぅ…ごはっ!」

普通の咳とは思えない、激しい咳だ。


ミシア「うわわ、どうしたの?!」

タリア「尋常な咳じゃないわ…!」

タニア「うあぁ、やっぱり怪我してたの?!」


そのとき、廊下を女性が走ってきた。

女性「チャーリー!」


女性は男の子に近付くと、背中をさすり始めた。

タリア「もしかして、この子のお母さんですか?」

女性「はい、私はこの子――チャーリーの母です」

ミシア「ごめんなさい、ボクぶつかっちゃって、当たり所が悪かったのかな…?」

チャーリーの母「いえ、この子には持病があって…ときどきこうなるんです。しばらくすれば治まります。…どこか休める場所があれば…」

タニア「じゃあ、あたしたちの部屋に」

チャーリーの母「すみません…」


チャーリーの母はチャーリーを抱え上げ、ミシアたちは自分たちの部屋に案内し、ベッドにチャーリーを寝かせた。

チャーリーの咳はまだまだ続いている。


タリア「大丈夫なんでしょうか…?」

タニア「何か薬とかは無いんですか?」

チャーリーの母「普通の咳止めでは効かなくて…収まるのを待つしか無いんです」

チャーリーの母はつらそうな表情でチャーリーの手をとって見守っている。


コノハ「どうしたの?」

ローラ「どうかしましたか?」

騒ぎを聞きつけて、コノハたちや、この旅館『レ=ローラ』の主であるローラも部屋に顔を出した。


男性「ソーファー、こんな所にいたのか」

ローラと一緒に来た見知らぬ男性が、チャーリーの母親に声をかける。

チャーリーの母「あなた!…また、チャーリーの発作が…」

男性「そうか…」

チャーリーの母「この方たちが、ベッドを貸してくださったの」


男性はミシアたちに向かって頭を下げた。

男性「皆さん、息子のチャーリーを助けてくださって、ありがとうございます。俺の名はバーリー、こっちは妻のソーファーです」

ソーファーもバーリーと一緒に頭を下げた。

ミシア「いえ、そんな…。何もしてませんから!」

ミシアは手と頭をぶんぶん振って否定する。


ローラ「皆様、こんな所で立ち話はなんですから、場所を変えましょう。ちょうどルディア様方にお話があったのです」

チャーリーの看病に残ったソーファーとライラを除いて、ミシアたちは場所を移動した。

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