つまずき(語り:ミシア)

ミシアは、さっそく絵本『ジャイアントオクトパスの海岸物語』を声に出して読み始めた。声を出すのはミシア、絵本のページをめくるのはタニアの役割だ。


ミシア「あるところに、ジャイアントオクトパスが住んでいました。

ジャイアントオクトパスは恋人と一緒に楽しく暮らしていましたが、あるとき、恋人がクラーケンに誘拐…」

そこまで読んだところで、ミシアの声が止まった。

同時に字を追っていたタリアと聞いていたタニアの体がびくっと震える。


文章は、「あるとき、恋人がクラーケンに誘拐されてしまいました」と続いていた。

大きなイカクラーケンが少しだけ小さい大きなタコジャイアントオクトパスを持ち運ぶ絵も描かれている。

物語としてはよくある、何の変哲も無い展開。

しかし実際に誘拐されたことがあるミシア達には、つらい記憶が蘇る、嫌な展開だ。

読むのをやめようか?

しかしこのままやめてしまうと、2人の妹が怯えたままになってしまう。

ミシアはアドリブで話を変えることにした。


ミシア「えーとね。あるとき、ジャイアントオクトパスが大切にしていた宝物がクラーケンに盗まれてしまいました」

タリア「…!」

タニア「…へぇ、宝物って何かな?」

ミシア「…えーっと、青く輝く八面体の宝石でね。『歩行石』っていう魔法の宝石なんだ。これを使うと海の生き物が陸上を歩けるようになるんだよ。ジャイアントオクトパスは歩行石を使って地上で暮らしていたんだ」

ミシアはなんとか話をでっち上げた。

タニア「まあ!そんな大切な宝石を盗むなんて、許せないわ!」

ミシア「そうだね。…そうして、ジャイアントオクトパスは盗まれた歩行石を取り返すために、旅立ったのです」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る