第2章 ジャイアントオクトパスの海岸物語
絵本(語り:タリア)
海水浴1日目の夕方までたっぷり遊んだミシア達は、夕食の海の幸に舌鼓を打った。
ミシア達が住んでいるハルワルド村では小さな川魚は捕れるものの、海魚は食べたことのないご馳走だった。
夕食が済んだ後で、ミシアとタニア・タリアは、泊まっている旅館『レ=ローラ』の中を散歩していた。
レ=ローラは海水浴場にある宿泊専業の旅館だけあって、ミシア達の宿酒場『甘いはちみつ亭』よりずっと広い。従業員もローラ以外に何人もいるようだ。
ミシア「酒場が無くて、大きなロビーがあるんだねー。
タニア「そうね~うぷっ」
タニアがロビーにある大きなソファに座ってみたら、柔らかいクッションの中に沈み込みそうになった。
タリア「お姉さま、見てください」
タリアが、ロビーの一角に本棚を見つけた。色々な本が置いてある。
中には『どうしておうちにサバがいるの』という絵本もあった。海の生き物が色々出てくる有名な絵本だ。
ローラ「あら、お嬢さんたち。気に入った本があったら、自由に読んでいただいて構いませんよ」
タリア「ありがとうございます」
通りかかったローラが声をかけてくれた。
タリア「ねえ、お姉さま。久しぶりに絵本を読んでもらえませんか?」
ミシアが寝たきりになっていた頃、サティが「暇つぶしに」と絵本をよく差し入れてくれた(最近持ってくる大人の絵本と違い、子供向けのものだ)。
ちょうど字の勉強を始めたばかりのタリアは、ミシアと一緒にベッドに入り、絵本を読み聞かせてもらったものだ。
絵本の字を読んで声を出すのはミシア。絵本を持ってページをめくるのはタリア。懐かしい思い出。
タニア「あたし、知らない…」
タリア「ちょうどいいじゃない。あんた、字が読めないでしょ?」
タニア「むっ」
タリアが字の勉強を始めた頃もタニアは誘拐されたままだったので、字の勉強どころか何の勉強もすることが出来なかったのだ。
なので、タニアは空いた時間にタリアや他の者から勉強を教わっていたが、まだ読み書きは上手くなかった。
当然、ミシアに絵本を読んでもらう経験も無かった。
ミシア「分かった、読んであげる。…何がいいかな?」
ミシアは本棚をざっと眺めた。
引っかかるタイトルがあった。
『ジャイアントオクトパスの海岸物語』
今朝戦ったジャイアントオクトパスと
ミシア「これでいい?」
タリア「はい!」
タニア「おねえちゃんが選んだものなら、何でもいいよ」
ミシア「じゃ、これにしよう」
ミシアはロビーのソファに座った。
両隣にタリアとタニアが座る。
ミシア「それでは、はじまりはじまり~」
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