ショウパーティー(語り:プッシュ)
ジャイアントオクトパスを倒した後、女性の剣士は剣を鞘に収めてアーキルに歩み寄った。
剣士「ありがとう。助かったよ」
剣士は凛々しい雰囲気の女性で、長い黒髪がよく似合っている。
アーキル「なに、あの腕前なら、オレたちがいなくても関係なかったろう。邪魔したな」
剣士「そんなことは無いさ。これから向かう所があるんでね。こんな所で力を使いたくなかったんだ。
お礼と言ってはなんだが、この魔液は君たちが持っていくといい」
剣士は、ジャイアントオクトパスの魔液を指差した。
アーキル「そうか、悪いな。せめて名前を教えてくれ。オレはアーキル。
そこで声を張り上げたのは、向こうのパーティーの唯一の男性だった。
攻魔士「おれはプッシュ、大攻魔士だ!」
いつの間にかプッシュはタニアとタリアの間に居て、馴れ馴れしく肩に手を置いている。
タニア・タリア「?!」
格闘士「こらプッシュ、何してるの?!離れなさい!」
そんなプッシュを女性格闘士は叱るが、プッシュは気にせず女性格闘士を紹介する。
プッシュ「あっちのうるさいゴリラみたいなのがパープル」
パープル「誰がゴリラですってぇ…?!」
確かに女性格闘士がジャイアントオクトパスと素手で戦う力はすごかったが、ゴリラと言われるような体形ではない。
プッシュ「で、あっちの剣士はショウ。おれたちは『
パープル「プッシュ、その名前は…」
プッシュ「おれたちはショウの為に集まったパーティーだ。したがって、パーティー名はショウパーティー以外に考えられない!」
ライラ「まあ、やっぱり~?!」
パープル「え?」
プッシュがパーティー名を高らかに宣言すると、ライラが話に割って入ってきた。
ライラ「皆さんご立派になられていて~、気付くのが遅れて申し訳ありません~」
プッシュ「おう、おれも今や大攻魔士だからな!」
ライラから褒められて鼻高々のプッシュだったが、パープルが冷静につっこむ。
パープル「そんなこと言ってるのはプッシュだけよ」
しかしプッシュはへこたれない。
プッシュ「じゃあおまえの胸の大きさか?」
パープル「あなた、本当に殴られたいようね…!」
プッシュ「悪かった、パーティーで唯一三十路に入ったパープル様!」
パープル「失礼ね、まだ29歳よ!…今年の誕生日はまだだけど…」
パープルはぷるぷると震えながらプッシュに向けて拳を構えて、手に魔力を込めた…。
ライラが前に進み出て、丁寧に頭を下げる。
ライラ「あのときは、お世話になりました~」
ショウ「え?」
ライラ「ミシアちゃん、タリアちゃん。あのとき、あなた達を助けてくださったのが、この方たちよ~」
タリアの記憶が蘇る。
8年前、誘拐されたとき、檻に入れられていた自分とミシア。その檻を剣で斬った冒険者。助けてくれた3人の冒険者。
タリア「ああっ!!」
ミシア「ええっ?」
ミシアは助け出されたとき意識が朦朧としていたので、はっきりとは覚えていなかった。
ショウ「そうすると、君たちがあのときの…?!…大きくなったね」
パープル「本当に、元気そうで良かったわ」
プッシュ「まじか~?」
ショウたちは驚いた顔でミシアたちの方を見た。
タリアも前に出て頭を下げる。
タリア「助けていただいて、本当にありがとうございました」
ミシア「…ございました!」
ミシアも慌てて頭を下げる。
プッシュはあのときの事を思い出した。
プッシュ「あのときはびびったよなー。旅の商人から宝の地図だって言われて行ったら、宝は無かったけど子供がいたんだもんなー」
パープル「そうね…。最初から胡散臭い地図だったけど、プッシュがわざわざ買って」
プッシュ「なんだとう。買って正解だっただろうが!」
パープル「まあ、おかげで子供たちを助けることが出来たしね」
ミシアは緊張しながらショウたちに話しかけた。
ミシア「あの、ボクたちこれから宿屋に行くんですけど、一緒にどうですか?ぜひお礼がしたいし!」
ショウ「すまないが、これから用事があるんだ。その気持ちだけで、元気な姿を見られただけで充分だよ」
ミシア「そうですか…。じゃあ、今度ぜひお礼をさせてください!」
ショウ「ああ、また今度」
ショウ達はミシアの誘いを断り、用意していた小船に乗って、海に漕ぎ出していった。
ミシア達はしばらくショウ達を見送って、その場に留まった。
ミシア「まさか、ここで命の恩人に出会えるなんて…。ほんと来て良かったね!」
タリア「ええ、そうですね、お姉さま」
タニア「…」
そしてショウ達の姿が遠く小さくなったのを見届けてから、宿に向けて歩き出した。
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