浮き島旅行

ミシア達を乗せた一軒家型浮き島は、地上から数十メートルの高度で飛行していた。

よく見かける浮き島はもっと高いところを飛んでいるが、しかし数十メートルの高さでも普段は体験できない。ミシアはご機嫌だった。

ミシア「ひゃっほう~!」

ライラ「あらあら~、風が気持ちいいわね~」

アーキル「見ろ、アリがごみのようだぜ~!」

コノハ「この高さからアリが見えるわけないでしょ、なに言ってるのよ」

コノハはアーキルの意味不明な台詞に、呆れ顔だ。


ルディア「でも、ここから落ちたらと思うと、怖いですね…」

タリア「ですね…」

タニア「あ、あたしは慣れてるから、こ、怖くないもん」

素直に恐怖を口にするルディアとタリアに対し、タニアは強がってみせる。

タニアは鳥型魔法具が映す映像をよく見ていたので、高い所からの視点には確かに慣れていた。とはいうものの、自分が実際に空高くにいると、大違いだったが。


操縦士は一人しかいないので夜は地上に降りて休んだが、それでも3日目の朝には目的地に到着した。

馬車なら2~3週間はかかったはずだ。


操縦士「皆さん、見えてきましたよ」

ミシア・タニア・タリア・ルディア「うわあ~」

足下に広がっていた陸地が青い面に遮られ、青い面はその向こうに延々と広がっている。そして上から来た空とぶつかり、境目が弧を描いていた。

タニア「あれが、海…」

タリア「あれが、水平線…」

浜辺には白い海鳥が何羽も飛んでいる。

海の向こうには小さな黒い島も見えた。


操縦士「それでは、着陸しますね」

ケニー「まだちょっと距離があるのでは?」

操縦士「歩いて海に近付くのも、良いものですよ」

ケニー「なるほど」

目的地までまだ遠いことにケニーは疑問を感じたが、海を知っている身としては、確かに歩きながら海を見る方が感動的かもしれないと納得した。


そして浮き島は着陸し、ミシア達は後は歩いていくことになった。

ミシア「ありがとうございました~!」

ミシア達は浮き島に別れを告げる。


なお、ミシアは一人で浮き島に魔力を供給し、魔力代をほとんど浮かせた。

常人には不可能なことだったが、魔力量が桁外れに多いミシアには可能だったのだ。

操縦士「信じられない…」

ミシア「帰りもまたお願いしますね~」

操縦士「どうなってるんだ…」

操縦士はがっくりと地面に両手をついた。人間の魔力で浮き島を飛ばせたなど、前代未聞だ。(これは、長らく航空ギルド員たちの間で語り草となった)

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