首都オルジェクト(語り:ルディア)

パーマスの町から『普通の国スタンガルド』の首都オルジェクトまでは、乗合馬車が出ている。

一行は乗合馬車に乗り(8人乗れる大型の馬車だったが、アーキルの体が大きい分、普通よりも手狭だった)、数日かけて首都オルジェクトまでやって来た。


御者「お客さん方、首都が見えてきましたよ」

ミシア「どれどれ?!」

ミシアは窓から顔を出して、馬車の前方を見た。

ミシア「うわあ!広いなぁ!」

街はまだ離れているというのに、家々がたくさんあるのが見える。道があると思われる所以外は、家がびっしりと並んでいる。全体の広さは、パーマスの町が何個も入りそうなくらいだ。

そして街の中央には、白くて丸い尖塔が生えている壁に囲まれた、ひときわ高い建物が建っている。

タリア「わあ、あの高い建物は、お城でしょうか?」

タニア「わあ、きれいね…!」

ライラ「ほんとね~」

タリアとタニアも窓から顔を出した。


アーキル「ふん…」

ケニー「あれが…」

コノハ「確かに、なかなか綺麗なお城よね…」

ルディア「…」

しかし、浮かれるミシア達とは対照的に、ルディアの表情はすぐれない。


ミシア「ねえねえ、ルディアも見てみなよ!すごいよ!」

ルディア「…ええ、そうですね」

ミシア「…あれ、ルディア、なんか緊張してる?」

ルディア「いえ、別にそういうわけでは…。ワー、スゴクキレイデスネー」

ミシア「…?」

やはりルディアの様子は何か変だが、ミシアには理由は分からなかった。

話す相手をアーキルに切り替える。


ミシア「アーキルたちは、首都に来たことある?」

アーキル「まあな」

コノハ「私も一度だけあるわ。故郷の森から魔法学院へ行く途中にあるから」

ケニー「僕は初めてですね。魔法学院からハルワルド村へ行ったルートには、ここは入ってなかったですから」

ルディア「私は…住んでいたことがありますから」

ミシア「そうなの?じゃ、久しぶりに友だちにも会えるね!」

ルディア「…いえ…あまり会いたくないと言いますか…」

ルディアは口ごもりながら、白いローブを頭からかぶった。顔が陰になって見えなくなる。


ミシア「え?でも…」

アーキル「あまり詮索してやるな」

なおも追求しようとするミシアに対し、アーキルは大きな手でミシアの頭をわしっと掴んで、ぐいっとひねった。

ミシア「痛っ!何するのさー?!」

タリア「お姉さまー?!」

タニア「おねえちゃん?!」

ライラ「あらあらー?」

コノハ「ちょっと、ミシアが怪我したらどうするの?!」

アーキルの行動に、馬車の中が大騒ぎになる。


アーキル「大丈夫だろ、ケニーの魔法がある」

ケニー「首が折れたら、僕の治癒魔法じゃ治せませんよ?!」

一人静かなルディアをよそにぎゃーぎゃー騒ぎながら、馬車は首都オルジェクトに到着した。

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