スカス海賊団(語り:コノハ)

一行は、崖を抜けた所で一泊夜営し、さらに途中の平原で一泊し、次の日にパーマスの町に到着した。

ミシア達はこの町に訪れたときによく行く、この町唯一の冒険者ギルド『跳ねる亀亭』に向かった。

ライラも冒険者時代は跳ねる亀亭を拠点にしていたが、ここを訪れたのは、タニアの両親に雇われて出て行ったとき以来だった。さすがにライラの顔を覚えている者はいないようだったが、ライラもそれは求めていなかった。


しかしここには、跳ねる亀亭を拠点にしている顔馴染みの冒険者の他に、意外な顔ぶれが居た。

スカーレット「よう、お前たち。奇遇だな!」

1階の酒場にスカーレットたちが居たのだ。

ミシア「スカーレット?!なんでここに?…盗賊団だと町に行きづらいとか言ってなかった?」

スカーレットとはホワイトドラゴンと戦った山で知り合った。そのときは『スカス山賊団』を名乗っていたが、その後ハルワルド村に現れたときに『キロスカス盗賊団』に改名していた。

スカーレット「ちっちっち、アタイたちは盗賊団じゃないぜ? ギガスカス海賊団だ!」

ミシア「えー?!また名前変えたの?っていうか、なんで海賊?ここは海じゃないよ?」

ユーリ「またねえさんの気まぐれなんですよ」

トーリ「姐御が言うには、ミシアさん達が海水浴に行くからと」

ユーリとトーリはシルフ人の双子で、スカーレットの副官のような立場だ。

ミシア「えー?!どこでその話を…」

スカーレット「ふっふっふ。ギガスカス海賊団の情報網をナメてもらっちゃ困るね!」

ユーリ「サティさんから聞いただけですよ」

トーリ「出発する日を聞いて、わざわざ先回りしていたんですよ」

スカーレット「あっ、何あっさりばらしてるのさ?!」

ミシア「サティめ~。…ん?別に構わないか」

ミシアは一瞬サティを恨みそうになったが、よく考えたら、別に恨むような問題ではなかったことに気付いた。


アーキル「ってことは、おまえ達も一緒に海水浴に行くつもりなのか?」

コノハ「げっ」

スカーレット「げって何だよ、げって。アタイたちがどこに行こうと、勝手だろ?」

コノハ「それはそうですけど?今回はミシア達の家族旅行なんだから、邪魔しないでほしいわ」

コノハはスカーレットに喰ってかかる。

スカーレット「アタイたちは、邪魔なんかしたことないだろ?」

コノハ「…そうかもしれないけど」


そんなコノハの様子を見ていたルディアとケニーは小声で話し合う。

ルディア「なんだかコノハ、不機嫌ですか?」

ケニー「そんな感じに見えますねぇ。何故でしょう?」


アーキル「仕方ねえなぁ。おいスカーレット、ちょっと耳を貸せ」

アーキルは酒場の隅にスカーレットを引っ張っていって、内緒話を始めた。

コノハの顔が一層不機嫌そうになる。

アーキルとスカーレットはすぐに戻ってきた。

アーキル「話はついたぜ」

コノハ「ずいぶんと仲がよろしいんですのね?」

アーキル「あ?何を言ってるんだ?ただ単に仕事を依頼しただけだぜ?」

スカーレット「ああ。アーキルがどぉ~しても!って言うからな。海水浴は諦めて、仕事を請けてやるよ」

コノハ「…そう」


アーキルはコノハの耳元で囁いた。

アーキル「適当な仕事を依頼したんだ。これで、一緒には来ないだろ?」

コノハ「…別に、どっちでも良かったんだけど」

コノハは顔を赤らめながらぷいっと顔をそらした。


ルディア「…コノハ、どうしたんでしょう?」

ケニー「…さあ?」


スカーレット「ま、一緒には行けなくなったが、飯くらいいいだろ?」

ミシア「うん!」

その夜は一緒にバカ騒ぎをしたのだった。

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