イオティー

ミシアたち冒険者の主な仕事は、魔物の討伐である。

魔物を倒すと、魔物の体は魔液と呼ばれる物質に変化する。

魔液を集めて冒険者ギルドに持っていくと、お金に換えてもらえるのだ。


ミシア「またドラゴン出ないかなー。ドラゴンなら、旅行資金くらいすぐ貯まるのに」

コノハ「嫌よ。ドラゴンと戦うなんて、一回で充分よ」

ミシアがエスウィングに加入したばかりの頃に、ホワイトドラゴンと戦ったことがあったのだ。

勝って大量の魔液を手に入れることは出来たものの、死力を尽くした総力戦だった。


ケニー「あのドラゴンは、まだ復活してないでしょうけどね」

魔物は、似た地形には同じ種類の魔物が発生することが多いとされている。

つまり、同じ場所に同じ魔物が復活する可能性は高い。

しかしドラゴンほどの大物となると、復活するにはかなりの時間がかかるはずだ。


・・・


冒険に出たミシア達がドラゴンの代わりに遭遇したのは、イオティーと呼ばれる魔物だった。

比較的最近になってから確認された魔物で、主に山岳地帯で発生すると考えられている。冬になると山から下りてくるのか、特によく見かけるようになる。

姿は白くて毛むくじゃらの人形というか、胴体の丸い毛玉に頭(小さくて丸い毛玉)と毛深い手足が付いている感じだ。体長は10センチメートルほどで小さい。

攻撃方法は鋭い爪と長い舌だが、小さい分、大した強さではない。しかし数十匹の集団で襲ってくるのが厄介だ。


イオティーの攻撃では、アーキルの金属鎧プレートアーマーを突破することは出来ない。

しかし逆にアーキルが攻撃を当てるのも難しい。

なにせアーキルの武器は2メートルはある両手剣グレートソードだ。大きく振って敵に大ダメージを与える武器だから、足元をうろつく体長10センチメートルの敵を狙うには向いていないのだ。

アーキル「くそっ、ちっこいのがちょろちょろしやがって!」


コノハの矢でも一発当たるだけで倒せるのだが。

コノハ「数が多いから、すぐ矢が尽きちゃうわ…!」


活躍したのはミシアとルディアだった。

ミシアの攻撃も基本はパンチなので足元には届かないが、キックは届く。

ミシアは全身を覆う魔法を使って手足を動かしているのだが、その魔法の副次効果で、脚力があって素早く動ける。

ミシア「うりゃうりゃうりゃうりゃ!」

ミシアは走り回って、イオティーたちを弾き飛ばした。


ルディアの武器は刺突剣レイピアである。敵を片手で突く武器なので威力は弱いが、イオティー相手なら充分だ。突く攻撃方法なので、踏み込めない分威力が弱くなったとしても、足元でも狙える。

そしてルディアは剣の技量が低いので命中率は悪いが、数が多いイオティーが相手なら、狙った敵を外しても別の敵に当たる。

ルディア「ややややっ!!」

さながら降り注ぐ雨のようにレイピアを連続で突き出し、イオティーを倒していった。


ケニーがしたのは、イオティーの群れが広範囲に散らないように、魔法の壁を立てて囲い込んだくらいだった。


・・・


こうして、旅行の資金は順調に貯まっていった。

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