2話 ドクタームーンとの出会い

 おいらは生まれつきの注意力の散漫さと短期記憶の悪さからこのまま村にしても結婚してくれる男の人はおろか家の恥になるからと半分成人式を迎える十歳の春に村をきのみきのままに追い出された。


 とりあえずあてのまいまま、道を彷徨い、たまたま行き倒れた場所が運のよいことに師匠の家の前であった。


 いちおう師匠はジェントルマンで、優しい男性であるからして、行き倒れたおいらをかかりつけ医に連絡し、病院に運んで、検査などをしてくれたらしい。


 診断名は栄養失調。今もだが黒い棒のように痩せているおいらの体には虐待のアザなどがあった。


 思い出したくないから、残酷描写など、おいらはしないし、それでいいんだろう?


 ともかく、優しいジェントルマンであるドクタームーンとかかりつけ医は目を覚ましたおいらの話せる限りの話をきいてくれ、おいらの脳の検査を何故なのか心療内科医に相談し、心理テストなどの結果からおいらの話が嘘じゃないことを証明してくれたうえに、おいらの想像上の理由だと自分の病気に似ている所もあるおいらを家政婦見習いとして住み込みでやとってくれた。


 何しろ、ドクタームーンはハンサムだし、親からの資産でお金持ちで女性が近寄ることもあるのだが、彼女いないこと50年以上の人物であり、色恋には鈍いのと恐怖心が先立ち進展しないわ、趣味が釣りというようなどちらかといえば寡黙な性格と何かを発想すれば摩訶不思議な行動をしたり、ノートを広げて、本人は丁寧なつもりらしいが、1から10まで細かく説明する性格も災いして、女性が立ち寄らないとおいらの上司であるたまさんがいつもぼやいている。


 とりあえずたまさんと丁寧すぎるドクタームーンの説明に時に頭をパニックにしながら字を書くことを覚えたおいらは料理だったり、家事全般の手順を書いたノートをポシェットに入れて起きている時は肌身離さず持って、常に確認しながら生活している。


 また丁寧すぎるドクタームーンの説明も好奇心を持てば長期記憶がおいらにもできることを教えてくれたり、小学校の元教師だったたまさんからは歴史の年表みたいなはっきりとした概念ならば暗記するのが得意なことに気づかせて貰ったり、二人には色々な意味で感謝はしている。


 たまさんはおいらにもう少し女らしい格好をさせたいらしいが、ショートカットに動き安いシンプルな服装が好きであるって話が脱線したがそれが出会いである。


 そして、次からは奇抜なドクタームーンの月にまつわる発想を説明したいと思う。


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