第5話 豚は優等生
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本日の学園はいつにも増して賑わっていおい、る。それもそのはず、今日の昼に前回の試験の結果が張り出されるからだ。掲示板の前では、張り出し前にも関わらず、既に人だかりができている。
「ぶっひひひ」
バンディーダは相も変わらず、菓子袋に手を突っ込んでは不気味に笑っていた。
「おい、来たぞ」
「しっ、目合わせんな。何されるか分かんないぞ」
「ぶぶひ、この前のダンジョン踏破が成績に加算されるから上位なのは間違いないぶひ」
「さすが、バンディーダ様。バンディーダ様はこの学園の光だ」
「シモン様、最高!」
「最高!最高!」
「ぶふふ、よしてくれ。照れるぶひ」
「おや、シモン君じゃないか」
人混みが鬱陶しくなったのか、バンディーダが取り巻きたちから離れると眼鏡をかけた中年が話しかけてきた。
「ワゲン先生」
ワゲン・タンメ。この学園の教師の一人であり、ダンジョン学を担当している。いまいちパッとしない人物であまり生徒の話題に出ることはない。
「いや~、聞いたよ。深緑の蜜籠を踏破したんだって?まだ学生なのに凄いね君は。で、どうだった?感想は?」
「おそらくあのダンジョンはC級の中でも難しい部類であったかと。僕は相性が良かったからあまり苦戦しませんでしたが、やはり炎か氷の魔法使いがいないとあの蔓の森を抜けるのは辛いと思います」
「なるほど、ダンジョンマスターはマザー・アルラウネと聞いているが戦ってみてどう感じた?」
「あちらがこちらを警戒している内に一気に焼き殺せたのが大きかったです。奴が戦闘態勢に入っていれば無傷ではすまなかったでしょうね」
「結構。いい話を聞かせてもらった。お礼と言ってはなんだがいい情報を教えてやろう。今回の君の成績はトップ3に入っているぞ」
それに、とワゲンは付け加える。
「何のためにそんな悪童染みたことをしているかは知らんがやはり君は根が真面目だ。嫌われものは辛いだろうが困ったら私に頼りなさい。できる限りの世話はしよう」
「ありがとうございます」
バンディーダが一礼するとワゲンは職員棟の方へ歩いていった。
「余計なお世話ぶひねぇ」
バンディーダはワゲンが歩いていった方へ唾を吐く。
「ちょっと家のダンジョンのことを教えただけでこんなに懐いてくるなんて、どれだけ寂しいおっさんなんだ、ぶふひ」
しかし、実際に先生が目の前に来たらしっかりと敬語を使うバンディーダ。それはやはり彼が優等生でありたいからであろう。
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