プロローグ

西洞院 奏

白紙

「じゃあ、みんな!好きな絵を描いてね!」


僕はこの手の自由制作が得意ではなかった。小さい頃なら殆どの子が、お絵描き、泥遊び、ブロックなど自分の感受性を意のままに表せる遊びが好きだったろう。


でも僕は違う。


僕はどっちかと言うと課されたタスクをこなして得られる達成感の方が好物だった。

冷めた子どもだよな。

でも4才ながら本気でそう思っていたのだ。

頭の中でイメージを創るのは簡単な事だったが、いざそれを具現化しろと言われると、それは無理難題に思えた。


小さい頃がそんな風だったので、小、中と年齢を重ねても創作系が得意とは到底言えなかった。


そして迎えた高校生。

なんの味気もなく過ぎるだろうと思われたが、高校生でやっと気づいた。


「自分には中身がない」


そして僕は焦り、自分をだそうと思った。


最初の頃なんて言うまでもない。


だが友人と環境に恵まれ、僕は大分自分を出せるようになった。そうすると相談される事があったり、なんでも話せる親友ができた。


そして高校三年生。

ある時、

僕の後ろの子の夢をきいた。

「将来の夢ってあるん?」

「小説家になること!」


その時は、がんばれ!くらいにしか思って無かった。


けれど、卒業してしばらく経ち、その子の短編小説を見る機会があった。そこには話しているだけではわからないその子の才能・魅力がぎゅっと詰まっていた。


なるほど、こういう手もあるのか。


そしてマスクを付けるのが当たり前になった今日、初めて文を綴ってみた。



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