第12話 動き出した策略
放課後。帰ろうとしていた
「
「はい、何でしょうか?」
この先生、話し方がアニメキャラみたいでウザいのよね。って、見た目も存在も二次元そのものなのだけれど。
「
「あ、はい」
「了解っす」
ゴカモク先生は教室から全員が居なくなるのを待つと、飛鳥に席に着くよう促した。
「で、用件は何ですか?」
「一組の
「はい、そうですが」
「なら、ゴカモク先生的には仲良くしておいた方がいいと思うなぁ? 宇奈月さんは一組だし」
この先生は何を言っているの? 交友関係にまで口出しするつもり? そもそも、どうして私と宇奈月さんの過去を知っているの?
訝しんでいると、ゴカモク先生はこう言葉を続けた。
「Sランク、上がりたいのよね? だったら、宇奈月さんの言うことは素直に聞いておくべきだと思うなっ」
「それは、どのような意味でしょうか……?」
「頭脳明晰な黒部さんなら分かるはずだゾっ?
「宮ヶ瀬さんと、関わるな……?」
「SSランクの人間の言う通りにすれば、ランクはどんどん上がっていくんだゾ☆」
にやりと不敵な笑みを浮かべるゴカモク先生。それを見た飛鳥は、大きな見落としに気付きハッとした表情をした。
そうよ、どうして私はここまで気が付かなかったの? 教師が仮想の存在である理由なんて他に無いじゃない。このバーチャルな教師の正体は……。
「おやっ、ゴカモク先生の中身が誰なのか分かっちゃったかなっ? そんな賢い黒部さんなら、最善手が何かはもちろん判断出来るよね?」
机に座り、飛鳥の顎に手を伸ばすゴカモク先生。この状況で答えろなんて半ば脅しだ。
でも、私は屈しない。宇奈月さんよりも、宮ヶ瀬さんを信じたいって思えたから。こんな嘘偽りの存在に誰が従うものか。
飛鳥は強い意志を持って口を開く。
「確かに、早く上のランクに上がりたいのは事実です。しかし、私は宮ヶ瀬さんと先に約束したので。宇奈月さんやゴカモク先生に従うことは出来ません」
「宇奈月さんのこと、裏切るんだ? そう、残念ねぇ。それじゃ、Cランク降格でいいかなっ?」
「ええ、構わないわ」
しかし、ゴカモク先生は飛鳥を降格処分にする直前に何かを思い出した。もとい割り込み処理を行った。
「そうだったっ、まだイベントが残ってるの忘れてたわ。黒部さんの命運はそれ次第かなっ」
「イベント……?」
「土曜日、宇奈月さんとフーバーさんが迎えに来ると思うから、楽しみにしてるんだゾっ☆」
その日に何があるというの? まさか、宮ヶ瀬さんに何かするつもり?
疑問や不安が次々と湧いてきたが、ゴカモク先生はすでに姿を消してしまっていた。
そして迎えた土曜日。二〇二二年四月二十三日、朝十時。
飛鳥のアパートのインターホンが鳴った。
「はい」
玄関を開けると、そこにはゴカモク先生の言った通りエレナが立っていた。
「Hello, Miss Asuka. 今からとってもexcitingなeventが始まるから迎えに来てあげたわ」
「イベントの話は月曜日に担任から聞いたわ。一体あなた達は何を企んでいるの?」
「それはMiss Reikaから直接聞きなさい」
階段を降り、アパート前のコインパーキングに停まっていたミニバンに乗り込む。
「ごきげんよう、黒部飛鳥。これから面白いものを見せてあげます」
挨拶もそこそこに、麗華はノートパソコンを手に取る。
画面にはどこかの監視カメラの映像が表示されていた。これは、
「ここで何が起こるのかしら?」
飛鳥の問いかけに、虚ろな目をこちらに向けた
「宮ヶ瀬
「は?」
宮ヶ瀬さんが、死ぬ……?
動揺を隠せない飛鳥に、麗華は言葉を付け足す。
「計画が上手くいけば、の話です。実際、過去に何度も宮ヶ瀬優香の暗殺を試みましたが、成功したことは一度もありません。まあ、宮ヶ瀬優香が生きている時点で成功していないことは明白ですね」
「じゃあ、今回も失敗するんじゃないの?」
「どうでしょうか? 今回、わたくしは一切手を出しません。全て後継者に一任しています。いつどこでどんな計画を実行するのか、何も知らないのです。それはつまり、宮ヶ瀬優香も予測不可能だということ。手の内を知った相手と初めての相手では、結果が変わってくると思いませんか?」
彼女の言葉は正しい。目の前にいる人が暗殺者と知っていれば警戒しながら行動するだろうが、全くのノーマークだった場合はまんまと術中にはまってしまいかねない。
「でも、宮ヶ瀬さんがそう簡単に殺されるとは思えないわ。それに、あの子なら殺したところで死ななそうだもの」
「ふふっ、面白いことを言いますね黒部飛鳥。では、そろそろ開始時刻です。宮ヶ瀬優香は殺されるのか、はたまた殺しても不死身なのか、行く末を見守るとしましょう」
「念のため、Youのcell phoneは預からせてもらうから」
スマホを渡すよう要求するエレナ。
「宮ヶ瀬さんと連絡なんてしないわよ」
反論すると、エレナは喉元にナイフを突きつけてきた。
「それなら預かってもNo problemでしょう?」
「……分かったわ。今出すからナイフどけて」
飛鳥は渋々ポケットからスマホを取り出し、エレナに差し出す。
「余計な行動はしないこと。Do you understand?」
「Yes I do.」
強引にスマホを回収された飛鳥は、挑発するように答えてエレナを睨みつけた。
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