復讐:相澤の絶望
「まず誰にするの?」
「相澤だ。あいつが元凶と言ってもいい」
「なら最後に残しておいたらいいじゃん」
「相澤は逃げるのが上手いからな。今のうちに復讐する」
「はへー。まっ、そーちゃんがいいならいっか!」
千聖ははにかみながらそう言った。
相澤への復讐方法はもう決めている。
媚薬を盛らせたのも相澤、俺の母と妹を犯させたのも相澤、未練たらしくなるが浮気して俺を捨てたのも相澤だ。
眼には眼を歯には歯をのように、悪意には悪意を、絶望には絶望をもって悪行の精算してもらう。
「裕也!助けて……!」
相澤は神代の家に急いで行き、神代に助けを求める。
だが部屋には誰もいなかった。
屋敷中を探し回るが神代の姿はどこにもない。
「なんでいないのよ…!」
嫌な汗が溢れてくる。
屋敷を探しても埒が明かない。
時計を見ると昼を少し超えたくらいの時間だった。
「ご飯にでもいってるのかしら…」
「ああもう!」
焦りながら慌ただしく屋敷を出た。
数分程ほで飲食店が立ち並ぶところに着いた。
一つ一つ神代の姿を確認していく。
だがどこにも神代の姿はない。
「どこにいるのよ!」
焦りがピークに達し、自分でも感情を制御できない。
額の汗が頬を撫でる。
すると、ポケットに入れた携帯が振動した。
携帯を取りだし電源をつけると、メールが来ていた。
「…!」
神代からだ。
ここから少し離れた場所にある高級レストランで家族と昼食をとっているらしい。
相澤は返信もせず走り出した。
再び数分走ると、目的のレストランが見えてくる。
「はあっ…やっとっ…だわっ」
息を切らしながらラストスパートを走る。
レストランまであとほんのわずかのところで目の前に黒いバンが止まった。
「っ!邪魔!」
いちいち運転手に喧嘩をふっかけている余裕もなく、バンを避けようとすると、中から出てきた黒服の男たちに拘束される。
「ちょっ…!なにすんのんぐっ」
言い終える前に口をガムテープで塞がれる。
「んーっ!んーっ!」
必死に抵抗するが、普通の女子高生が複数人の男に力で勝てるわけもなくバンに入れられた。
「んぐ!ううーっ!」
「おい、その女を黙らせろ」
「了解」
男はカバンから注射器を取り出すと、小瓶から液を抽出する。
「んんん!んん!」
これからなにをされるのか察した相澤は、注射器を刺されまいと必死に体を動かして抵抗する。
「大人しくするんだ!」
「蒼太様に届けるまで傷つけるなよ」
「す、すみません。手伝ってくれ」
「ああ」
後ろにいたもう二人の黒服の男が相澤の手足を抑える。
それでも相澤は抵抗するが、びくともしない。
そのまま注射器を刺し、液を注入する。
「んーっ!んー……」
相澤は力が抜けたように倒れ込む。
「なにを入れたんですか?」
「睡眠薬だ」
そのまま相澤はバンに揺られ連れて行かれた。
「んん……」
相澤の目が覚める。
目をぱちぱちとさせながら光に慣れようとする。
だんだん慣れてきて辺りを見渡す。
来たこともない無機質なコンクリート造りの部屋に戸惑う。
「ここは……?」
相澤は思わず心の声が漏れる。
「よっ!相澤」
後ろからの声に反射的に目線を向ける。
「そ、蒼太…!?」
そこにいたのは元彼の荒川蒼太であり、今憎んでいる女の彼氏だ。
「な、なにこれ…?早く解いて?」
連れ去られる前の相澤とは一変して弱々しく可愛らしい表情と声色で蒼太に話しかける。
「関心するぞ相澤。凄まじい演技力だな」
相澤の状況によって使い分ける演技力に関心してしまうほどだ。
「まあ…わかるよな?今から自分がどうなるかぐらい」
「な、なにが…?」
相澤は汗を垂らしながらとぼける。
本当はわかっていた。自分がこれからなにをされるのか、相澤はわかっていた。
だがそんな現実から逃げるように気づかないフリをする…するしかなかった。
「…」
蒼太は冷たい視線を相澤に向ける。
その視線だけで自分は助からないのだと嫌でもわかってしまう。
「ごめんなさい蒼太!お願い!もうしないから!」
「お願いします!お願いします!」
相澤は必死に懇願した。
「なあ相澤」
「は、はい…」
「俺はあの手紙の内容を提案したのはお前だと知っているぞ?」
「…っ!」
「言い出しっぺはよく負けるよな……?」
「む、むりむりむり!!やめて!やめてください!」
蒼太はそんな相澤を無視して、胸ポケットにあった無線で何かを伝える。
「じゃあな相澤。次会った時今のままだったら許してやるよ」
「あと、配信しないだけでも感謝しろよ?」
「そんな…!無理よ!蒼太!蒼太あああああ!!」
蒼太と入れ違ったように汚い男たちが大勢部屋に入ってくる。
「ぶふっ。かわいい〜」
「これほんとに自由にしていいんか?」
「いいんじゃないか?げひっ」
男たちは気色の悪い笑みを浮かべながら相澤は舐めまわすような視線を向ける。
そのまま男たちは相澤に近づいていった。
「ひっ!い、いやああああああああああ!!!!」
下品な笑い声と悲鳴が部屋中に響いた。
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