復讐の始まり
相澤にフラれてから二週間が経ち今は水曜日、俺宛に手紙が届いているとメイドさんに渡された。
白い包みをあけ、紙を取り出す。
「っ!」
手紙の送り主は神代だった。
今すぐにでも破り捨ててやろうとしたが、結愛という字がチラっと見えた。
「くそっ…!」
嫌々ながらも読むことにした。
───────────────────────
やあ蒼太くん。
君に知らせたいことがあってね。
電話やメールを送っても見てくれないから寂しいよ。
前置きはこれくらいにして、本題といこうか。
今週の日曜日に君の妹の結愛ちゃんをホームレスのおっさん達に犯させる全国配信をしようと思う!
君は僕と結愛ちゃんがもうヤッたと思ってるだろ?
大丈夫、まだ処女だよ!
楽しみに待っててくれ!!!
───────────────────────
手紙には結愛が縛られている写真が添えてあった。
「ふざけやがって!!!」
手紙を無造作に破る。
俺は怒りを抑えられなかった。
神代にも、そして結愛を切り捨てようとした自分にも。
今も結愛は俺の助けを待っているのかもしれない。
それなら家族として、兄として俺がすることは一つ……結愛を今すぐにでも助ける!!
「無事でいてくれ」
そう呟いて俺は部屋を出た。
「千聖!千聖はどこだ!?」
俺は慌ただしく屋敷を走る。
「ど、どうなされましたか!?」
騒ぎに気づいたメイドさんが俺に問いかけてくる。
「すみません!千聖はどこにいますか!?」
「お、お嬢様なら書斎の方におられますが…」
「ありがとうございます!」
礼を言って書斎の方に走り出す。
「そ、蒼太様…!?」
メイドさんはそんな俺の様子を戸惑った様子で見ていた。
書斎に付いた俺は、ドアの前で一旦息を整える。
「ふぅ…」
荒かった息がだんだんと静かになる。
身なりを少し整えてドアを開けた。
「……そーちゃん?どうしたの?」
千聖は本を読むのをやめ、こちらを向く。
奥にある大窓から差し込む光が千聖を照らしていて、とても神秘的に見え……って今はそんなところじゃない!
「その、頼みたいことがあるんだが…」
「なあに?」
「俺の……ふ……」
復讐という言葉を口にしようとした時、ふと千聖と再会した時の記憶が脳裏を過ぎった。
『そーちゃんは復讐したい?』
『復讐か…しないよ』
『なんで?浮気されたんだよ?』
『復讐なんてくだらないじゃないか』
『そっか』
あの時は復讐なんてするものじゃないと思っていた。
したらアイツらと同じになったような気がしてする気になれなかった。
でも、それでも俺は……妹を助けたい。
「ふ?」
言いかけで詰まった俺に、千聖が何を言いたかったのかと同じ文字を口にする。
「ふく…しゅう……俺の復讐を手伝ってほしいんだ!アイツらに、神代や相澤に復讐を!」
「…」
千聖はなにも言わない。
でも俺と目を合わせてニッコリと微笑んでいた。
まるでその言葉をずっと待っていたかのように、とても嬉しそうな表情で俺を見つめた。
「うん!もちろん!」
千聖は張り切った声でそう言った。
「じゃあ早速いろいろしないとね!悪は滅ぶべし!!」
「えっとー、こういう時なんて言うだっけ……」
「…?」
千聖はあと少しで出てくると言った様子で頭を抱える。
数秒後、出てきたのか晴れた顔で高らかに言った。
「粛清!!」
「ああ、そうだな!悪は粛清するべきだ!」
そう言いながら意気揚々と書斎を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます