幼馴染の正体

『いいか蒼太。お前は俺の██だ』


『うん…』


『なら泣くな。お前は頭も良いし飲み込みも早い』


『いつかは俺のようになれる時がくる』


『む、むりだよ…』


『無理じゃない。あの女の子を守りたいんだろ?』


『ちーちゃんのこと…?』


『そうだ』


『うん…!僕ちーちゃんのことを守れるくらい強くなりたい!』


『その意気だ!よし、今日は集団での戦い方を教えてやる』


『うん!』


「はっ!!」


勢いよく起き上がる。

服に汗が滲んでいた。

なにかとても大切な夢を見た気がする。

だがどうしても思い出せない。


「今…何時だ?」


時計を確認すると、朝の六時半だった。

少し早起きだが、せっかく起きたのだからなにかしよう。

部屋を出て廊下の先にあるベランダに出る。


「ふぅ……」


汗のこともあってか少し肌寒い。

薄い青色に染まっている空を見上げながら涼しんでいると、後ろから声がした。


「そーちゃんも早起き?」


「千聖もか」


「うん」


そう言って千聖は俺の隣にやってくる。

暴力団のことで少し気になっていたことを千聖に聞こうとすると、


「暴力団の後始末はしっかりとやっておいたから、そーちゃんはなにも気にしなくていいよ」


と、千聖はもうわかっていたかのようにそう言った。

もう一つ、疑問に思っていたことを千聖に問いかける。


「千聖は、千聖の家はどういうところなんだ?」


「やっぱり気になる?」


「ああ。すごく気になる」


「言いたくないって言ったら?」


「言いたくなるまで待つさ」


千聖は二ヒヒと笑ってこっちを向いた。


「言うよ。そーちゃんには隠し事はしたくないしね」


千聖は少しを間を空けて、話し始めた。


「お母さん白石財閥の当主で、お父さんは海外マフィアのボス、その二人が出会って私がいるの」


「……ごめん言葉が出ない」


正直今口がガン開きになりそうで仕方がない。

千聖に間抜け面は晒すまいという意地でなんとかしている。


「あははは!無理に平静を保たなくていいよ?」


「なっ、気づいてたのか」


「そーちゃんのことならわかるよっ」


「ぐっ……」


いつもの事なのに妙に照れてしまう。


「でも、よく千聖のお母さんの父親は許可したな。普通マフィアのボスとは結婚を許さないと思うが…」


「ううん。そーちゃんの考えであってるよ。もう死んだけど、おじいちゃんは猛反対してたってお母さんが言ってた」


「え、じゃあなんで……」


「お母さんがムカついて毒殺したって」


「……」


千聖の口からもの凄い内容のものが出てきた気がする。

うん、きっと気のせいだ!

俺は今のをなかったかのように話を変える。


「と、とりあえず飯食おうぜ!腹減ったし!」


「どしたの急に」


「いや、なんでもない!あはっはっはっ!」


ぎこちなく笑いながら俺は千聖と食堂に向かった。

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