相澤紗枝の焦り

檜山会の拠点は瞬く間に制圧され、総長の檜山智司の確保に成功したそうだ。

総長なだけに最後まで抗うと思ったが、檜山はあっさりと情報を提供した。

自分の命が最優先のようだ。

檜山の情報の中には有力なものが多かった。


「依頼人は相澤だ!アイツは媚薬を俺らに用意させてお前の母娘を神代に犯させたんだ!」


「媚薬…!?相澤っ、そんなことを!」


それにまだ妹は……!


「っ!てめえ!妹はまだ中学生だぞ!?」


俺が拳を振りかざすと、檜山は待て待てと慌てた様子で話を続けた。


「ちがう!結愛だっけ、そいつには使!」


「は、は?」


「母親と違って自分からだ!俺達が媚薬を使ったのは母親だけだ!」


「つまり…それは…」


結愛は自分の意思で俺を捨てたってことか…?

脅されてではなく、自分から…。


「お前関連のものはこれくらいだ!」


「…本当か?他には?」


「ない!本当だ!」


「……そうか。ありがとう、お前のおかげ決心がついた」


そう言って檜山に背を向けドアに近づいて行く。


「おい!俺はどうなるんだ!情報は渡したぞ!?おい!くそおおおお!!」


叫ぶ檜山を無視して俺は部屋を後にした。








場所は変わりある家の一室。


「檜山のヤツなにしくじってんのよ!」


相澤ら爪を噛みながら憤怒していた。

あれだけ自信満々にできるって言ってたのに!


「もう神代に頼むしかないじゃない!」


相澤はなるべく神代に貸しを作らないようにしていたが、自分の身が危ないことになりふり構って場合ではない。


「檜山はヤるだけでいいけど、神代はそうはいかない…どうしようかしら」


という肩書きがあるせいで檜山のようにはいかない。


「これも全てあの女のせいだ!あの女が現れてから全部おかしくなった…!」


そう、相澤からすれば千聖という存在が現れたことで順調に進んでいたものが一瞬にして壊れた。


「ああもう!!」


相澤は焦っていた。

早く手を打たなければ自分の身があぶない。

檜山の件でわかったが、普通に人を殺すような奴らだ。



『お前ふざけやがって!!あんな奴らなんて聞いてねえぞ!』


「な、何言ってんの?」


『仲間はほとんど殺られた!アイツら殺すことに躊躇いがねえ!』


『なんとかし……っ!やめてくれ!抵抗はしない!』


「は!?檜山!?ねえ!」




あの時の檜山の焦り方は半端じゃなかった。

二メートルの巨体の外国人にも唾を吐くような檜山がだ。


「こんなことになるならアイツを振らなければ…!」


そう言って相澤は頭を抱えた。

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